手で操作するあの楽しさ 道具としてのクルマを味わえる「ホンダ・シビックRS」 | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]
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手で操作するあの楽しさ 道具としてのクルマを味わえる「ホンダ・シビックRS」

「RS(ロードセーリング)」はシビック1200RS(1974年)で使われたサブネーム。「あたかも水上を帆走するように、悠々と気持ちよくハイウエイを走る」と説明された

なにが嬉しいって、乗用車からマニュアル変速機がなくならないことだ。日本で登録される新車のうちマニュアル変速機はどんどん減っているようだけれど、いっぽうで、手でギアを変える楽しみを味わわせてくれるモデルがいくつも登場している。2024年9月に発売された「ホンダ・シビックRS」はそのうちの1台だ。

日本ではツインクラッチが主流 よくできてはいるが…

ご存知のひとも多いと思うけれど、レースカーの世界では、はやくも80年代からクラッチペダルがなくなり、2ペダルとかデュアルクラッチとか、日本だとツインクラッチとよばれる変速機が常識化してきた。

奇数のギア(1速とか3速)と偶数(2速とか4速)のギアが分けられていて、エンジン出力をタイヤを駆動するシャフトに伝えるときに使われるクラッチが、奇数のギア用と偶数用との二つ用意されているのが機構上の特徴。コンピューターが加減速に応じて、ギアを選択する。たとえば1速から2速へというとき、すかさず待機状態の2速のギアのクラッチをつなぐ。すばやいギアチェンジが特長となっている。

いちはやくツインクラッチを実用化したメーカーがポルシェだ。PDKと名付けられたツインクラッチ式変速機について、同社では、多くのメリットをあげている。

機械を使って変速するほうが人間よりはるかに速くて確実であること。ギアをより多段化することで、状況に応じてより適切なエンジンパワーを使えること。そして、やはり多段化で燃費向上が見込まれること。

じっさい、いまのツインクラッチ車はよく出来ている。ぱっとアクセルペダルを踏み込むと、間髪をいれずにクルマが力強く加速する。快適性を重視するラグジュアリーカーにおいては、従来のトルコン式オートマチック変速機が(やはり8速とか9速まで)多段化していて、こちらも技術の進歩がみられる。変速機をもたない電気自動車は、モーターの特性ゆえ、ツインクラッチの開発者が目標としたような、アクセルペダルへの踏み込みに対してすかさず加速するのがメリットだ。

改良続けて結実した「MTの理想型」

手で操作するあの楽しさ 道具としてのクルマを味わえる「ホンダ・シビックRS」
ファストバックセダンで、リアスポイラーなどはオプション

このように、クルマにとって変速機は肝腎なのだ。そこで本題だけれど、もうひとつ、大事な要素がある。クルマを趣味の道具としてとらえたばあい、操作じたいがなにより重要。クラッチペダルを踏んで、シフトレバーを手で操作してギアを変える——このたのしさが本稿の主題なのだ。

ホンダは現行シビックでも「EX」や「LX」というガソリンエンジンモデルに、6段マニュアル変速機(MT)を設定してきた。シビックの名を持つモデルの「頂点」は、レースにも参戦している「タイプR」で、こちらもMT。

2024年9月に登場のシビックRSは、従来のMT車だとちょっと不満で、しかし、タイプRまではいらない(タイプRはいわゆるタマ不足で入手困難だし)というひと向けに開発されたモデルと説明される。

「クルマのたのしみを原点回帰的に突き詰めた結果、まさに自分の“手”であやつってこそ、と結論づけまして、運転に自信がないという方から熟練した方まで堪能していただける、MTの理想型として開発しました」

手で操作するあの楽しさ 道具としてのクルマを味わえる「ホンダ・シビックRS」
RSの登場で「EX」と「LX」はオートマチック仕様のみとなる 写真:筆者

開発を担当した四輪開発センターLPL室LPL(ラージプロジェクトリーダー)明本禧洙(よしあき)チーフエンジニアはそう語る。

シフトレバーがすっとゲートに入る気持ちよさ、エンジン回転とシフトタイミングのマッチング、操作しやすいクラッチペダルなど、現行シビックのMT車をベースに改良を加えた結果が、今回のRSとして結実したという。

「レヴマッチ」で初心者も楽しくギアチェンジ

じっさいに、たのしい。従来のシビックEXと基本的におなじ1.5リッターガソリンエンジンのパワーをうまく活かして走れる。1速でクラッチをつなぐとき、少しだけアクセルペダルを踏まないとエンストする可能性がある。フライホイール(はずみグルマ)が軽いからだ。そのぶん、クラッチをつないで加速していくと、エンジンはさーっと高い回転域まで回る気持ちよさを味わわせてくれる。

従来のモデルだと、エンジンの回転の上がりかたがややゆっくり。RSはギアチェンジを駆使してエンジン回転と合わせて力の出るトルクカーブに乗せて、胸のすくようなパワフルな加速感を味わうことが出来る。ここが大きく違う点だ。

手で操作するあの楽しさ 道具としてのクルマを味わえる「ホンダ・シビックRS」
シートは人工スエードが中央にはられていてからだが滑りにくく疲れにくい 写真:筆者

足まわりにも、RS専用のチューニングがほどこされている。おかげでハンドルを切ったときの車体の動きは速いし、カーブを曲がるときの動きにも俊敏さがある。運転が楽しいセダンというのが、あまり類がなく、クルマ好きとしてはたいへんうれしい。

シフトタイミングとエンジン回転を合わせるとか、クラッチ操作とか、慣れたひとにはもっともたのしい部分であるが、これから慣れるというひとのために、シビックRSでは、あたらしい技術が採用された。「レヴマッチ」といって、たとえばシフトダウンするときにエンジン回転を上げる操作などを、コンピューターが手伝ってくれる。

手で操作するあの楽しさ 道具としてのクルマを味わえる「ホンダ・シビックRS」
車高は従来のモデルより少し落としてあり、ロードホイールの外径も18インチで、かつ大型のバンパー一体型エアダムがスポーティな印象の外観 写真:筆者

で、レヴマッチを「しろうとだまし」などと揶揄(やゆ)してはいけない。コンマ数秒を争うレースで、マニュアル車を走らせようというとき、アクセルペダルを踏む力をゆるめて、クラッチを踏んで、ギアを変えて、ギアをつなげて、そして加速という一連の動作が遅れを呼ぶことがある。そのときにもレヴマッチは有効な技術だ。

マニュアルのひとつの進化形、と、レヴマッチと同様のシステムである「i-MT」をGRヤリスなどに採用するトヨタ(GR)の技術者が語ったことがある。シビックRSでも、なるほどと思わせられる。MTの楽しさを知っている、おとなのためのセダンなのだ。

【スペックス】
Honda Civic RS
全長×全幅×全高=4560×1800×1410mm
ホイールベース:2735mm
1496cc4気筒 前輪駆動
最高出力:134kW@6000rpm
最大トルク:240Nm@1700〜4500rpm
6段マニュアル変速機
燃費:15.3km@l(WLTC)
価格:419万8700円

写真:Honda

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