【西新井中学校】入学時は楽器初心者が8割 それでも吹奏楽の強豪になる3つの理由
8割が楽器未経験 大切なのは「百聞は一見にしかず」
7月中旬、東京・足立区にある区立西新井中学校の体育館で、ある音楽コンサートが開かれた。司会は日本語だけではなかった。
この演奏会は、アジアの国内外で幅広い演奏実績がある台湾の「台北市立大安国民中学管楽団」を招いて開かれた日台交流演奏会だ。
![台湾の「台北市立大安国民中学管楽団」との共演の様子](https://www.asahicom.jp/s-plus/story/article10003/img/pic1.jpg)
部員総数53人のうち8割が入学時に楽器未経験者、それでも東京都吹奏楽コンクールの常連校に名前を連ねる西新井中学校の吹奏楽部は、こうした「自分たちよりも上手な学校」との共演の機会を多く持っている。
「百聞は一見にしかず、ですよね」。顧問の宇野浩之さん(61)はそう話す。吹奏楽指導歴40年のベテランで、これまで都内の数々の中学校の吹奏楽部を全国大会に導いてきた。そんな宇野さんが大切にしているのが、吹奏楽の名門校や高校生など「レベルの高い」学校との共演だ。
「『こういう音を出して』『こういうふうに演奏して』と私が言うよりも、いい音を聴くことで生徒たちが感じるものは全然違う」。
![部長の丸本羽夏さん](https://www.asahicom.jp/s-plus/story/article10003/img/pic2.jpg)
でも、初心者がいきなりハイレベルな学校と共演することで、挫折を味わってしまうことはないのだろうか。そんな疑問に、宇野さんはこう答えてくれた。「いい音は誰が聞いてもいい音。良いモノを見たり聴いたりすると絶対に刺激を受けて帰ってくる」
中学に入ってクラリネットを始めたという部長の丸本羽夏さん(3年)も「上手な学校と一緒に演奏させていただくと、自分たちに足りないものが何か、原因を考えるので成長できると思う」と話す。
教え子にプロ奏者も 先生がつなぐ吹奏楽部OB・OGとの絆
もう一つ、宇野さんが大事にしているのは、自身の教え子を中心に構成された吹奏楽団「Witu U Wind Orchestra」(Uは宇野=Uno=の頭文字)のメンバーを中心とした、卒業生との交流だ。教え子のなかにはプロ奏者もいて、そうしたメンバーが、積極的に「後輩」の練習や合奏に参加して教えてくれるのだという。
![](https://www.asahicom.jp/s-plus/story/article10003/img/pic3.jpg)
とにかく多い「本番」の舞台 マーチングも全国レベル
やはり中学に入ってからバスクラリネットを始めたという副部長の戎谷瑞季さん(3年)は、こんな話を教えてくれた。
「西新井中学校の吹奏楽部はとにかく『本番』が多いんです」
吹奏楽コンクールだけでなく、マーチングでも全国レベルを誇る西新井中学校。学校や地域の行事にも積極的に参加し、ほぼ毎月「本番」の演奏があるのだという。「大変ですが、コロナ禍で演奏の機会がなくなって誰かに聴いていただける機会がなくなっていたので、本番があることでいろいろな方に聴いていただけることが幸せだと思います」
そんな西新井中学校が挑む課題曲は「ポロネーズとアリア~吹奏楽のために(課題曲II)」だ。「部員がやりたい曲をするのが一番」という宇野さんは、自由曲も課題曲も「部員たちに選ばせてきた」のだという。
今回も、部員たちが話し合って、「ポロネーズをやりたい」と宇野さんに伝えたという。
西新井中学校吹奏楽部は9月9日(土)、第63回東京都吹奏楽コンクールの中学校の部に出演する。