コーヒーを通してより良い世界を作るという夢を追う「WOODBERRY COFFEE(ウッドベリーコーヒー)」(東京・学芸大学)
ベストな状態でコーヒーを届ける、徹底したチームビルディング
2012年に東京・用賀で創業し、今年で12年目を迎えた「WOODBERRY COFFEE」。現在はベーカリーを含む7店舗を展開しているが、どの店も大盛況。2022年にオープンした学芸大学店も、午前9時のオープンから客足は途切れることがなく、週末はさらに賑わいを増す。訪れた日は平日で、テイクアウト客も多かったが、半数は店内で朝食を兼ねてゆったりとコーヒーを楽しんでいた。
WOODBERRY COFFEEでいつも感心させられるのが、スタッフのコーヒーについての知識の豊富さだ。これだけコーヒーの産地や種類が増えてくると、自分の好みのコーヒー、今日の気分にあったコーヒーに出合うには、スタッフのアドバイスが不可欠になってくるが、好みを丁寧に聞いて的確にセレクトしてくれる。
扱う豆はすべてスペシャルティコーヒー。常時12種類前後が店頭に並び、気になる豆があれば、キャニスターを開けて状態を見せてくれるし、香りもかがせてくれる。最近、農園と直接交流して、ダイレクトトレードしているエルサルバドルのミレイディ農園のパカマラ種が一番のおすすめということで選択。2021、2023年のエルサルバドルのカップオブエクセレンス(COE)品評会で1位を取った農園の高品質な豆で、ほどよい酸味でプラムやグレープ、トロピカルフルーツを思わせる爽やかなフルーティーさがあり、ほのかにシナモンのような甘いスパイスの余韻が感じられた。
学芸大学店はフードも充実していて、それがレストラン級のおいしさなのだ。特にアボカドトースト。カリッと焼けたカンパーニュに、オーガニックのアボカドスライスがたっぷり、さらにオリーブオイル、レモン、塩コショウで味付けされたトッピングのセルバチコも山盛り。アクセントにクリームチーズも添えられた絶妙なバランスの一品は、コーヒーとの相性も言わずもがなだ。
店長の澤口優稀さんは学生時代にラテにハマって、カフェで働きながらラテアートの技術を磨き、大会に出場するほどの腕前に。ところが、ある時飲んだ一杯のラテの味に感動して、視覚重視から味のほうに興味が移り、スペシャルティコーヒーの世界に足を踏み入れた。そして行き着いたのが、おいしいコーヒーを求めて努力を重ねる生産者と互いに切磋琢磨(せっさたくま)するWOODBERRY COFFEEだったという。
創業者の木原武蔵さんは、2012年にDIYでオープンした小さな店舗を、7店舗にまで拡大し、自身は専門学校で講師も務めるなど日本のスペシャルティコーヒーを牽引(けんいん)する存在でもある。もともとは経営コンサルタントを目指し、アメリカの大学に留学していたが、家族の病気などのために帰国。一気に人生の舵を切りコーヒー店をオープンしたそうだが、この店の“ちゃんとした感”は、コンサルティングの下地があってこそなのかと思う。豆の買い付け専門のチームを設け、焙煎(ばいせん)やフードも専門チームが担当する。そして店舗スタッフは客にその素晴らしさを伝える役割を果たす。とにかくチームビルディングがしっかりしている。
現在は荻窪店がすべての焙煎を担う。ヘッドロースターを中心に品質管理のチームが協力してプロファイルを作って焙煎している。焙煎機は、熱風の再利用が可能でエネルギーロスの少ない完全熱風式の「Loring S35 Kestrel」を導入。またバッチサイズも以前より大きくなり、焙煎の回数を減らすことで、結果的にCO₂排出量を削減できる。「コーヒーを通してより良い世界を作る」という開業当時の考えは今も変わらない。
抽出についても、標準的なレシピはあるが、店舗によって微妙に水の品質などが異なるため、店ごとにドリップを繰り返しながらレシピを決めるという徹底ぶりだ。生産者とのつながりを大切にして、地球環境への気配りも忘れない。なにより店を訪れる人に、ベストな状態でコーヒーを届けるための努力を惜しまない。コーヒーを巡る人たちみんなを豊かにするカフェなのだ。
WOODBERRY COFFEE 学芸大学店
東京都目黒区鷹番3-1-5
営業時間:9:00-19:00
03-6712-2164
https://www.woodberrycoffee.com/
2024年前半はいままでにない円安となった。
そういう状況の中でこんなすてきな珈琲屋さんを
きちんと感のある豆を維持することは、たぶん記事には尽くしがたい商売上の苦労もすくなからずと拝察した。
エルサルバドルの農園からどういったルートをたどって用賀にて顧客にサーヴィスできるようになるのか、今後も大盛況が続きますように。