香草といただく、大人のブリしゃぶみぞれ鍋
料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんがリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回は旬のブリを使ったお鍋のレシピをご紹介。クレソンやパクチーなどの香草を使うと、いつもより大人っぽい味を楽しめます。
―― 冷水先生、こんにちは。新しい年がやってきましたね。今年もよろしくお願いします。
冷水 はい、今年もおいしいお料理をたくさん作りましょうね。
―― 新年1発目の今回は、何を作りましょうか?
冷水 まだまだ寒いので、体が温まるお料理がいいかもしれませんね。
―― 1月中はまだ新年ムードもあって、新年会をやることもあるかもしれないので、何かみんなで楽しく食べられるお料理がいいかなと思っています。
冷水 みんなで囲む温かい料理となると……、やっぱりお鍋ですか!?
―― いいですね〜。ハレの日っぽいお鍋というと……、ブリしゃぶなんてどうでしょうか? この時期のブリは脂がのっていて、おいしいですし!
冷水 お鍋を「レシピ」と言っていいのかどうか、ちょっと不安ですけど(笑)。でも、やってみましょう〜。
―― たしかにブリしゃぶって、ブリを出汁(だし)のなかでしゃぶしゃぶするだけだから、調理がない!?
冷水 シンプルだからこそ、工夫が光るのですよ(笑)。
―― し、失礼しました!
冷水 まずはポン酢を作っていきたいと思います。市販のものでももちろん大丈夫ですが、冬は柑橘(かんきつ)が豊富なので、自分好みの柑橘を使って手作りするのも楽しいと思います。
―― 手作りポン酢!
冷水 ゆずやかぼす、春になったら甘夏でもいいですね。ポン酢は冷蔵庫で1年間くらい保存がきくので、柑橘がある冬に作っておくといいですよ。
―― たしかに市販のポン酢はちょっと味が濃いというか……、素材の味より際立つことがあるので、どうしたものかな〜と思うことがありました! 手作りすればよかったのか……。
冷水 すごく手軽に作れるんですよ。薄口醤油(しょうゆ)、米酢、みりん、酒を入れた鍋に昆布を加えて、弱火にかけます。沸く寸前に火を止めて鰹節(かつおぶし)を加えたら、5分ほど待ってください。それをザルでこして、そこに好みの柑橘類の搾り汁を加えて混ぜるだけです。
―― なんと、簡単!
冷水 多めに作ったら密閉できる瓶などに入れて保存してください。その時、昆布を戻しておくと、よりおいしくなります。すぐに使う場合でも、前日に作っておくと味がなじんでおいしいのでね。
―― これは食べるのが楽しみです。
冷水 次はお鍋の出汁の準備です。ブリからいい出汁が出るので、今日はシンプルに昆布だけです。できたら前日の夜から水に浸して、食べる前に中弱火にかけてください。沸騰直前で火を止めてくださいね。
―― こちらも手軽でありがたい……。
冷水 次に大根おろしを作ります。今日はみぞれ風です。鬼おろしでもおいしいので、そのあたりはお好みで。
―― 大根おろしって、どれくらい水気を絞ったらいいのか、いつも迷います……。
冷水 今日はしっかり絞る必要はないです。ざるにのせておいて、自然に水気が切れる程度で大丈夫です。大根も出汁の一部なのでね。
―― なるほど、あの汁がおいしい出汁になるんですね。
冷水 そして主役のブリの準備です。厚さ5mm程度にスライスします。少し包丁を斜めにして、お刺身を切るような感じでカットしてください。
―― 旬の時期はお刺身用の柵が売ってたりするので、いいですね。
冷水 次は具材の準備です。
―― ん? これは……、クレソンですか!?
冷水 はい、今日は超シンプルにクレソンだけです。最初にブリをしゃぶしゃぶして食べて、いいお出汁が出たところで、クレソンをさっと出汁にくぐらせて食べたいなと。
―― 鍋というと、いろいろな具材を一緒にぐつぐつするイメージですが、今日はブリを食べてからクレソンを食べるんですね! 一種類ずつ食べるというのが、すごく大人っぽいです。
冷水 それぞれの味を堪能してほしいのでね。ブリはしっかりとした風味がありますし、脂ものっているので、クレソンなど香りのある野菜と相性がいいんです。ブリの後にクレソンを食べると、さっぱりしますしね。
―― かっこいいです……!
