住まいに「色」を取り入れて、もっと自分らしい空間に!【特別編】
「カラフルな家に憧れます」「壁や建具などに好きな色を使ってみたい」と思っている方は多いと思いますが、いざ実行しようとすると「何色がいいの?」と迷うものです。今回は特別編として、「ブルースタジオ」の執行役員でクリエイティブディレクターの石井健さんに、リノベーションのときに迷う「色使い」について伺いました。
「ワンカラー」「カラフル」……色の取り入れ方
日本の住宅を色で分けてみると、白や素材の木の色を生かした「ナチュラル」、白や黒、素材のステンレスを生かした「モノトーン」、何か1色をメインにした「ワンカラー」、色々な色を使った「カラフル」、この四つだと思います。
一般的には「ナチュラル」と「モノトーン」が多いのですが、色を取り入れたいと考える方は、「ワンカラー」や「カラフル」に興味を持たれますよね。それぞれの事例を挙げて、具体的にご紹介します。
事例:〈241〉日常を忘れられる、郊外の広めの家での一人暮らし
まずは、ブルーを使った「ワンカラー」の事例です。ブルーは落ち着いた雰囲気になるので、色を取り入れるときに選ばれることが多いです。この事例の方は、面積の広い壁や天井は薄いブルーグレー、洗面台やキッチンは明るく爽やかな水色に。寝室やクローゼットは深いブルーにし、リラックスできる空間にしました。場所に合わせて、ブルーに濃淡をつけました。同じ色なので、適度に変化がありつつ、家全体ではまとまりが感じられます。
事例:〈245〉カラフルな部屋で毎日が楽しくなる! “旅する”住まい
次にご紹介するのは、部屋ごとに違う色を使った「カラフル」な事例です。「やってみたいけれど、ハードルが高そう」と思われる方が多いかもしれません。色から考えると、「何色にしたらいいの?」とわからなくなるので、「どんな空間にしたいのか?」を考えてみるのがおすすめです。
この事例のご夫婦は旅好きで、リノベーションのコンセプトは「旅する住まい」。旅の思い出を色に置き換えて、表現しました。この部屋にはこの国と決めすぎず、もう少しラフに。旅のワクワク感を大切に、設計者と相談しながら各部屋の色を決めていきました。この方々のように、キーワードを決めると色を取り入れやすくなります。キーワードの参考にするのは、旅、映画、音楽、ファッションなど好きなものでOK。何色にするのか、イメージしやすくなります。
事例:〈141〉36平米でも広々&収納たっぷり。ホテルのようなワンルーム
家中ではなく、部分的に色を取り入れたい方にとって参考になる事例をご紹介します。キッチンは黄色、ワークスペースはピンク、ベッドスペースはブルーと、それぞれの場所の機能を考え、壁1面だけ色を塗りました。目立ちすぎないけれどアクセントになる、ちょうどいいバランスで雰囲気の違いを楽しめます。
「こんなふうに暮らしたい」で色を選択
「色使い」について、イメージができたでしょうか? 洋服選びと比較するとわかりやすいのですが、洋服はよく「気分に合わせて選ぶ」と言いますよね。でも、住まいは気分に合わせて変えられません。だから、「どんな気分になりたい?」を考えます。つまり、それは「どんなふうに暮らしたい?」ということ。
次からは、「こんなふうに暮らしたい」を色で表現した事例をご紹介します。
事例:〈232〉ゆったりと健やかに。都心で暮らしても自然を感じる住まい
この事例のご家族は、以前カナダ、オンタリオ湖畔のトロントに住んでいました。そこでの暮らしがお気に入りで、「自然を感じ、家族がゆったりくつろげる家にしたい」と希望されました。また、トロントで購入した湖の絵と船のパドルを飾りたいという希望もありました。そこで、水辺の暮らしをイメージできるように、壁の色はブルーグレーに。湖の絵とパドルはキッチンの壁に飾って、フォーカルポイントにしました。家の雰囲気に反映させたいイメージや飾りたいものがあると、色選びのヒントになります。
事例:〈209〉制約のある物件で実現した、やりたいことがギュッと詰まった暮らし
次の事例は、個室それぞれに違う色を取り入れた、個性的なお宅です。建物の構造上、壁が壊せなかったので、あえて、LDK、シアタールーム、寝室、インナーバルコニーの四つのスペースを作りました。それぞれのスペースに合わせて、赤、ピンク、ブルー、レモンイエローと色を決め、アクセントに。さらに、ドアはつけなかったので、隣の部屋の色が、同時に見えるようにしたのです。組み合わせたときの色の見え方にまでこだわった、個性的で楽しい家になりました。
好きなアートの雰囲気を家づくりに取り入れた方もいました。施主の方が学生時代にオランダの建築家・リートフェルトを研究されていて、同時代の抽象美術運動「デ・ステイル」にインスパイアされたようで、それらをベースにリノベーションをしました。テーマカラーは青、黄色、白です。このときは、設計だけでなくインテリアも一緒に考え、トータルでコーディネート。このような家づくりは、リノベーションならではの楽しみ方です。
暮らし方に合わせて色を変える?変えない?
2回目のリノベーションをする方も増えてきました。ここでも「どんなふうに暮らしたい?」がポイントになります。暮らし方が変わらなければ、1回目とは雰囲気は変えないし、暮らし方が変わったら、1回目とはガラリと雰囲気が変わります。それぞれの事例を1件ずつご紹介します。
事例:〈231〉予定は変更しても目的は達成! 住みながら必要な部分だけリノベーション
まずは、雰囲気を変えなかったお宅の事例です。子どもが生まれ、子ども部屋を作るために同じマンションを再度リノベーションしました。「こんなふうに暮らしたい」は変わらず、1回目のときに使ったオレンジや黄色を2回目でも生かしました。ポイントになったのは、写真左上の壁にあるカラフルな時計。1回目も2回目も、この時計を飾っても違和感がない空間になっています。お気に入りのインテリア小物があれば、それをベースに色を組み立てるのもいいアイデアだと思います。
事例:〈103〉タイルとフローリング半分ずつの部屋
事例:〈230〉自分らしいインテリアにこだわった、カラフルで楽しい家
次は、ガラリと雰囲気が変わった事例です。こちらは、住む場所も変わりました。1回目は、広めの郊外のマンションをリノベーション。「穏やかな家時間を楽しみたい」と、ブルーをポイントにした北欧風のナチュラルな雰囲気でした。数年後、気分を変えたいと都心への引っ越しを決め、東京23区内の便利な場所にコンパクトなマンションを購入。以前の住まいとはガラリと変わった、カラフルで楽しい家になりました。インスパイアされたのは、大好きな絵本や本の世界観です。
同じ方でも、「こんなふうに暮らしたい」が変わると色使いも変わる、参考になる事例です。
自分らしい「マイ空間」にしたいと、住まいに色を取り入れたいと考える方は増えていると思います。「何か色を入れないと」と、色から入ると、悩んでしまいます。 「こんなふうに暮らしたい」を表現するときに、ピッタリくる色を取り入れるのがいいですね。
構成・大橋史子