かき氷にベビーカステラ。黒糖や和三盆など、良質な砂糖を味わう甘味スタンド「糖太朗」

蒸し風呂のような夏の京都で、ほてった体をキンと冷やしてくれるのが、かき氷。老舗の甘味処の定番やパフェのように豪華なかき氷など、選択肢は多彩ですが、素材の味をシンプルに味わうかき氷はいかがでしょうか？　今回訪ねたのは、厳選した砂糖を使い、初めて出会う「甘さ」を体験できるカフェスタンド「糖太朗」。ほのかな甘みと豊かな風味に、砂糖のイメージが変わります。

■京都から毎月、季節の便りを出すように。連載『京都ゆるり休日さんぽ』では、いま訪ねたい今昔の人気店、季節の味覚や風景を、さんぽのみやげ話とともにお届けします。

ミネラル豊富な含蜜糖の軽やかな甘さ

昔ながらの商店や職人の工房が軒を連ねる、五条エリアの路地の一角。6棟続きの古い長屋の一軒を改装した「糖太朗」はその名の通り、上質な砂糖を使った甘味専門のカフェスタンドです。建具や柱、土壁など、既存の建物の歴史をそのまま生かし、スタンド席のみで構成された空間は、素っ気ないほどにシンプル。そのストイックさはメニューも然り。上白糖やグラニュー糖など精製された砂糖ではなく、含蜜糖と呼ばれるミネラル豊富な砂糖のみを使った甘味やドリンクを提供しています。中でも代表的な砂糖が、黒糖と和三盆。メニューに合わせて産地を使い分け、最もおいしい甘さのバランスを追求しています。

かき氷は「抹茶」と「みぞれ」の2種。今回は、砂糖そのものの味わいを楽しめそうな「みぞれ」を頼んでみました。「みぞれ」というと透明な蜜が思い浮かびますが、「糖太朗」の「みぞれ」は和三盆のみを使った、琥珀色の蜜。ふわふわの氷にかけていただくと、穏やかで澄んだ甘みと、軽やかな後味に驚きます。さらに、食べ進めていくとかき氷の山の中からは、ミルクアイスとパッションフルーツが登場。一つひとつ手ごねされる白玉も添えられ、さまざまな風味と食感で、食べ飽きないよう工夫されています。

「食べ始めと途中と後で、味の変化を楽しめるようなお菓子を作りたいと思っています。質の良い砂糖は、風味も後味も違います。ひと口目の優しい甘さ、食べ終えた時にも甘さが残らない後口は、黒糖や和三盆ならではだと思います」

そう話すのは、オーナーの丸山順裕さん。同じく経営するティースタンド「⼋⼗⼋良葉舎」でメニューに和三盆を使った際、おいしさの違いに驚いたことがきっかけになったそう。含蜜糖ならではのふくよかで優しい甘みを体験してもらうべく、砂糖をコンセプトにしたこの店をオープンしました。

新しいのに懐かしい 空間ごと楽しんで

店の奥から漂ってくる、甘く香ばしい香りも見逃せません。どこか懐かしい匂いの正体は、ベビーカステラ。銅製の焼き機で一つひとつ、手作業で返しながら焼き上げています。生地には、水飴・米飴・本和香糖・多良間産黒糖の4種類を絶妙なバランスで配合。フチはカリッと、中はもっちりとした食感のカステラは意外なほどほのかな甘さで、屋台などで食べ慣れたベビーカステラを想像すると驚くかもしれません。けれど、噛むほどに生地の風味と優しい甘みが口いっぱいに広がり、いくつでも食べられそうな味わいです。

「シンプルで素朴な、砂糖のおいしさを感じられるお菓子って何かと考えた時に、思い付いたのがベビーカステラでした。この建物も、築年数もわからないほど古い空間ですし、奥ではベビーカステラを焼く匂いがする。そんなちょっと懐かしい雰囲気を体験してもらえたらと思います」（丸山さん）

どちらかというと体に良くない食材というイメージもある、砂糖。けれど、ミネラル豊富で、食後の体も軽い砂糖の甘味なら、罪悪感も少なく食べられそうです。夏の京都の一服に、甘く懐かしいひと時を体験してみてください。

【取材協力】糖太朗
https://www.instagram.com/totaro_kyoto

BOOK

もっと、京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「もっと、京都のいいとこ。」（朝日新聞出版）が2024年1月に出版されました。「京都のいいとこ。」の続編。ひとり旅でも、満たされる、自然体の京都の楽しみかたを提案。定番からひみつの場所まで、選りすぐりの約100軒をご案内します。＆Travel「京都ゆるり休日さんぽ」の中から厳選、加筆修正、新たに取材しました。「京都のいいとこ。」に引き続き、この本が京都への旅の一助になれば幸いです。1430円（税込み）。

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