しびれる辛さをお好みで。麻婆豆腐が名物のアジア食堂「かかん京都店」
個性豊かな個人店が続々とオープンし、にわかに注目のエリアとなっている左京区・北白川界隈。その流れの中心的存在が、今年1月にオープンした麻婆豆腐の店「かかん京都店」です。鎌倉にある本店は行列必至の人気店とあって、関西初出店となる京都店も瞬く間に評判に。白川疏水沿いの桜並木や大文字山を眺める開放的な空間は、観光客にとっても地元客にとっても憩いの場になっています。
■京都から毎月、季節の便りを出すように。連載「京都ゆるり休日さんぽ」では、いま訪ねたい今昔の人気店、季節の味覚や風景を、さんぽのみやげ話とともにお届けします。
地元の豆腐と秘伝の醬が自慢の麻婆豆腐
熱々の鉄鍋で運ばれてきたのは、「かかん」名物、麻婆豆腐。初めて来店する人のほとんどがオーダーするという、押しも押されもせぬ看板メニューです。もともとは、オーナーが「かかん」の前に営んでいた飲食店で、常連客への裏メニューとして提供していたものだとか。鎌倉に麻婆豆腐の店としてオープンするとあっという間に人気が広がり、都内にも拠点を増やしつつ、京都にも待望の「あの麻婆豆腐」がやってきました。
「味のキモとなる合わせ醬(ジャン)は各店共通ですが、かかん内でも限られた人しかレシピを知らされない、秘伝の味です。豆腐は、京都店ではすぐそこの『清水豆腐店』から作りたてを仕入れています。京都でオーナーと物件を探していたとき、広々として心地よく、目の前に豆腐屋さんがあるなんて、これ以上ない条件だと思ったんです」
そう話すのは、京都店の店長・小野峻平さん。話に出た清水豆腐店は、店の窓から見えるほど、目と鼻の先です。同じ建物の1階には喫茶店「珈琲み空」が、少し歩くと焼菓子店や雑貨店、古書店などもあり、店同士の交流が地域に心地よい活気を生んでいる様子。哲学の道も近く、地元の人にも観光客にも絶好の散歩コースになっています。
食堂のように気軽に立ち寄れて居心地よし
麻婆豆腐以外にも、よだれ鶏、魯肉飯(ルーローハン)、水餃子など、老若男女に愛される中華メニュー、喫茶は終日利用でき、アジアのスイーツもそろいます。タイル張りが印象的なカウンターから小上がりや大テーブルもあり、一人でのランチにも、複数人での会食にも使いやすい空間です。各テーブルに置かれた風味違いの山椒や唐辛子は、それぞれが好みの辛さやしびれ加減に調整できるようにするため。大人も子どもも、辛さや刺激が好きな人も苦手な人もおいしく食べられる、食堂のようなおおらかさが魅力です。
「厨房の奥から、トントンとまな板を叩く音やジャッと鍋を振る音が聞こえる、昭和の食堂のような店がいいなと思っていて。かかんという店名は、食堂の音をイメージした擬音語なんです」(小野さん)
カウンターの向こうからおいしそうな音が聞こえ、ぐつぐつと煮立つ鉄鍋に歓声があがる。「かかん」で奏でられるのは、そんなにぎやかで心地よい時間です。名物の麻婆豆腐を一度食べたら、すぐにでも「また食べたい」「今度はどれを食べよう」と次の来店を想像してしまう。北白川になくてはならない、みんなの街の食堂です。
【取材協力】かかん京都店
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BOOK
大橋知沙さんの著書「もっと、京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が2024年1月に出版されました。「京都のいいとこ。」の続編。ひとり旅でも、満たされる、自然体の京都の楽しみかたを提案。定番からひみつの場所まで、選りすぐりの約100軒をご案内します。&Travel「京都ゆるり休日さんぽ」の中から厳選、加筆修正、新たに取材しました。「京都のいいとこ。」に引き続き、この本が京都への旅の一助になれば幸いです。1430円(税込み)。