AGフレンズカフェ 第1部〈後編〉
松本千登世さん「全体を見渡すことが大事」
一発逆転を狙わず、毎日少しずつ丁寧に

2月17日には、「Aging Gracefullyフレンズカフェ」をライブ配信しました。第1部はAGフレンズで美容エディター・ライターの松本千登世さんをゲストにお迎えし、「大人美容を、楽しく」をテーマにお話ししていただきました。司会は朝日新聞社Aging Gracefullyプロジェクト編集長の坂本真子が務めました。

その中で、「斜め45度顔」の老け印象を防ぐために、松本さんは三つのポイントを挙げました。第１のポイントが「顔の上半身～目まわりの影」で、第２のポイントは「顔の下半身～ほうれい線という影」、そして第３のポイントが「顔と首の境界線～メリハリのなさ」。前編では二つのポイントを紹介しました。後編では第３のポイントと、質疑応答の模様を紹介します。

鎖骨と首をケアして

第３のポイントは、「顔と首の境界線～メリハリのなさ」です。

「私を含め、AG世代のみなさんは、ヒップと太ももの差がなくなった、という経験があるのでは、と思います。あごと首も同じように、差がなくなっていく感じがあると思うんですね。首のケア、リフトアップのケアといったことももちろん大事ですが、下を向くことの多い生活が良くないと言われています。私もパソコンに向かっている時間が非常に長く、その間はずっと下を向いていますし、電車に乗ると男女問わずみんながスマホを見ているので、最近は『20代でも30代でもあごのエッジがなくなっている』とおっしゃる美容家もいます」

確かに最近は誰もがスマホを見ている時間が長く、ずっと下を向いているのではないでしょうか。

「スマホやパソコンを見る習慣を生活から除くことはできないですし、下を向きっぱなし、座りっぱなしみたいな生活をしてしまいがちですが、姿勢を毎回正すとか、肩甲骨を開くといったことを意識しつつ、きちんと流すものを流してケアをしていくことが必要です。どこか一カ所だけにとらわれて『ここを引き締めなきゃ』『ここをなんとかしなきゃ』と思うよりも、全体を見渡すことが大事だと思います」

その上で、松本さんが日々心がけていることが二つあります。一つめは鎖骨のケアです。

「下を向いているとリンパの流れも滞ってしまうので、私はパソコンに向かっているとき、1時間に一度ぐらいやることがあります。こぶしを握って、その第二関節を鎖骨に、上からぎゅっとはめ込むように押さえる、というものです。少し痛いかもしれませんが、余計なものをため込まず、巡りが良くなる感じがすると思うので、まずは何かの合間にやってみてはいかがでしょうか」

二つめは、首のケアです。

「10年ほど前、フランス人の有名なエステティシャンの方に取材したときに、『あなたは顔のスキンケアの余りを首に塗っているでしょう。顔に塗った余りなんて、実は余っていないんですよ』と言われたんですね。要は『首には何も塗られていないわよ』と言われたわけです。すごくショックだったので、その日、家に帰ってから、顔に塗るのと同じ量を先に首に塗って、その余りを顔に塗ろうとしたら、全然余っていませんでした」

「首のケア専用の美容液を使うのがベストだとは思いますが、なかなかそうもいかないので、私はまず、顔の分を塗ってから、同じものでもう一度、首の分を手に取って塗っています。そうやって首と顔の両方をきちんとケアすることが大事だと思います」

ここまで三つのポイントについて話してきた松本さんですが、最後に「無理はしないで」と強調しました。

「追われたり焦ったりして美容に取り組むことは逆効果だと私は思っていて、楽しいことに変えていく方がいいですよね。『いいかげん』は『良い加減』なので、自分にとっての『いいかげん』を見つけて、負担にならない程度に丁寧に続けることをおすすめします」

ベーシックなものを続ける

今回のAGフレンズカフェにお申し込みされた方々から、事前にたくさんの質問をいただきました。その中で最も多かったのは、「肌のくすみ、しわ、目の下のたるみなど全部の対処法、改善方法はありますか？」という質問でした。

「最近の化粧品の傾向として、エイジングケアも何か一つのポイントに働きかけるより、どんどんエイジングの上流にさかのぼって、細胞や肌ごと元気にしましょう、というコンセプトが非常に多いんですね。下流がしわやたるみだとしたら、それが起こってから何とかするよりも、起こさないような肌に引き戻そう。そういう状態までできるといいね、というものです。進化した化粧品を頼って、自分の悩みにとらわれすぎず、気持ちいい肌に変えていくために全体をケアするのがいいのかな、と私は思います」

次は、「美容液などはいくつも重ねれば効果があるのでしょうか？　いろいろな効能効果をうたった美容液を全部つけたらすごくいい肌になる気もします。それとも、効果の大きなものを一つだけつける方がいいのでしょうか？」。申し込まれた方から事前にいただいた質問で2番目に多かったものです。

