わなにかかった「子グマのまーくん」射殺した男性の後悔

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中山直樹
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 岩手県奥州市で2月、許可なく子グマを飼育し、その後射殺したとして、猟友会の男性(77)が逮捕された事件があった。山でわなにかかったメスの子グマを見つけて連れ帰り、「まーくん」と名付けてかわいがっていたという。男性は、なぜまーくんを射殺しなければならなかったのか。

 昨年6月下旬のことだった。「シカ用のくくりわなに子グマがかかっている」。市職員から男性に電話があった。猟友会の仲間の男性(72)と山に向かった。

 わなにかかった子グマは、人に危害が及ばない山中に放すのが普通だ。市職員は放すように言って、その場を離れた。子グマは弱り、うずくまっていた。「こりゃかわいそうだ。しばらく預かってやろう」。男性は子グマを軽トラに乗せて帰宅した。

母グマか、近くの別のわなに…

 自宅の庭に、ベニヤ板と金網で檻(おり)を作った。まーくんと名付けたのは毛並みが真っ黒だったからだ。まーくんは檻の中で「クークー」と小さな声で鳴いた。ミルクを皿に入れても、なかなか飲まない。哺乳瓶を買って来てミルクを入れてみると、しばらくして飲んでくれた。

 最初のうちは、山に逃がすつもりだった。だが、檻から外に出すと、近くのやぶに隠れるものの、戻ってきてしまう。何度やっても同じだった。

 「母親に習うはずのえさの取り方がわからねえんだ」と男性は思った。実は、まーくんがわなにかかる前日、近くにしかけた別のわなに、母親とみられるクマがかかっていた。錯乱状態で暴れたため、市の依頼を受けて男性が射殺していたのだった。

 2カ月ほどがたった。まーくんはバナナやブドウを食べるようになった。食パンをあげると、ものすごい勢いで食べた。夏にホースで水をかけてやると、「もっとかけて」というように腹を上にして寝転んだ。男性も妻も、まーくんがどんどんかわいくなった。

 しかし、まーくんの体もどんどん大きくなった。

 飼い始めてから約5カ月。1…

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この記事を書いた人
中山直樹
ネットワーク報道本部|都庁担当
専門・関心分野
人権問題、災害、人口減