津軽海峡を眺めて過ごす割烹温泉旅館 北海道・湯の川温泉「若松 函館」
■連載「楽しいひとり温泉」は、国内外の温泉をめぐり、温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する筆者が、テーマごとにひとり温泉にぴったりなお宿を紹介します。
海峡の風景は旅情を誘います。海のかなたに浮かぶのは下北半島。そういえば、青森県の下風呂温泉からは、函館の町が見えました。
今回の旅は、函館市の湯の川温泉。室町時代から続く歴史を持ち、幼少期に難病にかかった松前藩主が、この温泉で回復したといわれています。
1922(大正11)年創業の「割烹(かっぽう)旅館 若松 函館」は、客室からも温泉からも津軽海峡と函館山を望む景色が広がります。老舗の風格を感じる木造の玄関前には、ごうごうと音を立てて噴出する自家源泉があります。
カモメ飛ぶ津軽海峡を眺める温泉
敷地から湧く温泉は、この宿に泊まらないと入れない自家源泉かけ流し。たっぷりと注がれる温泉が、なめらかに流れていく気持ちのいい内湯。露天風呂は、肩まですっぽりと温泉に浸れる深めの湯船で、潮の香りとカモメの声、津軽海峡の向こうには下北半島がぼんやりとかすんで見えます。
泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物泉、成分総計7.782g/㎏で塩分濃いめの温泉です。体の芯まであたたまって、心地よく発汗できました。
宿の玄関前に自家源泉の東屋があります。ゴゴッ、ゴゴゴゴという音に誘われて中をのぞいてみると、勢いよく源泉が噴出しています。噴き出すたびにシュワっと炭酸が弾けて生きている温泉のパワーを感じます。
海峡を眺めて過ごすひとり旅
全室オーシャンビュー。ひとり旅プランで泊まれる客室は、新館の和室12.5畳で、寝心地にこだわったオリジナル寝具のローベッド。目覚めれば海と空の景色が飛び込んできます。
窓辺の椅子に腰かければ海峡の風景をひとり占めの気分、好奇心いっぱいのカモメがすぐ近くまで飛んできました。温泉から戻ったらエスプレッソコーヒーを淹(い)れて、海を眺めてぼんやり。「はるばると海峡を渡って函館へきてよかった」なんて、旅の幸せに浸る時間です。
夕日は陸の方へ沈むのですが、オレンジ色に染まる空に函館山のシルエットが浮かび上がりロマンチックな情景にうっとり見入ってしまいます。
素晴らしい。
今秋雪の季節となる前に訪れてみよう。
20年前に訪れた想い出の宿です。
もう一度必ず訪れたいと思っています。