タオルに包んだ日本版スマブラ 渡辺雄太の「孤独」、寄り添った友情
2月がやってくると、宮崎県延岡市の楠元龍水(くすもとりゅうすい)さん(28)は海を渡る。
米プロバスケットボールNBAで奮闘する親友に会うために。「純粋に、頑張っている姿を見たい。画面越しじゃなくて」
親友とは、サンズに所属する渡辺雄太(28)。香川・尽誠学園高男子バスケ部で同級生だった。
楠元さんは高校卒業後、指導者になろうと京都教育大へ進学した。NBAの舞台をめざして米国に留学した渡辺と同じく、バスケに将来の夢をみていた。だから、だろう。1万キロ以上の距離があっても、連絡は途絶えなかった。
初めての「米国旅」は、京都教育大4年だった2017年2月のこと。渡辺が全米大学体育協会(NCAA)1部のジョージ・ワシントン大(GWU、当時3年)に在学しているうちに生でプレーを見てみたかった。
衝撃的な試合だった。
相手はバージニア・コモンウェルス大(VCU)。GWUが2点を追う第4クオーターの残り1秒を切ったとき、渡辺が3点シュートを決めて逆転した。「ワタナベコール」がわき起こり、親友は一時、会場のヒーローになった。友として誇らしく思ったのを覚えている。
直後、まさかの展開に。VCUの選手がゴール下からスローインするとき、GWUの選手がファウルを犯した。ファウルを誘う相手の策にはまったのだ。フリースローを2本とも決められ、1点差での劇的な逆転負けだった。
試合後、先にアパートに着き、渡辺を待った。午後10時ごろに帰宅した渡辺は「この世の終わりのような顔」をし、疲れ切っていた。食事をともにし、深夜に就寝。翌朝起きると、もう姿はなかった。
午前7時には大学に行ってい…
1990s - 2023 JAPAN BASKETBALL
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