必要なものだけのシンプルな家。居心地の良さは暮らしながら整えていく〈260〉
Hさんご夫婦(夫・妻30代)
神奈川県秦野市 / 築40年 / 85.48m² / 総工費 1540万円
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Hさんご夫婦は、私たちブルースタジオが手がけた神奈川県座間市のホシノタニ団地に住んでいました。ホシノタニ団地は、住民同士が交流できるような、古き良き団地の雰囲気を再現した賃貸住宅です。
そんな雰囲気が気に入っていたHさんご夫婦ですが、賃貸の更新時期をきっかけに、もう少し広い場所に住み替えたいと思ったようです。住み慣れた今の地区の近くで、同じように人とのつながりを感じられる場所に住みたいと、お二人で物件の候補を見つけて相談に来られました。
ご夫婦ともに、ホシノタニ団地に住んでいた頃から通勤には1時間半以上かかっていました。でも、「仕事とプライベートの切り替えができていい」と、再び郊外の住まいを選んだのです。
お二人のリノベーションの希望は、いつも空気が循環しているようなオープンな空間。部屋を仕切る壁をできるだけなくした、ワンルームのような住まいです。ホシノタニ団地でもワンルームだったので、その良さは体験ずみでした。
そこで、元々の間取りの3LDKをスケルトンにしてからフルリノベーションをし、部屋を仕切っている壁は取り払って、オープンな空間にしました。仕切りをなくしたことで見晴らしも良くなり、家の色々な場所で窓から眺めを楽しむことができるようになりました。
そして、もうひとつ、あまり作り込みすぎないことも希望されました。通常のリノベーションでは、持ち物に合った収納をリビングやキッチンに作ることが多いのですが、Hさん宅の収納はウォークインクローゼットだけです。ものが多くなりがちなキッチンでも収納は作らず、シンクやガスレンジなどの必要最小限の設備だけを設置しました。リビングにも、造作の収納や家具はありません。
最初に作り込まずに、暮らしながら必要なものを自分たちで追加していくのが、Hさんご夫婦流のスタイルです。リノベーションした家が完成形ではなく、この後も家作りが続いていきます。
LDKの収納は、前の家で使っていたボックスやカゴを利用して、自分たちにとって使いやすいように整えました。そして、キッチンのシンクの隣に、調理台にもなり、ワークスペースにもなる広めのカウンターをDIYしました。
一方、プロにしかできない部分は、リノベーションの際にこだわりました。その一つが、断熱です。オープンなワンルームは家全体の断熱性能を上げないと、暑さや寒さを感じやすくなります。家中の窓を二重サッシにするなど、断熱の工事はしっかり行いました。
そして、お二人以外の家族。それは、飼っている2匹の猫たちです。特に猫のために造作はしませんでした。ご飯を食べる場所、トイレなどをご自分たちで設置しました。
人も猫も暮らしながら必要なものがあれば追加していくのが、Hさんご夫婦流の自然体の住まい方です。
間取りとリノベーションの写真(写真をクリックすると、次々とご覧いただけます)
Hさんご夫婦に聞く
リノベーションQ&A
Q1 リノベーションのプロセスで楽しかったことはありますか?
何もないスケルトンの状態から部屋ができ上がっていく工程が楽しかったです。図面で見るだけではわからなかったことです。あと2、3回家作りをしてみたいなと、リノベーションに興味がわきました。
Q2 想像していた以上のことはありましたか?
部屋の仕切りをほとんどなくしたことで、飼っている猫が思いっきり家の中を走り回っていることですね。
いい意味で、新しい家という感覚がなく、住み始めたときから「ただいま」と言ってしまうくらいほっとできる居心地の良さを感じています。
Q3 リノベーションをして、生活が変わりましたか?
この家にいると時間の流れがゆっくりと感じられるようになりました。時間を気にしないこと、何もしない時間を過ごすことが増えたと思います。
朝焼け、夕焼けの風景を窓から眺めるのも楽しいです。
構成・大橋史子