84歳、初めて一人暮らしをする花好きの母へ エールを込めて
フラワーアーティストの東信さんが、読者のみなさまと大切な誰かの「物語」を花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら。
〈依頼人プロフィール〉
加藤頼子さん 57歳
会社員
茨城県在住
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私の母は小さい頃から大家族で暮らし、戦後の事情で一時は親戚家族が同居したこともあったとか。あまり家のことが得意でなかったお嬢様育ちの祖母に代わり、中学生の頃には家事を取り仕切っていたと聞いています。
彼女の女ばかり5人の姉妹が結婚して家を離れる頃には私たち3人のきょうだいが生まれ、曽祖母、祖父母、父と私たち子ども3人の8人暮らしが始まりました。ご飯はいつも一升炊き! ギョーザはいつも100個超え! 自分も子育てをするようになった今、つくづく思います。大変な苦労だっただろうと。
きょうだいげんかは絶えず、親子げんかもあり、とにかくにぎやかな騒がしい家でした。その中、母は家族を仕切るリーダー的存在。「仕事は農業」といいつつ、長年、地方・家庭裁判所の調停委員を務めながら、やがて曽祖母を送り、私たち子ども3人が独立した後、祖父母を介護して送り出しました。
そして10年ほど前から始まった、父と母、夫婦水入らずの生活。「こんな生活初めてね」と言っていたのに、まもなく父が病に倒れ、また長い介護の末、父は昨年10月に亡くなりました。そのときから母の、84歳にして初めての一人暮らしが始まりました。誰かの世話をすることもなくなり、ご飯を食べるのも一人。何をしていいのかわからないでいるのかと心配になりました。
でも当の本人は、強がりか本音か。「寂しいには寂しいけれど、自分のためだけにするあれこれは本当に楽ちん。こんな生活もあったのね」と申しておりました。本当に長い間、子育てに、介護に、一人奮戦した母に感謝の気持ちと、一人暮らし頑張ってのエール、そしてできることなら楽しんでという娘からの思いを込めて、以前は畑で花を育てていたこともある花好きの母に、花束を送りたいです。
花束をつくった東さんのコメント
大家族の家を、長年切り盛りしてきたお母様へのお花です。ご投稿から、家族のためにチャキチャキと元気よく働くお母様の姿が目に浮かびました。そんなイメージを盛り込みつつ、お母様が元気をもらえて、また何かを発見したりできるようにと、普段はなかなか見ることのない珍しいお花を集めたアレンジをご用意いたしました。
夏の花であるミニパイナップルやノイバラの実などで、秋らしさもプラス。珍しい花材と、自然を感じるグリーンを組み合わせたカラフルなアレンジメントをお楽しみください。
文:福光恵
写真:椎木俊介
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。選んだ物語を元に東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
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