「いくつも重ねづけをすると効果があるように感じますが、塗るたびに肌に触れることが摩擦につながるとすると、増やせば増やすほど肌をこすっている、ということになります。美容液をいくつも入れるよりは、洗顔で不要なものを落として、水分で潤わせて、目的に合った美容液を入れて、クリームでふたをする、というステップを大事にする方がいいのでは、と私は思います。美容液は悩み直結型のものが多いので、悩みの深い方は美容液に投資をしてみるといいでしょう。私は、クリームが肌の上で溶けていく時間が好きなので、クリームに投資しています」

ここで、松本さん自身が美容に関して最も大切にしていることについても触れました。

「30代の頃は夜中に家に帰って2時間しか寝ないときも手厚くパックをしていたんです。でも、美容の先生から『夜中に焼き肉を食べているようなものよ。そういうときはおかゆよ』と叱られました。要は、スペシャルケアで一発逆転を狙うよりは、自分の肌の機嫌をとりながら、ベーシックなものをきちんと続けることが一番だと、その先生はおっしゃったんです。私は今、毎日少しずつ丁寧に、ミニマムでもきちんと、楽しみながらやることを最も大切にしています。AG世代になると、一発逆転できることはそうそうないので、毎日少しずつ積み重ねていく。生活習慣が大切ですね」

ライブ配信のZoomウェビナーに参加された方からは、「肌のために食事で気をつけていることはありますか？」という質問が寄せられました。

「私自身は特に我慢することなく、何でもいただきますし、バランスが一番大事だと考えています。野菜、お肉、お魚などをバランスよく取ることでいろいろな機能が巡っていくと思いますし、個人的には心がけているのは、野菜ファーストですね。最初にサラダや野菜を食べてから、メインに移るようにしています。ただし、これもプレッシャーに感じるのは良くありませんので、おいしく食べることが一番だと思います」

無理をしないでバランスよく、楽しく、毎日丁寧に。松本さんのお話は美容だけでなく、生き方や生活習慣にもつながることだと感じました。

＞＞第１部「大人美容を、楽しく」前編はこち
ら＞＞第2部「物価上昇に負けない！ 今こそ始めるAG世代のためのマネーセミナー ～新NISA活用法～」前編はこちら
＞＞第2部「物価上昇に負けない！ 今こそ始めるAG世代のためのマネーセミナー ～新NISA活用法～」後編はこちら

取材&文＝朝日新聞社 Aging Gracefully プロジェクトリーダー／編集長 坂本真子
写真＝アーカイブ動画から

◆第１部の動画をアーカイブ配信しています。

◆松本千登世さんが絵本「ピンクのカラス」を出版しました。
詳細は「BOOK 212」公式サイト　https://book212.com/
＞＞AGフレンズ松本千登世さん　 初めての絵本「ピンクのカラス」出版

◆ＡGフレンズ（2023年度）の記事バックナンバーです。
＞＞高尾美穂先生〈１〉　更年期を自分らしく楽しむためにできること
＞＞高尾美穂先生〈２〉　更年期を乗り切るために周りができるサポートは
＞＞高尾美穂先生〈３〉　自分なりに準備して更年期を心地よく
＞＞高尾美穂先生〈４〉　自分の人生は自分で変える　まず行動を
＞＞松本千登世さん　大人美容を、楽しく〈１〉　「きれいになりたい」は何のため？
＞＞松本千登世さん　大人美容を、楽しく〈２〉　子どもの習慣に「きれい」の答えがある！
＞＞松本千登世さん　大人美容を、楽しく〈３〉　「失う」の裏側に「得る」がある！
＞＞村田貴子さん　『ワクワク人生を楽しむ』お金のはなし〈１〉　老後の不安を「見える化」、資産寿命を伸ばそう
＞＞村田貴子さん　『ワクワク人生を楽しむ』お金のはなし〈２〉　預金がリスクに？　投資のポイントは
＞＞村田貴子さん　『ワクワク人生を楽しむ』お金のはなし〈３〉　自分の人生をデザインする

◆Aging Gracefully フレンズカフェ「美容とお金のポイントは？」
　2024年2月17日（土）14:00～15:50
　Zoomウェビナーでライブ配信
◇第１部「大人美容を、楽しく」
　松本千登世さん（美容エディター・ライター、AGフレンズ）
◇第２部「物価上昇に負けない！ 今こそ始めるAG世代のためのマネーセミナー ～新NISA活用法～」
　村田貴子さん（ファイナンシャルプランナー、ほけんの窓口グループ株式会社教育部担当部長、AGフレンズ）
　司会：坂本真子（朝日新聞社Aging Gracefullyプロジェクトリーダー／編集長）