マツダ「ロードスター」 MT車で軽快な走りを楽しむ
このあいだ「マツダ・ロードスター」に乗ったら楽しかった。2023年10月にマイナーチェンジを受けた現行モデルを、年が改まった24年にドライブする機会があったのだ。
ロードスターのどこがいいかって、興味あるひとには、いまさら説明するまでもなさそう。端的にいうと、クルマにおける原初的な楽しさを持っている希有(けう)なモデルだ。
ラインナップは変わらず。1.5リッターのロードスターと、2リッターのRFなるクーペ(電動開閉式ハードトップ)。
共通した改良点は下記のとおり。ステアリングラック構造の見直し、レーダーセンサーやブレーキサポートによる安全機能の充実、8.8インチモニターとともに最新のOS搭載のマツダコネクト、形状変更されたヘッドランプとリアコンビネーションランプのLED化。一部グレードでは、新型リミテッドスリップデフの搭載も実施された。
マニアックになるけれど、1.5リッター車では、100RON(オクタン価)前提でエンジンがチューニングされ、出力が3kW向上。これまでは98RON前提だったが、日本のハイオクガソリンは「最低でも99RON」(マツダ技術者)なので改良を施したという。
ロードスターの魅力として、マニュアル変速機(MT)搭載車がラインナップされている点があげられる。そのラインナップポリシーは継続されたうえ、MT車では、どちらのエンジンでも、加減速時ともにアクセルレスポンスを向上させている。
従来のロードスターファンが喜んでいるのは、「ロードスターS レザーパッケージVセレクション」なる仕様の設定だそう。初代にあったぜいたく仕様「Vスペシャル」の再来とみられている。スポーツタンと呼ばれるベージュ系の内装と、ベージュのソフトトップが特徴だ。
私個人としては、「もっとも売れていないモデルのひとつ」とマツダの開発者が苦笑まじりに言う、もっともベーシック(で、もっとも廉価な)「ロードスターS」が好み。車重が1010kgと現代の水準にあってはかなりの軽量で、カーブなどひらりひらりと走りぬける走行感覚によって、まさに軽快。
1.5リッターエンジンは、低回転域でのトルクが薄めで、4000rpmから上で強い加速が得られる。街中でも同様。
いつもレッドゾーン近くまで回して走ることになるんですね、と私が感想を述べると、今回の改良版の開発を担当した車両開発本部の梅津大輔首席エンジニアは「それがサーキットでも楽しめるロードスターの真骨頂です」との返答。まことにマツダらしい答えと、私は納得したのだった。
今回のロードスターシリーズ改良の背景にあるのは、「サイバーセキュリティ法規UN-R155」だそう。いわゆるコネクテッドカーの頭脳にあたるコンピューターのハッキング防止のため、国連欧州経済委員会が導入したもの。
「ロードスターでは、2015年に現行のND型が発売されていらい、コンピューターシステムを継続使用していたこともあり、大変ではありましたが、刷新のいい機会ととらえました」。前出の梅津首席エンジニアはそう説明してくれた。
今後、欧州を中心に排ガス規制がうんと厳しくなるとともにブレーキダストなどの規制強化を盛り込んだ次期規制案「ユーロ7」の実施が、控えている。スポーツカー受難の季節の到来だ。それがロードスターの命運を左右することになりかねない。
環境規制は、私たちが暮らす環境保全のために大切。なのでいまは、「ユーロ7が施行されても、中断なしに、生産を継続できるよう知恵をしぼっています」という、マツダ株式会社商品本部の齋藤茂樹主査の言葉を信じ、ロードスターの延命を願うばかりだ。
【スペックス】
Mazda Roadster S
全長×全幅×全高 3915×1735×1235mm
ホイールベース 2310mm
車重 1010kg
1496cc直列4気筒ガソリンエンジン 後輪駆動
6段マニュアル変速機
最高出力 100kW@7000rpm
最大トルク 152Nm@4500rpm
燃費 16.8km@リッター(WLTC)
価格 289万8500円
写真=筆者撮影
取材協力=マツダ株式会社