日本のスペシャルティコーヒーを牽引してきた「ONIBUS COFFEE(オニバスコーヒー)中目黒駅前店」(東京・中目黒) | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]
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日本のスペシャルティコーヒーを牽引してきた「ONIBUS COFFEE(オニバスコーヒー)中目黒駅前店」(東京・中目黒)

店舗の脇の開放感あふれるテラス席で冷たいアイスコーヒーを

人と人とをつなぐ「バス」のような存在に

私がスペシャルティコーヒーを意識し始めたきっかけの店でもあるオニバスコーヒー中目黒駅前店。今でも足しげく通っているが、知れば知るほど好きになる魅力満載のコーヒー店だ。

オニバスコーヒーの創業は、2012年1月27日。代表の坂尾篤史さんが、自家焙煎(ばいせん)しながら、エスプレッソも、ドリップコーヒーも提供するという当時では珍しいコーヒーショップを、世田谷・奥沢にたったひとりでオープンした。しかし、住宅街というロケーションに加えて、当時はまだ、浅煎りで、酸味のあるコーヒーはなかなか受け入れられず、苦戦を強いられてしまう。

スペシャルティコーヒーの魅力をもっと伝えることができたら、自分が魅了されたように多くの人がその魅力にハマるはずだと都心にも打って出ることを決心。奥沢に続いて2014年に、スタンディング形式でサクッと飲めるショップ「ABOUT LIFE COFFEE BREWERS」を渋谷区道玄坂にオープンした。黒塗りの柱のスタイリッシュな外観が人目を引き、期待した通り多くの人が訪れるように。

日本のスペシャルティコーヒーを牽引してきた「ONIBUS COFFEE(オニバスコーヒー)中目黒駅前店」(東京・中目黒)
2階の窓からは隣の公園で遊ぶ子供たちや東横線の電車など、街の風景が見える

中目黒駅前店のオープンは、それから2年後の2016年1月。駅からすぐの細い路地を入ったところにあった古民家をリノベした。豆の需要が増え、奥沢店も手狭になってきたこともあり、新たにDIEDRICH(ディードリッヒ)の12kgの焙煎機「DR-12」を導入。現在は、旗艦店でもある八雲店で一括して焙煎を行っているが、私が初めて訪れた当時は1階のスペースに焙煎機が鎮座していた。

日本のスペシャルティコーヒーを牽引してきた「ONIBUS COFFEE(オニバスコーヒー)中目黒駅前店」(東京・中目黒)
どのスタッフも商品知識が豊富で、何よりもコーヒーへの愛が感じられる

今は9時のオープンと同時にひっきりなしに客が訪れ、お気に入りの2階のスペースに席を確保するのはなかなか至難の業となってしまったが、1階のオープンスペースで、次々にオーダーをこなすバリスタの技を眺めながら、ゆったりとコーヒーを楽しむのも気に入っている。どんなに混んでいても、丁寧な接客の姿勢にブレはなく、誰に対してもフランクで親切。その空気感が店全体に漂っている。今回話を聞いた、オニバスのCSuO を務める山田舞依さんも、志はとても高いのに人当たりは柔らかくて、ナチュラルな雰囲気がオニバスらしい。

オーナーの坂尾さんはシドニーで、山田さんはメルボルンでコーヒーの魅力にハマったそうだが、オーストラリアのカフェは、コーヒーのクオリティーの高さもさることながら、人々のちょっとした心の拠りどころになっている。そんなコーヒー店を日本でも広めたいという。「ONIBUS」はポルトガル語でバスのこと。バスのように人と人をつなぐという思いを込めて名付けたのだそうだ。

日本のスペシャルティコーヒーを牽引してきた「ONIBUS COFFEE(オニバスコーヒー)中目黒駅前店」(東京・中目黒)
やさしいブルーの色合い、丸みあるデザインのカップは陶芸作家イイホシユミコとのコラボ
日本のスペシャルティコーヒーを牽引してきた「ONIBUS COFFEE(オニバスコーヒー)中目黒駅前店」(東京・中目黒)
エチオピアのハンドドリップはアイスで

この日は、シングルオリジンのエチオピアをアイスで、自分の定番でよく飲むホンジュラスをホットでオーダー。エチオピアは、ほどよい酸味とフルーティーで爽やかなアロマを持ち、ふだんあまりアイスを飲まないのだが、その習慣を変えさせるほどのおいしさだった。ホンジュラスは酸味がありつつも、ほのかにリンゴのようなフレーバーもあり、安定のおいしさだ。

日本のスペシャルティコーヒーを牽引してきた「ONIBUS COFFEE(オニバスコーヒー)中目黒駅前店」(東京・中目黒)
栃木・古谷農産の無農薬小麦粉、千葉・赤座農場の卵など、バナナブレッドの素材にもこだわる

自由が丘店が担うオリジナルのスイーツもおいしくて、特にバナナブレッドはおすすめだ。リクエストすれば軽くあたためてバターのトッピングもしてくれる。ほどよい甘さに塩味が加わり、コーヒーとの相性は抜群だ。

コーヒー生産の現場をよく知るために海外の農園を頻繁に訪れる。既に7か国、29カ所、仕入れる豆の量にして約80%に相当する農園を訪れているが、これを100%にしたいという。 生産者の努力や苦労を目の当たりにすると自然と背筋が伸び、そしてその感動は勉強会でスタッフにも伝えている。

日本のスペシャルティコーヒーを牽引してきた「ONIBUS COFFEE(オニバスコーヒー)中目黒駅前店」(東京・中目黒)
バリスタとしてコーヒーを淹れられるのは社内の試験をパスした者だけ

オニバスで、バリスタとしてコーヒーを淹れるためには、社内の試験をクリアしなければならない。試験の点数だけでは実力は測れないかもしれないが、一定の基準があることで、それを達成するための努力が生まれ、さらにレベルアップする。オニバスとして決めた味わいを、どの店でも同じように出せることも大切だと話す。

その街にコーヒーショップがあることで暮らしが豊かになる。店舗の内装や原材料をサステナブルなものに変えていけば環境への負荷も低減できる。良質のコーヒー生産に取り組む農園に売上を還元できれば人々の暮らしはもっとよくなる。そうやってコーヒーを通じてより良い世界を作りたいと、オニバスは本気で考えている。今年は、また新店舗をオープンする予定とのことで、今後の展開が楽しみだ。

日本のスペシャルティコーヒーを牽引してきた「ONIBUS COFFEE(オニバスコーヒー)中目黒駅前店」(東京・中目黒)
小さな公園に面した2階建ての古民家を改修した中目黒駅前店

ONIBUS COFFEE(オニバスコーヒー)中目黒駅前店

東京都目黒区上目黒2-14-1
03-6412-8683
https://onibuscoffee.com/pages/copy-of-onibus-coffee-nakameguro

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