前向きにがんと闘い続けた愛ちゃんへ お疲れ様、ありがとう
フラワーアーティストの東信さんが、読者のみなさまと大切な誰かの「物語」を花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら。
〈依頼人プロフィール〉
藤浪 妙子さん 50代
会社員
山口県在住
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梅雨真っ只中で、毎日のように大雨が降り続く6月の末、愛ちゃんは旅立ってしまいました。彼女は、がんと闘う20年間に終止符を打ったのです。天国に行ってしまうのには早すぎる、50代半ばという若さでした。
救急搬送されてから13日間、彼女は生死を彷徨(さまよ)いながらも、必死で闘いました。まだ生きたいという執念は、ずっとそばに付いていた旦那様も驚くほどの頑張りだったそうです。
彼女との出会いは25年以上も前になります。友だちの友だちという関係でしたが、私も彼女も長女で、性格も同じお姉さんタイプ。そのせいか気が合って、これまでずっと毎日のように連絡を取り合う仲でした。
記念日にはかかさずお祝いのメッセージを伝えてくれて、節目節目で素敵な贈り物を届けてくれました。大阪に住むセンスのいい彼女らしく、新しいスイーツが人気になると送ってくれたり、旅に行ったときにはお土産もたくさん送ってくれました。地方に住む私は、いつも胸をわくわくさせながら、彼女が送ってくれた包みを開けたものです。
大阪と山口では距離もあることから会える日は限られていましたが、とくにここ10年ほどはSNSでつながって、毎日姉妹のようにたわいのないおしゃべりをする仲に。誰よりも身近な存在として、とても近くで過ごしていたように思います。
そんな彼女の身体にがんが発見されたのは、出会ってからわずか数年後のこと。当時は初期の段階だったという事もあり、最後にこんな事になろうとは、夢にも思っていませんでした。ここ数年はがんとの厳しい闘いが続いていましたが、それでも朗らかに、前向きに、がんと闘う彼女には、脱帽の一言しかありませんでした。
「病気に勝って、必ず山口に遊びにいくからね!」
彼女からのそんな言葉を、何度聞いたかわかりません。一方私は、励ましの言葉を伝える以外になすすべもなく、遠くから祈り続けるのが精一杯でした。
ただ、有り難かったのは、ご家族にお許しを頂き、最後のお別れに彼女に会えた事でした。
眠っている彼女に「お疲れ様」と伝えられて、旅立つ彼女を見送ることができて、本当に有り難かったです。
彼女が頑張り抜いたように、自らも今後の人生を恥ずかしくないものとできるよう精進していけたらと思っています。愛ちゃんありがとう。長い間友達でいてくれてありがとう。安らかに……。そんなメッセージを込めて、いつも優しく微笑(ほほえ)む彼女に、柔らかいピンク色の花束を贈りたいです。ふんわりとした花束が、彼女のイメージにぴったりです。どうぞよろしくお願いいたします。
花束をつくった東さんのコメント
ご投稿者さまからいただいたリクエストは、柔らかなピンク。それをベースに、おふたりの思いの強さをイメージして、濃い目のコチョウラン(ファレノプシス)をアクセントにお入れしています。
多肉植物はお花が終わったあとも取り出して、土の上に置いたり、水につけたりしてもらえればずっと楽しんでいただけるでしょう。バラやハーブ、ゼラニウムなどが放ついい香りが、投稿者さまの思いとともに天国に届きますように!
文:福光恵
写真:椎木俊介
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。選んだ物語を元に東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
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