高い実力を実感 レクサスLBXに試乗
レクサスが小さなクルマに注目している。2023年11月に発売されたレクサスLBXは、全長約4.2mと、トヨタ・ヤリスクロスとほぼ同寸なので、たしかにコンパクト。
なんで、小さなクルマを開発したのだろう。わけを聞くと、「従来の(大きめの)レクサス車のオーナーの要望」だったと、開発を指揮したレクサスインターナショナルの遠藤邦彦チーフエンジニア(CE)は説明。
ただし、と遠藤CEは言う。たんに小さいのはダメ。「たとえば(レクサス車ラインナップでもっとも大きなセダンである)LSから乗り換えても不満の出ないクルマでないといけないんです」と考えて開発に進んだそうだ。
LBXは、メルセデス・ベンツの初代AクラスやアウディA2のようなエッジのたったモデルではない。大型モデルが持つ走りのよさを、凝縮したサイズでも味わえる、いい意味でのスケールダウン版として仕上げられている。
トヨタとしてプログレを発売した時(1998年~)は、別にわざわざ小さくて(高い)クルマに乗る必要はない、というひとが多く、セールスが伸びなかった。対するLBXは、「取り回しがよく楽に操縦できるクルマが欲しいというユーザーの声に応えて」開発したと、前出の遠藤CE。
基本プラットフォームは、ヤリスやヤリスクロスと共用だが、マーケットがまったく異なる。そこで徹底的に手を入れ、ボディー剛性を上げ、同時にしなやかな乗り味を作り、静粛性や乗り心地のよさを追求した、と遠藤CE。内外装の作りこみや使う素材もLSに乗ってきたひとでも満足ゆくものにしたそうだ。
たしかに、乗ってみると、しっとり感があり、加速もハンドルを切ったときのクルマの動きも、そして乗り心地も静粛性も、ヤリスシリーズとはまったく別もの。
「レクサスの名前にふさわしい乗り味を追求して、全体のバランスを調整しました」。レクサス車をテストしクルマとして総合評価を担当するTAKUMIの尾崎修一氏は、2024年1月に実施された試乗会の会場で、そう教えてくれた。
なにかが突出していない。いっぽうで不足は感じない。じっさいこういうクルマを作るのはそうとう大変なのは、私も承知しているつもりだ。加速感とかクイックな操舵(そうだ)感とか、目立つものを盛り込んだほうが楽。LBXのような“静かなクルマづくり”は、じつは高い実力の証明といってもいい。
といいつつ、おもしろい発見もあった。ハイブリッドシステムに使われている1.5リッター3気筒エンジンだ。この存在感が予想いじょうに大きい。
基本はやはりヤリスシリーズなどと同じものだけれど、モーターの出力を調整してトルクカーブをLBX専用にしている。点火時期も細かく設定し、音質にも気をつかったと開発エンジニアから説明を受けた。
市街地での使い勝手重視というように、速度だと時速60kmぐらいまで、エンジン回転では3000rpmぐらいまでが、アクセルペダルの踏み込み量に対して、スムーズな加速が得られるし、静か。そこからあえてアクセルペダルを踏み込んでいくと、5000rpmの手前から驚くぐらい高音のエンジン音が聞こえてくる。
おもしろいのは、この高音こそ3気筒エンジンの真骨頂、というエンジニアの言葉。まるで楽器のように濁りのない高音を実現。これこそ、誇るべきことなんだそう。マニアックともいえるほどの凝りかたも、従来のコンパクトカーと一線を画している部分なんだろう。
【スペックス】
Lexus LBX(FWD)
全長×全幅×全高 4190×1825×1545mm
ホイールベース 2580mm
車重 1310kg
1490cc直列3気筒ガソリンエンジン+電気モーター 前輪駆動
最高出力 67kW(エンジン)+69kW(モーター)
最大トルク 120Nm(エンジン)+185Nm(モーター)
燃費 27.7km@リッター(WLTC)
価格 460万円~
写真=筆者撮影
取材協力=レクサスインターナショナル
なかなか良くできた車だと思う。昭和のおじさんにとって3気筒なんてNVHが酷くて乗れないという時代が長かったが、最近はそれらも克服され軽さからくる回頭性の良さが謳われている。ちょっと乗ってみたい一台だ。