これからは何倍もの楽しい記憶を 温かく背中を押してくれる祖母と母へ
フラワーアーティストの東信さんが、読者のみなさまと大切な誰かの「物語」を花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら。
〈依頼人プロフィール〉
太田ひとみ(仮名) 39歳
主婦
東京都在住
◇
「ひとみちゃんは、今が一番幸せな時だねぇ」
祖母が、事あるごとに伝えてくれた言葉です。悩み事だらけの思春期、将来に期待と不安が入り交じった大学時代、激務の疲労感と充実感でいっぱいだった社会人時代、幸せながらも初めての命の重みに押しつぶされそうだった結婚・出産時期、3人に増えた子どもたちとドタバタで過ぎ去る今……何度祖母のこの言葉に助けられたことかわかりません。
つい目の前の事で一杯一杯になってしまう私は、この祖母の言葉を聞くたび、ハッとさせられました。と同時に、何とも言えない安心感に包まれました。
5人の孫、11人のひ孫に囲まれた祖母は今年で96歳。義理の娘である私の母と2世帯住宅で、今でこそ健康で穏やかに過ごしている祖母ですが、過去にはつらい時代もあったようです。記憶もないほど幼い頃に戦争で両親を亡くし、3姉妹が別々の親戚の元に預けられ、一時さみしい子供時代を過ごしたことも。結婚して家業を手伝いながら、長い介護の期間を経て、夫である祖父も看取(みと)っています。そんな話を祖母から聞くたび、つらい経験をしてきたぶん、これからは何倍もの楽しい記憶で埋め尽くしてあげる!!と私は心に決めています。
そんな祖母を近くでサポートしているのが私の母です。母は気遣いができて優しく、誰からも好かれるような性格。私たち姉妹のことを何よりも一番に考え、小さい頃からたっぷりの愛情を注いでくれたのだなと、自分に子どもが生まれて母となってから、より強く感じています。
目にちなんだ私の名前は、「物事を広い目で見渡せるように」との両親の思いが込められているそうです。視野を広げ、色々な視点から考えることが大事。何かに悩んだ時にはそう思い出しては励まされています。
私も家族も、祖母や両親の温かさに背中を押されて、幸せに暮らしています。
祖母には「いつも見守ってくれてありがとう!」と。母には、いつも家族みんなを支えてくれた感謝と、「これからは自分の時間も楽しんでね」という気持ちを込めて、お花を贈っていただければと思います。
花束をつくった東さんのコメント
いつも温かい励ましをくれるお祖母(ばあ)様と、そのお祖母様を支えているお母様へのお花です。時期的にも春のお花が一斉につぼみを開くとき。チューリップとスイートピー、そしてスモークグラスという穂先がふさふさしたグリーンをあわせたブーケです。おふたりをイメージして、見る人をふんわりと包み込んでくれるようなやさしいイメージのブーケに仕上げました。
このあともチューリップは光のほうに日に日に伸びていくので、お祖母様とお母様のおふたりの会話が弾めばいいですね。
文:福光恵
写真:椎木俊介
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。選んだ物語を元に東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
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