NYから7時間。ハプニングあり、再発見ありのロンドン旅
小学校時代を過ごした思い出の街・ロンドン
「えっ? えーーーーーーーっ? 携帯がない!」。顔面蒼白(そうはく)の私。
休みを利用して、娘とともに懐かしのロンドン——小学校時代を父の転勤で過ごした思い出の街——を訪れていた2日目に、その悲劇は起こった。
「ママ? 本当にないの?」そう娘に話しかけられた時にはもう全身汗だく、冷や汗。人間の機能、条件反射はすごいなどと冷静に考えながら、一方で、頭はパニック状態。時すでに遅し。ない、ない、ない。私の携帯電話は、ダウンの右ポケットから連れ去られ、どこかに消えてしまっていた。
急いで、5分前に買い物をしていたイギリスの老舗デパート「リバティ」に戻った。店員さんに尋ねたが、もちろんあるわけもなく(涙)。「ロンドンはスリが多いからね」という店員さんの言葉には、暗に「貴女(あなた)、諦めなさい」というメッセージが含まれている気がした。ルンルン気分で可愛いお土産にうつつをぬかしていた時に違いない。スリにはおそらく浮かれた観光客=格好の標的に映ったのだろう。まさに「ピックポケット(ポケットから抜き出すスリ)」。まさか海外に慣れているはずの私に限ってという油断があったのかもしれない。
こうして始まったロンドン珍道中。ひとまず、冷静さを取り戻して、携帯電話の中身をすべて遠隔で消去し、警察に被害届を出した。良くも悪くも、「前向き」な性格だけが取り柄(え)の私。「覆水盆に返らず」「前進あるのみ」と自分をなだめて、始まったばかりのロンドン旅を全力で楽しむことを心に決めたのだ。
NYからは国内旅行の感覚で行ける
ニューヨーク(NY)からロンドンまでの飛行時間は7時間ほど。NYからカリフォルニアへも6時間と考えると、東海岸に住むアメリカ人にとっては、ヨーロッパは国内旅行のような感覚で訪れることができる人気の旅先なのだ。
こちらに移り住んでからというもの、私も何度かロンドンを訪れているが、小学校時代と比べて、今は何から何まで驚くほど洗練されている。空港からは、地下鉄一本で市内まで移動でき、2階建ての名物バスは、クレジットカード(電子マネー)で乗車することができる。
「40年前(昔すぎるけど)は、バス後方が吹き抜けになっていて、飛び乗ると車掌さんが首から下げたチケットマシンでチケットを販売していたのよ」なんていちいち娘に回顧録を披露しながら、3日間という短い滞在を堪能した。ダイアナ妃ご成婚のパレードを見守った思い出のバッキンガムパレスから、お気に入りの映画が舞台のノッティングヒル、ミュージカル好きには外せないウェストエンド、そして目眩(めくるめ)く美術館たちまで、ロンドン市内をのんびりと見て回った。
何よりもグレードアップしていたのは、食事。小学校時分にロンドンで食したものといえば、フィッシュ&チップス、ローストビーフに中華街の麺類くらいしか思い出せないが、ここ最近のロンドンは、おしゃれなエリアとして名高いショアディッチ、エンジェルの周りに、わざわざ足を運びたくなるような小洒落(こじゃれ)たレストランが軒を連ねている。「Cafe Cecilia」は、コテージのような温かみのある内装が印象的なレストランで、足を踏み入れた瞬間、友人宅を訪れたようなぬくもりがある。家具や飾ってあるお花に見とれる。黒板には、シェフこだわりの日替わりメニューが躍っていて、すべて食したくなる。「これは家では作れないおいしさだわ」と真心のこもったお料理の数々にホッとする。
- 1
- 2
ロンドン事情がわかって拝見したらいきたく