タイで衝撃を受けたスペシャルなコーヒーを日本へ。「AKHA AMA COFFEE KAGURAZAKA(アカアマコーヒー カグラザカ)」(東京・神楽坂)
豆本来の甘みとほどよい酸味
これまでに訪れた国は80カ国以上。1年の3分の1を旅先で過ごしたこともあったという世界中を旅するトラベラーでもある市川純平さん、山下夏沙さん夫妻が、タイ北部の山岳地帯にある小さな村で出合ったアカ族の作るコーヒーのみを提供するカフェが、「AKHA AMA COFFEE KAGURAZAKA」だ。「チェンマイのカフェで飲んだコーヒーがとにかくおいしくて、今でもその時の衝撃は忘れられません」と山下さん。
オープンは2020年。神楽坂の通りから脇道に入った坂の途中の小さな店は、地元の常連客に加えて、スマホのマップを頼りに遠くから足を運ぶ人たちでいつも賑わっている。ハンドドリップやラテ、エスプレッソに加えて、珍しいタイスタイルコーヒーや、カルダモン等のスパイスを効かせたコーヒーなど、メニューは豊富だ。今回はシングルオリジンの「ポンラマイ」とシングルエステートの「リガー」をハンドドリップでオーダー。アカアマコーヒーでは、地域ごとに集められた豆のブレンドと、生産者ごと、農園ごとのシングルエステートの両方を味わうことができる。
山下さんが心底惚れ込んだという、アカ族のコーヒーはどれも清らかで、雑味がない。豆本来の甘味があり、酸味はありつつも、さほど強くはなく、ほどよい感じだ。今回飲んだナチュラル製法のリガーは浅煎りにもかかわらず、しっかりとした味わいの中に果実感が感じられた。スイーツも充実していて、山下さんが自ら考案したキャロットケーキが無茶苦茶おいしくて、行くたびに必ず注文する。
世界中を巡り、当然、コーヒー先進国と呼ばれる国々でもコーヒーを飲むことはあったが、一瞬で虜になったのは、アカアマコーヒーだけだったそうだ。現在チェンマイに3店舗、海外初出店が神楽坂になる。生みの親で日本法人の共同経営者でもあるリー・アユ・チュエパさんも、タイ・ミャンマー国境に住む少数民族、アカ族の出身。アカアマはタイの言葉で「アカ族のお母さん」という意味だ。以前は、タイ北部の山岳地帯の村の多くは本当に貧しくて、ケシを栽培して生計を立てていた。ところがケシから他の作物への転換を促す国の政策があり、コーヒー栽培を始めたそう。リーさんの母親も、彼の学費を稼ぐために、一生懸命コーヒーを作り続けた。ちなみに当時は、リーさんは村で唯一の大学の卒業生だったそうだ。
アカ族の農園はコーヒー栽培に適した高地にあり、コーヒーの木と一緒にさまざまなフルーツやナッツなどの木を植える「森林農法」で良質の豆を生産している。斜面が多いため、車両は使わず、完熟の豆のみを収穫するので、原則として手摘み。認証こそ取っていないが、完全無農薬でフェアトレードと、アカアマコーヒーのポテンシャルは計り知れない。
ただ、海外初進出となる日本での成功を後押ししているのは、山下さんのアカアマへの愛とリスペクト、そして、もともとのセンスのよさだと思える。店内はナチュラルとモダンが共存する居心地の良い空間で、これも山下さんが施工会社にリクエストしたものだ。心躍る洒落たパッケージデザインもそう、アカ族に代々伝わる織物をもとにデザイナーに依頼した。アカアマのコーヒーの素晴らしさと、この店に関わる素敵な人たちのことが自ずと伝わってくるような店だ。
今年、早稲田に待望の2号店をオープンする。1号店の時から国内で焙煎も行う計画だったが、コロナ禍のために見送ってきた。2号店では満を持して焙煎も行うというから、期待に胸を膨らませながら、オープンを心待ちにしている。
AKHA AMA COFFEE KAGURAZAKA(アカアマコーヒー カグラザカ)
東京都新宿区赤城元町1-25
03-6280-8755
https://akhaama.jp/
居心地の良く、コーヒーもキッシュもとても美味しかったです
訪れて味わってみたい。気に入ったら、コーヒー好きな友人に豆を送りたい。
関西に住んでいるので、なかなか機会がありませんが、今回の記事は東京に行く楽しみを増やしてもらいました。
大阪在住ですが、東京に行った時にはわざわざ訪れたい珈琲店と強く思いました。