吹奏楽コンクール課題曲Ⅳ「フロンティア・スピリット」 作曲者・伊藤宏武さんが思い描く開拓魂
2024年度の吹奏楽コンクールの課題曲Ⅳに選ばれた「フロンティア・スピリット」は、スローテンポで進む荘厳なマーチ(行進曲)です。作曲者の伊藤宏武さんに、「開拓者」などの意味を持つ言葉を曲のタイトルにした理由や、曲作りで意識したことなどについて語っていただきました。
伊藤 宏武(いとう・ひろむ)さん
1991年長野市生まれ。吹奏楽の実力校として知られる市立柳町中、長野高を経て、東京外国語大学へ。所属していたビッグバンドで作曲活動を本格的にスタート。卒業後は大手楽器メーカーなどで会社員として勤務しながら、作曲を続けている。2回目の応募で朝日作曲賞に入選した「フロンティア・スピリット」が2024年度の課題曲Ⅳに選ばれた。
吹奏楽にとって変革の時代 挑戦する人たちを応援したい
――「フロンティア・スピリット」の曲が出来るまでの経緯や、タイトルに込めた思いを教えてください。
コロナ禍で吹奏楽の先生と関わる中で、音楽がなかなか思うようにできない、演奏機会がないなど、いろんな苦しさを目の当たりにしました。そうした方々を応援したり、頑張って活動されている姿をたたえたりするような曲を作ってみたいなと思って家でピアノを触っていたら、曲のテーマとハーモニーの進行がフッと浮かんだので、それで作曲に至りました。
私が一緒に活動しているビッグバンドのライブも軒並み中止になってしまい、練習もなかなかできなかったので、自分自身もすごくもどかしいというか、歯がゆい思いを抱いていました。
そうしたこともあって、前向きな曲、心がのってくるような曲を書きたかったんです。
タイトルについては、特に「フロンティア」、開拓者という言葉をぜひ入れたいなと思って作りました。
コロナ禍を乗り越えていくという意味もあったんですが、今、生徒の数も減ってきて、部活動の時間は私が中高校生だった時代よりもずっと短くなっていて、地域の外部指導員の方に入っていただくなど、変革の時代を迎えていると思います。
そうした新しいことに挑戦していく姿勢をタイトルに込めて、「フロンティア・スピリット」にしました。
マーチだけど特色の出る曲 それぞれのストーリーを作って演奏して
――「フロンティア・スピリット」を作曲する上で意識したことを教えてください。
なるべく難しい音域を使わないとか、少人数でも成り立つようにするということも考えたのですが、一番意識したのは、どの楽器も活躍して、メロディーがあるような曲にしたところです。
例えばホルンもメロディーが途中で入ったり、低音も活躍できる場所があったり、打楽器もちょっとソリスティックな扱いをしているパートもあり、取り組んでいる皆さんに楽しんでいただけるようにした点が、意識した点かなと思っています。
なるべく全員が楽しんで演奏できるように、というのはすごく考えた点です。スローなテンポだけど、「フロンティア・スピリット」なので、「先に進んでいく様子」をぜひ工夫して作ってもらえたらなと思っています。
正直なところ、まさか課題曲に選ばれると思っていなくて、こんなにたくさんの団体の皆さんに演奏していただけることがすごく光栄です。
マーチとはいえ表現やバランス、テンポなど学校、団体さんによって聞かせどころ、特色が出る曲だと思いますので、それぞれのテーマというか、ストーリーを作っていただいて、それに沿った特色のある演奏をしていただけたらと思います。
動画では、伊藤さんが2024年度の吹奏楽コンクールの課題曲Ⅳ「フロンティア・スピリット」についてより詳しく語ってくれています。また、伊藤さんが中学生のときの課題曲「パルセイション」(*1)、「架空の伝説のための前奏曲」(*2)などの思い出の曲や作曲を始めたきっかけについても語ってくれています。
*1 2006年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅲ「パルセイション」(作曲・木下牧子)
*2 2006年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅰ「架空の伝説のための前奏曲」(作曲・山内雅弘)、第16回朝日作曲賞受賞作品