第1回「女は家を守るもの」と言われて育った…鹿児島の私が東京を目指す訳

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中山美里 小宮山亮磨
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 「女は家を守るもの。私たちが病気になったら誰が面倒をみるの?」

 鹿児島県の大学3年生の女性(22)は、両親からそう言われて育った。

 両親は、いずれも鹿児島出身だ。

 母親は離島で生まれた。家族や親戚、隣近所との和がなにより大切な環境で育ち、義理人情に厚く、お墓参りでは隣のお墓もきれいに掃除する。

 父は薩摩半島の出身。「女は学校になんて行かなくていい」と公言してはばからない祖母に育てられ、家事はほとんどしたことがない。会社員として、単身赴任もしながら定年まで勤め、今は職場を変えて働いている。

 女性が生まれ育った地域は比較的都市部だが、それでも人間関係は濃く、習い事から進学先まで当たり前のように近所の人たちが知っている環境だった。

 小学生のとき、仲良くなった友達がいた。

 母親は、女性がその子と遊んでいるのを見つけると、「あの子は良くないうわさがあるから、遊ばない方がいい。あなたの評判も悪くなるよ」と言った。

 女性が県内の大学に進み、サークルの活動で帰りが遅くなると、「近所から、いつも帰りが遅いと言われる」と顔をしかめた。

 周りの目を気にし、声をあげられない閉塞(へいそく)感。監視されているようで、息が詰まった。

 だから、将来の夢を漠然と考え始めた中学生のころにはもう、私もいつか地元を離れ、自分のことを誰も知らない土地で暮らしてみたいと願うようになった。

    ◇

 事件は、小学2年の登校中に起きた。

 知らない中年の男が、「水を…

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この記事を書いた人
中山美里
デジタル企画報道部
専門・関心分野
データ分析、働き方、ジェンダー、環境
小宮山亮磨
デジタル企画報道部兼科学みらい部
専門・関心分野
データ、統計、自然科学、社会科学
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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2024年11月9日11時0分 投稿
    【視点】

    持って生まれたものや育った環境といった<選べないもの>に決定的に左右されてしまう。その重たい事実と<変化に乏しい濃密な人間関係の中での地方暮らし>を関連づけて都会(都市)と地方の不調和について考えてみたくなる記事だ。(都会に比べて)地方で「

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