大切なもの確かめて深呼吸「もっと挑戦を」
MINMIさんインタビュー〈前編〉
坂本真子の『音楽魂』
シンガー・ソングライターのMINMIさんが、2003年のファーストアルバム「Miracle」など3作品のリマスター盤を7月3日に出しました。現在ライブツアー中のMINMIさんに、音楽との向き合い方や毎日の過ごし方を聞きました。インタビュー前編では音楽への思いを語ります。
2002年のデビュー曲「The Perfect Vision」で注目されたMINMIさんは、レゲエやヒップホップ、ソウルをベースにしつつ、トリニダード・トバゴの音楽ソカを取り入れるなど、ジャンルの垣根を越えて音楽を生み出してきました。また、ソカの要素を生かした曲「サマータイム!!」がきっかけで、本場トリニダード・トバゴでのフェスに招かれるなど、海外でも広く活動してきました。
2016年からは「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクト(環境省)のアンバサダーを務め、ギフトソング「MOTHER EARTH ~森里川海のうた~」を制作するなど、社会貢献活動にも力を入れています。
今回、2003年の「Miracle」、04年の「imagine」、06年の「Natural」という初期のアルバム3作を、デジタルリマスターしました。
「素晴らしいマスタリングエンジニアさんに出会うことができて、その方にリマスターしていただいて、今の音になってよみがえりました」とMINMIさん。具体的に、どのような音になったのでしょうか。
「昔のレコードを聴くと、音圧や音が控えめというか、温かいというか、あまり前に出てこない音ですが、今は高音も低音も中音も、全ての音域がよりクリアに再現されます。当時はそのときのベストな音だったんですけど、今回リマスターされたものを改めて聴くと、より鮮やかな音の鳴り方で迫力が出ていると思います」
2000年代初頭ぐらいまでの音楽制作はアナログ録音が主流でしたが、その後はレコーディングの機材など全てが次々にデジタル化され、今はパソコン1台で音楽を作れる時代になりました。
「マスタリングエンジニアさんによると、昔のスタジオでしっかり作られたアナログの音には、生の厚みとか温かみとか、今は作れない重厚感があるので、デジタルで再現(リマスター)したときに、ゴージャスなレコーディングをしたことの価値が改めてわかるし、深みが増します。聴き比べたら、音がすごく良くなったと感じていただけると思います」
海外生活は子育て中心に
2019年、MINMIさんは子ども3人を連れて、米国ロサンゼルスに生活の拠点を移しました。
「子どもから英語を学びたいと言われたことが最初のきっかけです。独身のときはどんどん海外に行って挑戦して、音楽の違う扉を開けたい、という思いが強かったんですけど、子どもと一緒だとまずは安全を優先して、日本と行き帰りしやすい場所、音楽のカルチャーも吸収したい場所、ということでロサンゼルスを選びました」
しかし、まもなくコロナ禍に。音楽活動ができない時期もありました。
「子どもたちがどこに行くにも車で送り迎えが必要で、ほぼ子どもたちのドライバーのような日々でした。シングルマザーで生活が大変なうえに、まだまだ英語力が足りなくて、異文化の中で一つ一つ壁にぶつかることが続き、落ち込み、成長し、という繰り返し。海外生活のハードルが高いことは覚悟していましたが、本当にハードライフでしたね。」
コロナ禍の間は配信ライブで歌い、ファンと交流したことが支えになったと話します。
「アメリカでお友達を作ったり、音楽をセッションしたりするのは、想像していたようにスムーズにはできなくて、コロナで仕事がないときもありました。でも、配信ライブでファンの人とコミュニケーションを取って、歌ったりしゃべったりできたことで救われました」
そんな中で、「子育てを生活の中心にして、音楽的なチャレンジはゆっくり時間をかけて一歩一歩やっていこう」と考えるようになったというMINMIさん。2023年に発表した曲「essence」では、「何が大切なんだっけ?/何のためにやってんだっけ?/今もう一度 心に問え」と繰り返し、これまでの自らの歩みを振り返りました。
「デビュー曲の『The Perfect Vision』をオマージュした曲です。あの頃の自分が描いた目標に到達するために私は頑張ってきたし、もっと挑戦したい、もっと先に進みたいと思って、今の私の夢もあるけど、私には子どもたちがいて、自分の大切なものってなんだっけ、と深呼吸する必要がある。そう感じたことが、『essence』につながっていると思います」
