第1回日米国防拠点の無人島、迫った影 所有者「中国企業がお金出すと…」
鹿児島の南から台湾にわたって弧を描くように連なる南西諸島。そのうちの一つの無人島をめぐって、日本の安全保障を揺るがしかねない動きが今から数年前にあった。
無人島の名前は馬毛島(まげしま)。
日米の防衛の要所とされるこの島に、中国側の影が迫っていた。
「先生、いま上海に来ています」
環境相の原田義昭(当時)がそんな電話を受けたのは、2019年の夏の終わりごろだった。
高揚した声の主は、東京の建設会社「立石建設」の代表取締役・立石勲(当時、21年に88歳で死去)。立石は1995年、馬毛島の開発会社の経営権を大手銀行から買い取り、立石建設の子会社にしていた。
子会社「タストン・エアポート」(東京都)は馬毛島の土地の99%を所有し、砂利採取や採石の事業をしつつ、米軍基地誘致を掲げて滑走路建設をめざしたこともあった。
日本政府がこの島に、自衛隊基地をつくり、米軍機の訓練にも使う計画を明らかにしたのは2010年代前半のことだった。
しかし、土地の買収交渉が難航した。
交渉の成否のキーマンが立石だった。
そんな人物が、中国の企業に招かれて上海にいるらしい――。
原田は嫌な予感がしたという…