高岡早紀さんインタビュー〈後編〉
自分を信じている　それが強み
「今を楽しく生きることが大事」
坂本真子の『音楽魂』

ARTS & CULTURE 2024.02.14

新アルバム「Decade -Sings Cinematic-」を発表した高岡早紀さんは、現在、テレビ東京系のドラマ「ジャンヌの裁き」（金曜夜８時）に出演。歌手としても俳優としても多忙な中で、家事や育児にも取り組んでいます。インタビュー後編では、日ごろ気にかけていることや家族への思いを語ります。

昨年１月、高岡さんは家族でパリを訪れました。

「最初、娘と一緒に行こうという話になって、次男に『実は私たち行くんだけど、行く？』と聞いたら、『行く行く』と言い出して。その後、長男に『私たち、行ってくるから』と伝えたら、『行こうかな』『え〜本当？』みたいな流れでした。4人で海外旅行に行くのは初めてだったので、すごくいい機会でしたし、家族の仲がいいのは本当に幸せなことだと思いましたね」

高岡さんは20代で長男と次男、30代で長女に恵まれました。子どもたちの存在が、仕事を続けるうえでのモチベーションになったと言います。

「子どもの学費とか、いろいろなお金がかかるじゃないですか。そのためには一生懸命働かなきゃいけない、という時期もありました。若かったので体力的にも働けましたし、それがあったからこそ今があるわけで、一生懸命働いてすごく大変だったけど、一生懸命働いてよかったな、と本当に思います」

今は3人の子どもと、80代の母親も同居。家族で過ごす時間を大切にしています。

「長女が中学生で、まだまだ親が必要な年齢ですし、学校のこともいろいろ忙しいです。娘にとって、12歳上のお兄ちゃんはお父さんみたいな存在で、10歳上の次男はお兄ちゃん。家では、子どもたちが寝た後や学校に行っている時間に、台本を読んでいます。ごはんを食べた後とか、家族みんなでリビングにいる時間があるんですけど、そこから私一人だけ抜けるのは好きじゃないんですよ。せっかく一緒にいられるなら、家族との時間を持ちたいので。じゃあ、いつやるのか、となると、家族が寝静まった後になっちゃうんです」

高岡早紀さんインタビュー〈後編〉<br>自分を信じている　それが強み<br>「今を楽しく生きることが大事」<br>坂本真子の『音楽魂』

犬の散歩で健康維持

14歳から芸能活動を始めた高岡さんは、今51歳。体力の変化を感じることがあります。

「疲れやすくなりましたし、疲れたら回復するのに時間がかかるから、疲れないようにしないといけない。長く女優という仕事をやっているので、常に自分を俯瞰（ふかん）しています。何を食べたらどうなるか、睡眠が不足したらどうなるか、今どんな顔をしているかも含めて、自分自身をわかっていることが大事なんです」

体力を維持するためには、続けていることが一つあるそうです。

「犬の散歩です。多い日は一日に2時間ぐらい散歩しますし、今日も1時間ぐらい歩いてきましたけど、いい運動になりますよね。何もしないでいると体が固まっちゃうから、歩いて、ちょっと運動することによって逆に疲れが取れることもあります。昔はジムに行ったこともありましたけど、マシントレーニングが好きじゃなかったんです。こんなに重いものを何のために持つんだろう、と思ってしまって。犬の散歩だと自分も楽しいし、犬とのコミュニケーションもあるし、外の空気も気持ちいいし、楽しい。犬の散歩だけで体力も十分維持できているし、体形も維持できるし、リラックスできるし、ストレス解消にもなります」

「食事は基本、自分で作っているので、食材や栄養バランスにはすごく気をつけています。以前は母が手伝ってくれたり、ごはんを作ってくれたりしていたんですけど、今は私が全部やっています。外食するときも、自分で選べないような会食はあまりしないですね」

日々健康に過ごしていても、気分が下がるときはあります。そんなとき、高岡さんはどう対処するのでしょうか。

「気分が下がっても仕事をしなきゃいけないとか、家のことをしなきゃいけないときはつらいですよね。それでも休まず、普段通りにやるしかない。そうすることが、さらに沈まないために大切だと思っています。そこで休んでしまうと、どんどん気持ちが落ちていくじゃないですか。本当に寝込まなきゃいけない状態のときは別ですけど、ちょっとした軽い風邪とかで、自分が病気だと思い込むともっともっと悪くなっちゃう。だからあまり病気だと思わないように、忘れるようにほかのことをやります。掃除でもいいし、散歩でもいいですね」

「いろいろな経験をしたから今がある」

年齢を重ねることについて、高岡さんは母親とよく話をするそうです。

「うちの祖母は100歳まで生きて、どちらかというと長寿の家系ではあると思うので、80代の母もあと20年生きるかもしれない。あと30年になると、私が今の母の年齢になっちゃう、みたいなことをよく話します。あとどれぐらい生きるかなんて誰にもわからないですし、今を楽しく生きることが大事かな、と思いますね。今を大事にすることによって健康が保たれるとか、自分を信じてポジティブに生きていると、魂がいろいろ潤いそうな感じがしませんか」

高岡さんは2021年に出版したエッセー「魔性ですか？」（KADOKAWA）の中で、自分の強みは「自（分を）信（じている）」と書いています。

「自分が自分を信じないで、誰が信じるの、と思います。自分のことを信じていれば、誰かに『信じているよ』と言われたときに『ありがとう』と普通に言えるけれど、自分で自分のことを信じていなかったら、素直に受け取れないですよね。子どもたちはみんな私のことを信じて、ついてきたわけじゃないですか。ママの言うことを聞いて、みたいに。それなのに私が揺らいでいたら、子どもたちの心も揺らいでしまう。仕事よりも、子どもたちのことが大きいかもしれないですね。自分が自分を信じなかったら、子どもたちを受け止められないので」

そんな高岡さんが幸せを感じる瞬間とは？

「自分の人生は基本幸せだなと思っているので。おいしいものを食べたときも幸せだなと思うし、仕事で疲れて家に帰ってきて、一人でシャンパンを開けているときは幸せだなと思うし。みんなが寝静まった後、一人でシャンパンを開けちゃっている、そんなことができることに対して幸せだなと思うし、こうして仕事があることも幸せだなと思います。幸せで幸せでしょうがないと思っているわけではないですけど、なんでも幸せだな、と思いますね」

「若いときから仕事をしていて、いろいろな経験をしてきたからこそ、今がある。経験してきたことの中で一つか二つは無い方が良かったこともあるかもしれないけれども、それも含めて私だから、全てが良かったんだと。今があるから自分が納得できるんです」

「自分が自分を信じないで、誰が信じるの」という言葉に、高岡早紀さんの強さを感じました。14歳で芸能活動を始め、長く第一線で歩んできたからこそ、説得力を持つ言葉なのだと思います。

一方で、インタビュー中や写真撮影時のやわらかい雰囲気も素敵でした。透明感のある繊細な歌声で、これからどんな音楽を歌っていくのでしょうか。とても楽しみです。

＞＞インタビュー前編はこちら

最近、音楽を聴いていますか。
振り返れば、あなたにもきっと、歌やメロディーに励まされ、癒やされた思い出があるはず。40代、50代になっても、これからもずっと音楽と一緒に過ごせますように。
そんな願いを込めて、子どもの頃から合唱曲やロックを歌い、仕事でも関わってきたAging Gracefullyプロジェクト編集長の坂本が、音楽の話をお届けします。

取材&文＝朝日新聞社 Aging Gracefully プロジェクトリーダー／編集長坂本真子
写真＝山本倫子撮影