松本人志さん訴訟 記事の女性「今まで被害のことを忘れた日はない」

金子和史 島崎周 滝沢文那
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 お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さん(60)に性的な行為を強要されたとする女性2人の証言を報じた週刊文春の記事で名誉を傷つけられたとして、松本さんが発行元の文芸春秋などに5億5千万円の賠償などを求めた訴訟の第1回口頭弁論が28日、東京地裁であり、文春側は請求の棄却を求めた。松本さんは出廷しなかった。

 週刊文春は昨年12月下旬の記事で、女性2人が2015年の異なる時期に、お笑いコンビ「スピードワゴン」の小沢一敬さん(50)から、松本さんの参加を伏せられたまま誘われたという、東京都港区のホテルでの飲み会について報道。松本さんと寝室でふたりきりにさせられ、「俺の子ども産めるの」などと迫られた上、キスや口淫などを強要されたと報じた。

 松本さん側は「性加害に該当するような事実はない」とし、訴状などでは「一方的な供述だけを取り上げた極めてずさんな取材」と反論。内容の存否を判断するため、匿名になっている女性2人の特定も求めた。

 文春側は答弁書などで、女性2人には複数回取材し、証言の具体性や裏付けがあるかを慎重に検討して「真実と確信した」と主張。記事のどの部分を「真実ではない」として争うのかを明らかにするよう求めた。松本さんの言動として報じた内容は「特異なもの」で、2人を特定しなくても認否は可能だと指摘した。

 松本さんは第1回口頭弁論前の25日、「ただただ困惑し、悔しく悲しいです。世間に真実が伝わり、一日も早く、お笑いがしたいです」などとするコメントを発表した。(金子和史)

証言台に立つ意向

 週刊文春が昨年12月27日発売号で記事にした女性2人のうち30代の1人が朝日新聞の取材に応じ、週刊文春の報道について「記事の内容は間違っておらず、事実だ」と話した。

 「今まで被害のことを忘れた日はない。屈辱的な気持ちだった」。女性は動画や街中の広告で松本さんを見るたびに当時を思い出し、被害にあったというホテルにいるような感覚に襲われる、と話す。

 訴えた理由について「なかったことにはしたくなかった。泣き寝入りせず、訴えることが使命だと思った」。一方で、記事が出てからネット上では「虚言癖」「金目当て」といった書き込みもあったという。女性は「記事にある私の証言は事実だし、文春から金銭は受け取っていない」と話す。身元や自宅が特定されて部屋に誰かが入ってくるのではないかと不安になり、護身のために包丁を寝る時や入浴時に常にそばに置いていたと明かす。

 松本さんが今回の訴訟を起こして「一日も早く、お笑いがしたい」などとコメントしたことについては「自分が被害者のような言いぶりで違和感を覚えた。性加害をしたと認める気も、反省する気もないのだと感じた。憤りしかない」。女性は今後、証言台に立ち、主張をしていくつもりだという。

 この女性のケースについて、朝日新聞は吉本興業や、松本さん側に事実関係の確認などを求めた。吉本興業や、松本さんの代理人弁護士からは期限までに回答はなかった。小沢さん所属のホリプロコムは「現在、松本氏と株式会社文芸春秋との間で訴訟が係属中であることから、回答を控えさせていただきます」としている。(島崎周、滝沢文那)

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この記事を書いた人
金子和史
東京社会部|裁判担当
専門・関心分野
事件、司法
島崎周
東京社会部|文部科学省担当
専門・関心分野
性暴力、性教育、被害と加害、宗教、学び、人権