信号が変わるのを待っていた? 永瀬正敏が撮ったニューヨーク(290)
国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回もニューヨークでの一枚。目が離せなかった横断歩道で見かけた光景とは?
偶然にも前回に引き続き横断歩道での写真。
目の前の女性はスマホを見ながら、
信号が変わるのを待っていた。
うん? 変わるのを……。
逆の手にはトランクを持っているので、
旅行者なのか?
それとも仕事関係の荷物なのか?
スマホの画面でリザベーションしているホテルまでの道順か?
もしくは、観光目的地までの道順か?
いずれにせよ、信号が変わるのを……。
変わるのを……うん?
もしかすると急に友人や家族から、
急ぎのメールが入ったのかもしれない?
何かの変更を知らせるメールか?
もしかすると、
お気に入りの曲を探しているのかもしれない。
まぁ、もうすぐ信号が……うん?
信号が変わ……うん? うん?
変わってる!!!
いや、もう随分前に変わってる!
点灯している人型電球の足は、
思いっきり開いている。
でも彼女はそこから一向に動く気配がない。
その堂々とした態度が勇ましくも感じる。
その後も渡ってきた人は、
彼女の横を何人も通り過ぎたので、
信号が変わったことは気付いたはずだ。
でも、彼女は動かない。
そのうち“待て!”の表示が現れた。
でも、彼女は何も動じなかった。
次の“渡ってよし!”のサインにも動じず、
僕が見ていただけでも3回目の“GO”サインの後、
やっと、そして悠然と、
彼女はその横断歩道を渡りきった。
ある意味すごいものを見てしまった瞬間だった……。
きっと彼女はスマホに夢中だったんでしょうね。
もしかしたら旅行者なのかと私は写真を見て推測します🧐
3回信号がかわるまで見ていた永瀬さんもかなりですよ!