出会いの一瞬をカメラに 永瀬正敏が撮ったニューヨーク(289)
国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回もニューヨークでの一枚。思わずカメラを構えた光景とは。
出会いの瞬間。
それは突然訪れる。
マンハッタンを何の目的もなく歩いていた時、
道を横断しようと横断歩道の信号が変わるのを待っていた。
目の前の安全地帯に取り残された数人の人々も、
同じようにその瞬間を待っていた。
友人と何げない会話を交わしながら、
その人たちを漠然と見ていた時、
一瞬目の前のカップル(おそらく)の女性が、
男性の肩を抱いた。
幾何学的で硬い感じの街の中に、
何か血の通う温かいものが、
サッと流れたような気がして、
友人の話を置き去りにしてカメラを構えた。
シャッターを押した瞬間、
左側から勢いよく車が横切った。
再び彼らを見ると、男性の肩に置かれていた手は、
もうそこにはなかった。
「車に邪魔されて撮れなかったかな……」
そう思っていた僕に友人が、
「撮れた?」
と声をかける。
その場で恐る恐るチェックすると、
この瞬間の写真が浮かび上がった。
僕の表情を見て、その友人が、
サムズアップして見せた。
流れるような車の姿を含め、
出会いの一瞬を収められたこの写真も、
僕のお気に入りの1枚になった。
無事、撮れて良かったですね、出会いの一瞬!
とても素敵な一枚です✨🎞️✨
通り過ぎる車からちょうど二人が写っていることでより際立ち〝瞬間〟を感じますね。