不登校の小中学生、全国で初の30万人超 コロナ禍以降で15万人増
年30日以上登校せず、「不登校」とされた小中学生が、2023年度は過去最多の34万6482人に上ったことが文部科学省の調査でわかった。前年度より4万7434人多く、30万人超は初めて。
また、増加は11年連続で、特に20年度以降に約15万人増えた。同省は、コロナ禍の影響が続いていることや適切な支援不足が背景にあるとみている。
調査は「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」。国公私立学校や各教育委員会が対象で、結果が31日に公表された。
文科省によると、「不登校」は、病気や経済的理由を除き、心理・社会的な要因などで登校できない状況を指す。
調査結果によると、不登校の子は小学校13万370人(前年度比2万5258人増)、中学21万6112人(同2万2176人増)。合計人数は小中学生全体の3.7%(同0.5ポイント増)だった。
なお、病気による長期欠席も近年増えており、この中に実質的に「不登校」となっている子が含まれているという指摘もある。不登校の子の欠席日数は、「90日以上」が55.0%で最多。「出席日数ゼロ」は3.1%だった。
コロナ、教員不足…要因さまざま
増加の要因として、同省は、生活リズムの乱れや学校活動の減少などコロナ禍の影響の継続▽障害などの理由で、特別な配慮が必要な子への適切な指導・支援の不足――などを挙げる。
一方、教員不足など学校の態勢を課題に挙げる専門家もいる。経験の少ない若手教員の増加や長時間労働も相まって、子どもへの必要な支援が不足しがちという指摘だ。
また、同省が近年、「不登校は問題行動ではない」と明確にしてきたことも影響したとみられる。不登校生への支援充実の必要性を定めた教育機会確保法が17年に施行されている。
4%が専門的指導なし
支援状況をみると、学校内外の機関で専門的な相談や指導を受けている子は61.2%で、担任らが週1回以上電話や家庭訪問などをしている子と合わせると95.8%だった。一方、残り4.2%の子は、教員や専門機関などの相談・指導を受けていないという。
同省担当者は「専門的な相談につながっていない子の割合をできるだけ小さくすることが必要」としている。
調査では今回初めて、不登校の子について把握していた状況を教員から聞いた。その結果、「学校生活に対してやる気が出ない等」(32.2%)、「不安・抑うつ」(23.1%)、「生活リズムの不調」(23.0%)――の相談があったことなどが分かった(複数回答可)。同省担当者は、不登校の要因について従来より詳細に把握できたとして「今後の調査での推移をみて必要な対策を考える」としている。
従来は、不登校の子に関する教員の認識を一つ尋ねており、前回調査では「無気力・不安」(51.8%)、「生活リズムの乱れ、あそび、非行」(11.4%)などが上位だった。
伸びは鈍化
ただ、不登校の子の前年度からの増加率は、今回は15.9%で22年度の22.1%から下がり、増加の勢いは鈍った。
中学が18.7%から11.4%に下がったことが要因。同省は23年3月から不登校対策プランを打ち出し、居場所づくりや相談体制の充実などを進めており、この効果が出ているとみる。来年度予算案の概算要求でも支援員増員のための費用などを盛り込んでおり、プランをさらに推進したい考えだ。
一方、人数は少ないものの、小学1~3年の増加率は33.8%と高く、不登校の増加傾向が強まっていた。
いじめ「重大事態」が大幅増
同じ調査では、小中高校などでのいじめについても調べ、認知件数は73万2568件(前年度比5万620件増)、そのうち、心身に重大な被害を受けるなどした事例が認定される「重大事態」は1306件(同387件増)。また、小中高校で確認された暴力行為も10万8987件(同1万3561件増)で、いずれも過去最多だった。学校側の積極的な認知の姿勢などが要因と同省はみている。(山本知佳)
【2023年度 不登校・問題行動調査のポイント】
・不登校の小中学生が11年連続増の34万6482人に(前年度比4万7434人増)。初めて30万人超に。
・小中学校・高校などのいじめ認知件数は、過去最多の73万2568件(同5万620件増)。このうち、子どもの心身に重大な被害が生じた疑いがある事例などが認定される「重大事態」も過去最多の1306件(同387件増)。
・小中学校・高校の子どもによる暴力行為は、過去最多の10万8987件(同1万3561件増)。3年連続で増えた。
・自殺した小中高生は397人(同14人減)。