歩くだけではダメ？　根気よく筋トレを
AG女子のテキトー美容『叱られ塾』

コロナ禍で引きこもり生活をしていた頃、あまりに体を動かさなくなった自分に危機感を抱いたことがありました。最近は外出の機会が増えたので大丈夫だろうと思う一方で、年齢を重ねたせいか、筋力の衰えが気になることもあります。

今からやるべきこと、できることはあるのでしょうか。女性向けフィットネスクラブ「カーブス」を運営するカーブスジャパンの本社（東京都港区）を訪ねました。

迎えてくださったのは、同社の小俣惠さん。事業開発本部ナレッジマネジメントチーム兼『カーブスマガジン』編集部の統括マネージャーで、現在40代のAG世代です。仕事で配属されてから約20年、週３回カーブスに通っていて、登山も好き。オフィスのある10階まで階段で上り、最近はハーフマラソンで一年前よりもタイムを6分縮めたというスポーツウーマンです。

まず、私の状況を説明して「結構歩いているつもりです」と話すと、小俣さんはニコッとほほえんで、「歩くだけじゃダメですよ」。

……え？　ダメなんですか？

「もちろん、歩いたり走ったりする有酸素運動も大切です。有酸素運動には脂肪を燃やす効果があります。ただ、健康的に体重を落としたい、やせたい、という目的があるときは、筋トレ（筋力トレーニング）で筋肉をつけて、運動で脂肪を燃やしやすい体を作ることが必要です。有酸素運動だけを続けても腹筋は割れません。また、生活習慣病の予防には有酸素運動が効果的と言われてきましたが、筋トレも効果があることがわかってきました」

ガーン……。私も、歩いていれば大丈夫だと思っていた一人です。さわやかに叱られて、取材は始まりました。

全身を鍛えて基礎代謝を上げよう

では、筋トレを毎日やればいいのでしょうか。

「有酸素運動は毎日でもいいですが、筋トレは筋肉にある程度負荷をかけるので、筋肉に傷が付きます。一度傷ついたら休ませて回復させる時間が必要で、だいたい一日おきに行うことがおすすめです。毎日の場合は、強くやった翌日は軽めにするとか、メリハリをつけるといいと思います。楽におしゃべりできる程度だと弱く、息が切れるのはやりすぎですが、『ちょっときついかな』と感じるぐらいに動かすと効果的です」

早歩きをしたら筋肉に負荷がかかりそうですが。

「ゆっくり歩くよりは早歩き、早歩きよりはジョギングをする方が、運動自体の負荷は高くなります。ただ、ジョギングは有酸素運動で、筋トレとは違います。足の筋トレで使う筋肉と、早歩きやジョギングをするときに使う足の筋肉は、別のものなんです」

厚生労働省が2024年1月に公表した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」（https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf）によると、「歩行またはそれと同等以上の身体活動」が、成人は一日60分以上必要とされ、一日約８千歩以上歩くことが推奨されています。また、「息が弾み汗をかく程度以上の運動を週60分以上」「筋力トレーニングを週2～3日」も推奨されています。今回、10年ぶりの改訂で筋トレが追加されました。

体のどの部位の筋肉を鍛えればいいのでしょう？

「部分的にではなく、全身を鍛えることをおすすめします。40代、50代の方にカーブスでアンケートを取ると、気になるのはおなかまわり、体重、肌などで、脂肪を燃やしやすい体をつくるためには基礎代謝を上げる必要があります」

生命を維持するため、人間の体は無意識のうちに活動しています。目が覚めた状態で体を保つために消費する必要最小限のエネルギーが、「基礎代謝」です。

「筋肉は脂肪を燃やす工場と考えてください。筋肉がしっかりついていれば基礎代謝も高く、筋肉量が多ければ脂肪を燃やす工場も大きくなります。そのためにはできるだけ全身を鍛えた方がいいわけです」

