AGフレンズ 松本千登世さん
大人美容を、楽しく〈3〉
「失う」の裏側に「得る」がある!
Aging Gracefullyプロジェクトが2023年度お迎えした「AGフレンズ」。美容エディター・ライターの松本千登世さんのコラム「大人美容を、楽しく」3回めは、年齢を重ねて気づいたことを語ります。
私が30代のころ、取材で出会った、当時50代のある俳優の女性が、インタビュー終了間際に、笑顔でこうおっしゃいました。
「老眼になって、いろいろなものが見づらくなったんだけど、そのぶん、肌感覚は研ぎ澄まされてきたのよね。経験値が想像力を育てているから、目には見えないものが見えるようになる、というのかな? 人は何かを失うと、それを補うように、何かを得る。そんなふうにできてるみたい」
年齢を重ねる面白みを言葉にされた気がして、どきりとさせられました。そのころ、自分の未来が見えなくて、不安や焦りを感じ始めていた私は、「もやもや」がすーっと晴れていくような気がしたのを、鮮やかに覚えています。
そして、年齢を重ねた今。改めて振り返ると、もちろん、失うものは数えきれないけれど、意識してその裏側を見ると得られるものがある場合も多くて、それがとてもいとおしいことに気づきました。
私の場合。上まぶたのハリが失われて、目尻が下がってきたら、なんだか優しげな顔に見える気がしてきました。手の甲にシワやシミができて、明るさが失われたら、以前は違和感のあったダイヤモンドのリングが映える気がしてきました。
そして、生まれつき多くて硬くて太かった髪は、年齢とともにハリとコシが失われ、でもだからこそ、20代、30代のころは難しかったコンパクトなボブスタイルが可能になった……、それもうれしい発見でした。
老化は、自然。ため息が出るのも、また自然。次第に受け入れられるようになったら、変化を面白がれる自分が見えてきたのです。
以前、偶然目にしたテレビ番組で、プロサッカー選手・三浦知良さんがこんなふうに答えていました。
「体力にもスピードにも自信があり、全力で走れた若いころは、自分のことしか見えていなかった。でも、年齢を重ねて、スピードが落ち、動きが遅くなった分、若いころよりもまわりがよく見えるようになった」。つまり、体力やスピード、鋭敏な動きが失われたぶん、視野が広がったのだ、と……。
私たちも、そうありたいと思うのです。若いころの自分を再現しようと躍起になるのでなく、自分を素敵な大人に育てる意識で今を面白がる。すると、日々の美容への向き合い方も変わってくるはず。ほんの少しだけ、未来が明るくなりませんか?
松本 千登世(まつもと ちとせ)さん
美容エディター・ライター。航空会社勤務、広告代理店勤務、出版社勤務を経てフリーランスに。雑誌や単行本などで美容や人物インタビューを中心に活動。著書に『「ファンデーション」より「口紅」を先に塗ると誰でも美人になれる 「いい加減」美容のすすめ』(講談社)、『いつも綺麗、じゃなくていい。50歳からの美人の「空気」のまといかた』(PHP研究所)、『顔は言葉でできている!』(講談社)など。女性誌『美的GRAND』(小学館)で「このコスメが、すごい!」、同『éclat』(集英社)で「大人美が目覚めるとき」を連載中。2024年3月に絵本『ピンクのカラス』(BOOK212)を出版。
文=松本千登世さん
写真=品田裕美撮影
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