「当たり前」問う学問、衰退の懸念 国立大生が値上げに反対する理由
東京大学の授業料引き上げの検討に議論が起こる中、広島大も5月に授業料引き上げについて会見で学長が言及しました。経済的に厳しい、都市部への進学が難しい人の受け皿となっている地方国立大でもなぜ引き上げが必要なのか。大学の競争力強化より大事なことがあるのでは――。「広島大学学費値上げ阻止緊急アクション」を立ち上げて活動する広島大2年の原田佳歩さん(20)に聞きました。
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――反対のアクションを起こそうと思ったのは。
東大で学費値上げの検討が明らかになってから、ほかの大学でも流れがあるのでは、と思っていたのですが、5月24日の広島大の会見で値上げについて言及があり、早いなと思ったのが最初です。
元々、今年の2月から試験期間中の図書館の開館時間延長の希望などキャンパスライフ向上を目指す団体として活動していました。元の活動をベースにこの問題のワンイシューにしぼって訴えることを決めて、X(旧ツイッター)のアカウントやLINEグループ、オンライン署名活動を始めました。
――授業料の値上げはやはり困りますか。
値上げの問題は私個人の環境だけでなく、さまざまな学生にかかわる問題だと思っています。値上げ反対に寄せられた声にも、学費減免や奨学金の対象になる世帯収入を上回っていたとしても、親が進学に積極的でない、家計やアルバイト収入が急変して厳しいなど、学費や仕送り、生活費が十分に得られない人がいます。世帯年収だけではわからない、可視化されにくい「個人の貧困」の状況にある学生は確かにいます。私も、もし学費が上がったとしたら、仕送りを減らさなければならないかもしれない、と親に言われました。値上げの分、学生の負担が多くなるのは明らかです。
大学も経営が厳しいから仕方がない、といった理由を受け入れるだけでいいのか。この問題に目を背けて平穏な学生生活が送れたかもしれませんが、学生の立場でも誰かがやった方がいいよね、と仲間と話し合いました。1年生から4年生まで約10人で活動しています。
――地方国立大では、地元や近隣の道府県で進学を希望する人にとっても授業料値上げは影響がありそうです。
競争重視で失わるもの
東大では親の世帯年収が高い…
- 【視点】
そもそも、今のままでも国立大学で初年度にかかるお金はおよそ80万円。それ以降も授業料が年間約54万円と、決して安くありません。さらに、30年前から仕送り額は3割以上減少しており、家賃や生活費を自分でやりくりするため月に8万円くらい稼がない
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