県中部の水道水から高濃度の農薬検出 昨年8月 東大院教授が分析

井上潜
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 秋田県中部の市の水道水から昨年8月、農薬が高濃度で検出された。ネオニコチノイド系のジノテフランという殺虫剤が1リットル当たり868ナノグラム検出され、EU(欧州連合)の飲料水の規制値の8倍を超えていた。水田で使われた害虫駆除の農薬が河川に流出し、下流で取水した市の上水道に影響を及ぼしたと考えられるという。

 東京大学大学院の山室真澄教授(陸水学)が昨年5~11月、大潟村と近隣の市の水道水を月1回採水して分析した。大潟村の水道水はジノテフランの濃度が1リットル中1・36~3・85ナノグラムだったが、この市では最も少なかった5月で46・5ナノグラム。8月の水道水では868ナノグラムだった。

 9月は、この市の水道水と、原水となっている河川水も調べた。ジノテフラン濃度は、水道水88・5ナノグラム、原水111ナノグラムだった。

 県内の水田では7月下旬~8月中旬、カメムシ駆除の農薬を散布する。この時期に水田に蓄積した農薬が河川に流れ出て、8月のジノテフラン濃度が高まったと考えられるという。

 ネオニコ系の農薬は昆虫以外の動物への影響が比較的少ないとされ、世界で広く使用されている。ただ、神経系にダメージを与え、近年は人にも影響を与える恐れが指摘されている。

 山室教授によると、EUでは水道水中の農薬について、個々の農薬の濃度は1リットル中100ナノグラムを超えてはならず、全農薬の合計濃度も500ナノグラムを超えてはいけない。一方、日本では水道水中の農薬について規制値は定められておらず、浄水場で検査する義務はない。一部の農薬は「水質管理目標設定項目」として基準値が設けられているが、ジノテフランは0・6ミリグラムと「EUなどと比べ非常に緩い」(山室教授)という。

 山室教授は「米作が盛んな地域では、水田起源のネオニコによって、水道原水にも高濃度のネオニコが混入する例が多いと考えられる」と指摘。八郎湖の水を原水とする大潟村は、湖を囲む堤防から浸透した水を集めて水道水とする。山室教授は「堤防内の土壌を浸透する過程でネオニコが除去されたと考えられる。農薬の人体への影響は否定できず、土壌や砂丘に浸透させて濾過(ろか)する方法も検討すべきだ」と話した。

 調査分析結果は、5月に出された日本内分泌攪乱(かくらん)物質学会のニュースレターに掲載された。(井上潜)

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