でも、いきなり全身を鍛えるのはハードルが高そう……。

「例えば、大殿筋（だいでんきん）と大腿四頭筋（だいたいしとうきん）というお尻と太ももの筋肉は大きいので、これを優先的に鍛えると基礎代謝も高くなりやすいですね。転倒防止などの介護予防でも足腰が大事ですし、下半身の大きな筋肉を優先的に鍛えることをおすすめします」

「長く続けることが大切」

下半身の筋肉を鍛えるために、自宅でできる運動はあるのでしょうか。

「自重のスクワットですね」と小俣さん。「ただし、正しいフォームかどうか、注意が必要です。フォームが正しくないと効果が出にくくなりますし、逆に筋肉や関節を痛めてしまうこともあります」

また、トレーニングマシンを使わないので、負荷はその分弱くなり、効果が出るまで時間がかかります。

「根気よく、長く続けることが大切です。個人差がありますし、運動によっても違いますが、目に見えるような効果が出るまでにだいたい２、３カ月はかかります」

カーブスに通い始めた人たちは、マシンを使って筋トレをして、早ければ１カ月ぐらいで体重が減り始め、肩こりが改善したり、体を動かしやすくなったりという変化が徐々に表れるそうです。

最後に、気になっていたことを聞きました。

トレーニングを始めるにあたり、年齢的に遅いということはないのでしょうか。

「全くありません」と、小俣さんはきっぱり。入会前にあまり運動をしていなかった人も多いとのことです。

「カーブスでは、50代、60代で始める人が多いですね。目的としては、40代と50代はおなかまわりや体重、肌、しみ、シワといった見た目の改善、60代はコレステロール値など健康診断の数値や生活習慣病を気にされて、70代は体力や筋力、80代は足腰の強化を挙げる方が多いです。90代で入会して今年100歳、という女性もいらっしゃいますよ」

……す、すごい！！　AG世代はまだまだこれからですね。

実は私自身、コロナ禍の頃に自宅でできる運動を探していて、「おうちでカーブス」を知りました。一日に６分間、スマホのアプリにある上半身、腹筋、下半身のいずれかのプログラムで運動するというもので、無精な私にもそれぐらいならできるかも、と思い、勇気を振り絞って入会しました。

最初に近所のカーブスで体力測定を受けたのですが、1分間に片方の足だけで何回屈伸できるか、という片足スクワットで、私は大苦戦。ふらついて何度も両足をつく姿を近くで見ていた高齢の女性に、「もっとがんばりなさい」と励まされました。

いつかあの女性に認められたいと思いつつ、仕事や家のことが忙しいと運動をサボってしまう性格が災いして、私は今もあまり進歩していません。今回も大いに反省して、取材を終えたのでした。

坂本 真子（さかもと まさこ）
朝日新聞記者として主にポピュラー音楽を取材。新聞紙面と朝日新聞デジタルの編集者も長く務め、人事部では社員研修や学生向けのインターンシップを担当。2021年12月からAging Gracefullyプロジェクトリーダー／編集長。
子どもの頃から合唱曲やロックを歌い、今は音楽と埼玉西武ライオンズを愛するAG世代。
イベント出演時はヘアメイクさんに整えてもらいますが、普段は「テキトー美容」で過ごしてきました。

取材&文＝朝日新聞社 Aging Gracefully プロジェクトリーダー／編集長 坂本真子
イラスト＝Kamikawa
イラスト協力＝日本工学院専門学校 クリエイターズカレッジ マンガ・アニメーション科
資料画像＝カーブスジャパン提供
監修＝AGフレンズ 松本千登世さん

◆カーブス 公式サイト　https://www.curves.co.jp/
「女性だけの30分フィットネス カーブス」は全国に約2千店舗を展開し、40代から70代を中心に約80.9万人（2023年11月末日現在）の女性が通っています。カーブスで行うのは、女性の健康に必要な三つの運動「筋力トレーニング」「有酸素運動」「ストレッチ」を組み合わせた、1回30分で全身を鍛えるサーキットトレーニング。「運動が苦手」「体力が心配」など、さまざまな悩みを抱えた女性が手軽に運動を続けて無理なく成果を出せるよう、ひとりひとりに合わせた運動指導とサポートを、インストラクターが担当しています。

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