冷水 そして、つけだれの準備です。今日は万能ネギとパクチーを用意しました。万能ネギは小口切り、パクチーは葉の部分をみじん切りにしておきます。パクチーの根は今日は使いませんが、蒸し魚の風味づけなどに使えますので、とっておきましょうね。
―― クレソンに続き、パクチーですか! さすが冷水流です。
冷水 クレソン同様、パクチーも香りと風味が強いので、ブリの味に負けず、おいしさを引き立ててくれるんです。
―― ポン酢の風味にも負けないですね。万能ネギとパクチー、2種類選べるのも楽しいです。
冷水 準備が整ったので、鍋の用意をしていきましょう。前夜から水に浸けておいた昆布出汁1.5ℓを土鍋に入れて、酒、塩ひとつまみを加えて火にかけます。沸いたら大根おろしを加えましょう。
―― 大根おろしがふわふわで、雪みたいです。
冷水 ふつふつとして大根おろしが温まってきたら、準備完了です。ブリをさっとしゃぶしゃぶしてください。大根おろしと万能ネギをブリの上にのせて、ポン酢をお好みでかけて召し上がれ。
―― おおお、自家製ポン酢のやさしいことよ……。ツンとした感じがないのがいいですね〜。でもしっかりと柑橘の爽やかさがあって。これはもう市販品を使えません!
冷水 よかったです〜。パクチーも試してみてください。
―― 万能ネギはプレーンな感じでしたけど、パクチーはなんというか……、よりブリの味が濃厚に感じられますね。ちょっとオリエンタルな感じもして、食べたことのないブリしゃぶです!
冷水 粒の黒コショウを砕いたものをトッピングしても、おいしいですよ。
―― いつもは市販のポン酢につけて食べるだけだったのですが、色々な組み合わせで食べると発見があって面白いですね。ブリの風味もそれによって感じ方が変わってきます。ブリしゃぶの肝はつけだれとトッピングなんですね〜。
冷水 ブリを食べたら、クレソンもどうぞ。
―― わあ、すごく爽やかですね。ちょっとシャキシャキ感を残すくらいがいいですね。
冷水 〆にはうどんを入れてもいいですし、みぞれと出汁をごはんにかけてもおいしいですよ。
―― なんだか今日はブリしゃぶの奥深さを感じましたね。鍋って自由でいいんだ!って、大発見でした。
冷水 好みのトッピングを用意して、みんなであれこれ言いながら食べると楽しいと思いますので、ぜひ試してみてください。
ブリしゃぶみぞれ鍋
材料(4人分)
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ブリ刺身用柵600gほど
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大根1本
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クレソン3~4束
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昆布20cmほど
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水2ℓ
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酒100ml
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塩ひとつまみ
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ポン酢適量
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万能ネギ適量
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パクチー適量
- 昆布は一晩水に浸して中火弱で沸騰直前まで火にかける。
- 大根はおろしてザルに入れ、自然に汁をきる。ブリは5mm厚にスライスする。万能ネギは小口切りに。パクチーは葉の部分をみじん切りにする。
- 1.の昆布出汁を1.5ℓと酒、塩ひとつまみを土鍋に入れて火にかける。沸いたら大根おろしを加える。
- 土鍋がふつふつしだして大根おろしが温まってきたら、ブリをさっとしゃぶしゃぶして皿にとり、少し大根おろしと万能ネギをのせポン酢を適量かけて巻いて食べる。
- ブリを食べ終わったら、クレソンをしゃぶしゃぶする。
ポン酢
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鰹節10g
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柑橘類の搾り汁180ml
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薄口醤油180ml
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米酢90ml
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みりん55ml
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酒35ml
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昆布10cm角1枚
A
- 昆布は4等分くらいに切り、Aの材料と一緒に鍋に入れて弱火で沸くまで火にかける。
- 1.に鰹節を加えて5分ほどおいたら、ザルでこして柑橘類の搾り汁と混ぜ合わせる。