AG勉強会 第2部〈1〉 アツギ株式会社 「フェムサポの活動、会社も社員も変える」 | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]
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AG勉強会 第2部〈1〉 アツギ株式会社
「フェムサポの活動、会社も社員も変える」

アツギ株式会社の岡持(おかじ)奈那さん=2023年11月22日、東京都中央区の朝日新聞東京本社、品田裕美撮影

Aging Gracefully(以下、AG)プロジェクトは、40代、50代のAG世代の女性たちを応援するために、企業向けの勉強会や一般の方向けの催しなど、さまざまな活動を展開しています。

2023年11月22日には、「フェムテックで職場が変わる? 更年期でも働きやすい環境は」と題した、企業にお勤めの方々向けのAG勉強会を東京・築地の朝日新聞東京本社で開きました。リアルのみの開催で約50人が参加。第1部はAGフレンズで産婦人科専門医の高尾美穂医師が基調講演「女性が働きやすい職場をつくるために」を、第2部は「フェムテックで職場が変わる?」をテーマに企業の取り組み紹介と対談を行いました。

今回は第2部、アツギ株式会社開発本部ブランド戦略部次長でフェムサポチームリーダーの岡持(おかじ)奈那さんによる、自社の取り組み紹介の模様をお伝えします。

――岡持さんがチームリーダーを務める「フェムサポ」の活動について教えていただけますか。

アツギは設立77年目で、ストッキングやタイツ、靴下、インナーウェアのメーカーです。女性のための商品をずっと作ってきましたが、近年、女性の働き方や生き方が多様化していて、どうすれば現代女性たちをサポートできるのかを考え、フェムサポというチームを設立しました。2022年4月、開発本部の女性を中心に6人で活動を始めました。23年春には全社でメンバーを公募し、部門に関係なくやる気のある方に参加を求めたところ、新たに男性2人を含む6人が加わりました。現在12人の部門横断型プロジェクトとして社内で活動しています。

フェムサポの主な活動は、三つあります。第一に「企画立案」。商品でお客様をサポートすることです。第二に「啓蒙(けいもう)活動」。こうした活動を社外に広げていくことですね。第三に「社内認知度向上と教育」。こうした商品を作っている我々だからこそ社内でも理解してもらい、社内の制度も整えていかなきゃいけないということで、社内勉強会などを行っています。

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「She free」の吸水型サニタリーショーツ=アツギ株式会社提供

商品企画の一つめは、「She free /シーフリー ~いつでも自分らしく、自由な女性へ~」というブランドの吸水型サニタリーショーツ。薄くて普段履きのできる吸水ショーツになります。

みなさん、「そろそろ生理が来るかな」という時期があり、一日遅れることもよくありますよね。そのたびにナプキンをつける方が多いのではと思いますが、生理ではないときのナプキンは妙にむれると私は感じていて、もったいないと思うこともあります。こうしたときに使っていただきたい商品として、こだわって作りました。とにかく薄いことと、コットンのマチを使用することで、普段のショーツと変わらない履き心地を実現しました。

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「ASTIGU」(アスティーグ)の「快」=アツギ株式会社提供

商品企画の二つめは、「ASTIGU」(アスティーグ)の「快」です。見た目のインパクトが強いかもしれませんが、ストッキングのパンティー部分に穴が開いている形の商品です。トイレに行くたびに、女性はショーツもはいてガードルもはいてストッキングもはいてと、時間がないときにうまく上げられなかったり、ストッキングに穴を開けてしまうリスクがあったりと、悩みに思っていらっしゃる方が多いのでは、と我々は考えました。これは、そんな悩みを解決してくれる商品です。

最初にショーツの下に履いていただくだけで、トイレのたびに上げ下げをしなくてもいいので、びっくりする形ではありますが、実はとても理にかなっています。23年夏のドラッグストアショーに出展した際には、新商品コレクションで会長賞をいただきました。

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「ハイジュニ こどもを守る透けにくいブラ」=アツギ株式会社提供

商品企画の三つめは「ハイジュニ」。子どものための下着です。下着業界では、子どもの下着は白が当たり前のように売られていて、我々もずっと信じて製造してきました。でも、制服や体操着は白が多く、白い制服に白い下着だと、実はとても透けやすくなります。

小学校4年生から6年生ぐらいでブラジャーを着け始めますが、その子たちにアンケートを取ると、「まだまだ恥ずかしい」「目立ちたくない」「着けていることを知られたくない」という子が多いんですね。そこで、子どもたちが着やすいけれども透けにくいカラーを考えました。好評をいただいている商品です。

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フェムテックトーキョー出展の模様=アツギ株式会社提供

フェムサポの啓蒙活動としては、23年10月に東京ビッグサイトで行われた「フェムテックトーキョー」に出展しました。女性のライフステージごとにある様々なお悩みに、我々の商品でこんなサポートができますよ、とお伝えしたくて、先ほどの3商品や、眠りをサポートするインナー、ストレスをかけないタイツ、更年期に寄り添うインナーなどを展示しました。

来場された方からは「この商品はいいですね」といううれしい声をたくさんいただきました。また多くのメディアに取り上げていただけたことも、いろいろな方と触れ合うきっかけになり、とても良かったと思っています。

