不安だった禁酒生活。友人のような妻に支えられて
フラワーアーティストの東信さんが、読者のみなさまと大切な誰かの「物語」を花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら。
〈依頼人プロフィール〉
隅田倫弘さん 78歳
無職
大阪府在住
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現役だった16年前まで、私は転勤族。十数回転勤を繰り返し、そのつど家族とともに全国各地で暮らしました。そんな会社員生活から引退した5〜6年前、前立腺がんが見つかったのです。幸い大事にいたらず、妻との二人暮らしで週2回テニスに通うなど、引退後の生活を満喫していました。
ところが2022年の秋になって数値が悪化し、生検やその他の検査の結果、放射線治療の一種で重粒子線治療を受けることになりました。新しい治療を始めることにはもちろん不安はありましたが、同じくらい不安に感じたのが、治療をおこなう6月7月の2カ月間に医師から命じられた禁酒です。
会社を引退したあとの私の楽しみといえば、先ほどのテニスと、そして毎日の晩酌。多くは飲まないにしても長年の習慣になっていただけに、この禁酒が一番むずかしいのではないかと思っていました。
そんな私の不安を察して、妻は毎晩、「お酒を飲まないでもすむ献立作り」に奮闘。お酒に合う濃い味の料理を食卓から一掃し、どんどん食べないと冷めてしまう鍋物などを多用して、スムーズに禁酒ができるように、料理でサポートをしてくれたのです。
そうして思いのほか、すんなりと禁酒を実行することができました。また治療中は毎朝、レーズンを入れたヨーグルトを用意してくれるなど、腸の調子を整える生活にも気をつかってくれました。おかげで、予定通り治療を終え、今は以前通りの毎日を送っております。本当に妻には感謝感謝です。
妻は転勤生活で培った、誰とでも仲良くなれる明るさとやさしさを持ち合わせ、何事もシンプルに、ややこしく考えない性格。そんな妻のおおらかさにも助けられました。妻は、私が相談事を持ちかければ客観的な視点で乗ってくれて、私の決断をいつも見守ってくれる友人のような存在です。今も、テニスに行くときのお弁当を作ってくれることにも、感謝しています。
そんな妻に、私の感謝の気持ちとともにお花を贈っていただきたいと、投稿しました。どうぞよろしくお願いします。
花束をつくった東さんのコメント
奥さまは書道が趣味との情報があったので、渋い和のイメージをミックスしたアレンジに仕上げました。ダリア、アゲラタム、スカビオサ、スパイダー咲きのマムなどをちりばめ、まろやかな色みでまとめています。
友だち同士のようにお互いを理解なさりながら、ご夫婦の時間を刻んできたお二人。投稿者さまに代わって、奥さまへの感謝の気持ちを込めたアレンジです。
文:福光恵
写真:椎木俊介
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。選んだ物語を元に東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
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