そば屋での仕事一筋だった母へ、今までの感謝を込めて
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フラワーアーティストの東信さんが、読者のみなさまと大切な誰かの「物語」を花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら。
〈依頼人プロフィール〉
阿部由美子さん 56歳
パート
横浜市在住
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母は私が幼い頃から、父とともにそば屋を営んできました。そば屋はそもそも母の実家の家業でしたが、支店として横浜で両親が今のそば屋を始めたそうです。35年前より兄夫婦も加わり4人でそば屋を営んできましたが、母は2年前に足を悪くして引退を余儀なくされました。父も腎臓を悪くして、母より1年早く引退。今は兄夫婦だけで店を切り盛りしています。
でも母は、まだそば屋の仕事に未練がある様子。今も開店前の仕込みなど、「少しだけ」といって、店を手伝っています。
私は昔から、とにかく仕事一筋の母に不満がありました。お店のことを気にせずにもっと一緒に出かけたり、女同士の会話をしたかったのです。引退すればもっと会話ができると楽しみにしていましたが、やはり母の頭の中はそば屋のことでいっぱいでした。
「もう引退したんだから、これからは父や自分のことを第一に考えて」と言っても聞く耳を持たず、それが原因で今でも口げんかをしてしまいます。
とはいえ考えてみれば、母にとって家業のそば屋は、中学を卒業してからずっと生活の中心にあったもの。父と結婚して店が独立してからも、がんばってそば屋を切り盛りしながら私たち兄妹を育ててくれました。そば屋は母の人生ともいえる大きな存在だったのです。そのせいか引退してからは父の看病もあって、以前に比べて持ち前の元気がないように思えます。
仕事に打ち込む母に自分の不満ばかりを言って、母を悲しませてきたことを、今になって後悔しています。この世で一番大切な母に、申し訳ないと思います。今までありがとう、そしてこれからは自分も大切にしてほしい……そんなメッセージを込めて、お花をプレゼントしたいです。
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花束をつくった東さんのコメント
家業のおそば屋さんで働くことは、お母様の人生そのものなのですね。
お母様が愛するそのおそば屋さんのイメージから、「和」っぽいお花を揃えつつ、またお店の活気を表現できればと、アレンジの上のほうには動きのある賑やかな花材も入れて、グリーンをテーマにまとめました。そんなお店とともに85年間頑張ってこられたお母様。投稿者様からの感謝の気持ちを込めたアレンジです。
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文:福光恵
写真:椎木俊介
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。選んだ物語を元に東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
応募フォームはこちら![](https://www.asahi.com/and/wp-content/themes/and/assets/img/article-end.png)