長男の言葉もMINMIさんの背中を押したそうです。
「人生観とか音楽観とか、将来どうなりたいとか生き方とか、子どもたちといろいろな話をする中で、長男が『時代の流れがすごく早いからこそ、流されないことを大事にしたい』と言ったことが、『essence』を書く原動力になりました。今16歳ですけど、『これがTikTokではやっている』とか、『この服を知らないとだめ』とか、そういう会話が学校ですごく多いことをむなしく感じていて、『はやりがめまぐるしいからこそ、それが自分の中心じゃないようにしたい』と言うんです。そんな長男からいつも学んでいます」
「私が作った曲でみんなに踊ってほしい」
MINMIさんが発起人になって2008年に始めたイベント「FREEDOM aozora」は、翌09年から野外フェスに。10年以上にわたって淡路島や千葉、東北、九州などで開催されてきました。世代やジャンルを超えた自由なフェスとして広く親しまれています。
こうしたイベントやほかのミュージシャンをプロデュースし、育てることを、MINMIさんは「大変だけど楽しい」と語ります。
「私は、必ずしも自分がボーカリストとして歌わなきゃいけない、とは思っていないんです。そもそも私は音楽を作りたくて、それを歌ってくれる人がいないから自分がパフォーマンスしている感じで、どちらかというとムーブメントを起こしたいとか、自分が作った曲でみんなに踊ってほしいと思っています。フェスもいろいろな出演者がいて、みんなで感動を作ることが楽しいし、それがあるから頑張れるんです」
そして、ジャンルを決めないこと、自分の活動を縛らないことを大切にしています。
「私の音楽はジャンルも幅広いですし、実験したいという気持ちをずっと持っているので、作り方を決めつけないで挑んでいきたいですし、『音楽とはこうあるべきだ』というものを作らないことが大事だと思っています。だから、最終的にいろいろなタイプの音楽ができるのかな。音楽そのものが、今はどんどん融合、融合していって、私だけじゃなく音楽自体が新しい形にどんどん変化しているので、ジャンルは意識せずにやっています」
今年は7月にMINMIさん自身のライブツアーを開催しています。
「これまでのライブで20年ぐらいやっていないような曲もやりますし、去年の『essence』のアルバムからも歌います。今回はフルバンドなので、ぜひ、みなさんに見に来ていただきたいなと思います」
その後はロサンゼルスでフェスを計画しているとか。詳細はツアーファイナルの7月28日、東京公演で発表される予定です。
最近、音楽を聴いていますか。
振り返れば、あなたにもきっと、歌やメロディーに励まされ、癒やされた思い出があるはず。40代、50代になっても、これからもずっと音楽と一緒に過ごせますように。
そんな願いを込めて、子どもの頃から合唱曲やロックを歌い、仕事でも関わってきたAging Gracefullyプロジェクト編集長の坂本が、音楽の話をお届けします。
取材&文=朝日新聞社 Aging Gracefully プロジェクトリーダー/編集長 坂本真子
写真=山本倫子撮影
◆MINMI Live Tour 2024 “The Songs of Freedom”~自由への旋律~ 序章 翼
https://minmi.jp/2024-minmi-live-tour/
7月28日(日) 東京キネマ倶楽部 7千円(税込み、ドリンク代別)
問い合わせ:ソーゴー東京 03-3405-9999 / 月-土 12:00~13:00・16:00~19:00(日祝休)
◆オリジナルアルバム[Deluxe Edition] 7月3日発売
「Miracle [Deluxe Edition]」
「imagine [Deluxe Edition]」
「Natural [Deluxe Edition]」
いずれも2CD+Blu-ray、5940円(税込み)。 https://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A017274.html
◆MINMIさん公式サイト https://minmi.jp/
◆MINMIさん公式インスタグラム https://www.instagram.com/minmidesu/
◆MINMIさん公式X(旧Twitter) https://twitter.com/minmidesu/
◆MINMIさん公式ショップ https://shop.freedomfes.com/