ポケベル爆発、翌日もレバノン各地で機器爆発 12人死亡、多数負傷
中東レバノンで17日、イスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーらが携帯するポケットベル型の通信機器が相次いで爆発した。レバノン保健省によると、12人が死亡し、約2800人が負傷した。ヒズボラは「(隣国の)イスラエルに全責任がある」と断定し、報復を宣言。18日にもレバノン各地で同様の爆発が起きており、中東の緊張がさらに激化する可能性がある。
ヒズボラの声明によると、通信機器は17日午後3時半ごろに一斉に爆発した。ヒズボラが拠点とする首都ベイルート南部、レバノンの南部地域、ベカー高原のほか、隣国シリアでも同様の爆発で負傷者が出たとみられる。イランメディアによると、イランの駐レバノン大使も負傷した。
イスラエルは爆発への関与について沈黙しているが、米CNNはイスラエルの対外諜報(ちょうほう)機関モサドとイスラエル軍による共同作戦だったとしている。
米紙ニューヨーク・タイムズは、米当局者などの情報として、通信機器のバッテリー横には1~2オンス(約28~約56グラム)の爆発物が埋め込まれていたと報じた。通信機器は遠隔操作で起爆できるようになっており、17日午後3時半にヒズボラ指導部を装ったメッセージを受信して爆発したという。
この通信機器には台湾のゴールド・アポロ社製のラベルが貼られていたが、同社は18日、実際に製造したのはハンガリーのBAC社だと説明した。ゴールド・アポロ社はBAC社にブランド使用権を認めているという。
ロイター通信は、モサドが数カ月前に5千個の通信機器に爆発物を仕込んだというレバノン当局者の見方を報じた。ヒズボラの指導者ナスララ師は2月に、携帯電話を使わないように警告していた。メンバーらの位置情報などが特定されることを警戒していたとみられ、その代替手段としてローテクのポケベル型の通信機器を使うようになっていたという。
昨年10月にパレスチナ自治区ガザでイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まって以降、ハマスに連帯を示すヒズボラとイスラエルの間でも攻撃の応酬が続いており、今後さらなる戦闘激化が予想される。(其山史晃、台北=高田正幸)
翌日にも各地で爆発 今度はトランシーバー型か
AP通信によると、レバノン国営通信は18日、同日にも無線の通信機器の爆発があり、9人が死亡、300人が負傷したと発表した。首都ベイルートなどでも爆発が起きている模様だ。ロイター通信は、ヒズボラが使っているトランシーバー型の無線機が爆発したとしている。
ロイターは、破壊された端末内部のラベルに「ICOM」「Made in Japan」と書かれていると指摘。端末の形状などから、日本の通信機器メーカーのアイコム(本社・大阪市)の「IC-V82」というモデルとみられ、2014年に販売中止になっていたと伝えた。
アイコム(大阪市平野区)は19日午前、朝日新聞の取材に対し「偽物の可能性も含めて、状況を確認中だ」と答えた。
同社幹部によると、爆発した無線機に記された「IC-V82」の製品は、陸上業務用の海外専用品で、2014年まで10年以上にわたって全世界で約16万台販売した。着脱式のバッテリーを充電して使い、販売先には中東の代理店もあったという。
ただ、この品種を含む複数の製品について、海外で精巧な模造品が生産されていたことがわかり、2013年8月からはホログラムと呼ばれる識別シールを本体に貼って販売。翌年には出荷を停止した。
現地報道の写真では、爆発したとみられる無線機にホログラムが見あたらず、販路を特定するシリアルナンバーがあるかどうかも判然としなかった。同社幹部は取材に「偽物の可能性が高いと思っているが、うちで作ったものかどうかも完全に否定はできない。どちらにしても可能な限り情報を集めて、徹底的に調べたい」と話した。
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