仕事への誇り 永瀬正敏が撮ったアメリカ(279) | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]
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仕事への誇り 永瀬正敏が撮ったアメリカ(279)

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回もアメリカでの一枚。撮影現場で驚いた出来事とは?

仕事への誇り 永瀬正敏が撮ったアメリカ(279)
©Masatoshi Nagase

前回書いたアリゾナでの撮影中、
僕たちが控室がわりに利用していたキャンパーの中。

こちらの車はギンギンに冷えていた。
そこら辺の準備は完璧で、
アメリカのスタッフの皆さんはさすがプロフェッショナル!
という仕事っぷりを毎回発揮してくれる。
(別に日本や他の国のスタッフさんがそうではない、
といっているわけではない!)

もちろんユニオンに守られているので、
契約の範囲内のことは完璧ということで、
帰りに「ちょっとコンビニ寄ってもらえます?」
と、ドライバーさんにお願いしても、
実に申し訳なさそうに、
「そうしてあげたいけど、上に怒られるから……
一人やっちゃうと他の人がね……」
なんて断られたりする。

でも、初めてアメリカのクルーと仕事をした時、
ケータリング担当の若い女性が、
初日が終わる頃には、僕たち演者を含め、スタッフの皆さん全員の、
(ここ大切! ゼ・ン・イ・ン!)飲み物の好みを把握して、
(しかも聞いて回ったわけではなく、何げなくこっそり見ていて)
次の日から現場に個々人の好みの飲み物を持ってきてくれたりして、
本当に驚いた……しかも全・員・分!

撮影中だったりするので、ほんの少しの間を実にうまく見極めて、
出してくれるタイミングも絶妙だった。

自分の仕事に誇りを持って現場に参加していることが、
はたから見ていてもよくわかった。
自分の出番(?)のないときは、ケータリングをセットしている部屋の中や、
その周りをひたすら奇麗に掃除していたりした。
しかも一生懸命。

「素敵だなぁ」

そう思ったものだ。
そういうスタッフの皆さんが大勢いた。
最初に出会ったスタッフさんたちに恵まれたのかもしれないけれど。

そんなことを思い返しながら、
「それでこのでっかい車をコントロールできるの?」と思うような、
小さなバックミラーの先の景色に興奮したりしていた。

「ちょっと細いけど『未知との遭遇』に出てくる山みたいじゃない?」
「いきなりUFO出てきたりして……出てきてくんねぇかなぁー!」

なんて話をしていた時、
現場から声がかかった。

時間ぴったりのそのタイミングも……また完璧だった。

写真:紙焼きプリントをスキャンしデータ化

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