フェムサポの社内向けの活動としては、花王さんが取り組まれている「職場のロリエ」という、生理用品がトイレの備品としてあればみんなが安心して仕事ができるんじゃないかという取り組みに我々も賛同しまして、まだ本社だけですが、2022年3月から導入しています。社員からは、「会議続きで突然生理になったときに助かった」といった声をたくさんもらっています。

女子サッカーチームと勉強会も

社内勉強会も開催しています。これまでに2回、婦人科の医師をお招きしました。初回は更年期の女性に向けた製品開発のために更年期の症状などを、2回目はもっと広く、女性ホルモンによるライフステージの変化などを教えていただきました。

2回目は全社員から参加者を募集したところ、約50人の応募があり、男性も多く参加しました。男性も更年期があることもお話しいただいたんですけど、男性は本当に知らなくて、「どの病院に行ったらいいのか」という質問もありました。性差があっても、それぞれがお互いを知ることが大切で、そういう会にできたのは良かったと思いますし、参加者からも「理解が進んだ」という反応が多くありました。

AG勉強会 第2部〈1〉 アツギ株式会社<br>「フェムサポの活動、会社も社員も変える」
社内勉強会「ジェンダートーク」=アツギ株式会社提供

また、アツギ本社は神奈川県海老名市にありますが、隣の市にあって、以前から吸水ショーツのサンプリングや座談会で交流のあった女子サーカーチームの大和シルフィードさんとも、勉強会を開催しました。ジェンダートーク「女子サッカーと性の多様性を考える」というタイトルで、濱本(はまもと)まりん選手と、2019年にLGBTQの当事者であることを公表された下山田志帆選手にお越しいただいて、お話をうかがいました。

社内からは「どうしたら性的マイノリティーの方を応援する行動ができるのか」といった質問が出て、「プライドマッチ(※)を見に来てもらうことなどでまずは知ってもらい、社会全体の知識を少しずつ底上げしていくことが応援につながると感じる」と話していました。また、メンズと呼ばれるボーイッシュなスタイルを好まれる選手が女子サッカー界では多く在籍していること、その方たち含めて女子サッカーの世界では多様な性が当たり前という認識が共有されていて、すごく居心地のいい世界だとお話しされていたことも、とても勉強になりました。

※「プライドマッチ」は、スポーツチームが地域のLGBTQ+団体と連携し、試合の前後や試合中に、LGBTQ+コミュニティーに対する平等と尊重の姿勢を表し、サポートする取り組みです。

以上が、現在までのフェムサポの活動内容です。このような活動を通して、毎日がもっと快適に、楽になるサポートができたらいいなと思っています。

部門横断型、社として評価

――日本の企業は一般的に、本業の評価につながらない活動に冷たい面があります。部門横断型のプロジェクトを始めて、その辺りはどのように変えていかれたのでしょうか。

弊社は女性向けの商品を取り扱っていますので、本業と少し近いところにあると思いますが、社のトップからも「フェムテックや女性のヘルスケアにしっかり取り組むように」という指示が出ています。こうしたことは経営陣の理解がすごく大事だと思っています。また、フェムサポを一緒にやりたいという人も、上司がわかっているか、自分の働きが認められるのかを不安に思うわけで、本人の人事評価として、チャレンジ性や新しいことに取り組んでいるという点をしっかり評価いただくように、社内で周知しています。

――フェムサポの男性社員、女性社員それぞれに活動を始めて変わったことや、会社全体が変わってきたと感じることはありますか。

部門横断型といっても、初めは開発本部の6人。社内では一部署が行っている活動という印象があったかもしれません。また、営業の社員がフェムテック製品を売り込む際に苦手意識が出ていたので、もっと関わって広く知ってほしい、との思いから、あえて全社にメンバーを公募しました。我々の思いや活動、会社としてこういうことに取り組んでいる、と知ってもらう一つのきっかけになったと思います。

また、様々なイベントも、フェムサポだけで運営するのではなく、各部門に協力をお願いして、参加してもらいました。外部の方に「私たちはこんなことをやっています」とご紹介すると、「すごくいいですね」「ぜひ商品化してください」などと共感していただけて、様々な接点もできるので、イベントに参加することで社員は成長していくんですよね。それもすごくよかったですし、製品や取り組みをより理解するきっかけになると思います。

>>第1部 高尾美穂医師「女性が働きやすい環境とは」はこちら
>>第2部〈2〉株式会社パソナグループ「多様な働き方を選べる環境、社が整える」はこちら
>>第2部〈3〉女性の健康課題「知らない」を「知る」に積極的に話題に出して 周りを巻き込もう はこちら

取材&文=朝日新聞社 Aging Gracefully プロジェクトリーダー/編集長 坂本真子
写真=品田裕美撮影

◆Aging Gracefully 勉強会「フェムテックで職場が変わる? 更年期でも働きやすい環境は」
 2023年11月22日(水)15:15~18:00 朝日新聞東京本社
◇第1部 基調講演「女性が働きやすい職場をつくるために」
 高尾美穂さん(産婦人科専門医、医学博士、婦人科スポーツドクター、女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長、AGフレンズ)
◇第2部 「フェムテックで職場が変わる?」企業の取り組み紹介と対談
 高尾美穂さん
 岡持奈那さん(アツギ株式会社開発本部ブランド戦略部次長、フェムサポチームリーダー)
 細川明子さん(株式会社パソナグループ執行役員、HR本部副本部長)
 司会:坂本真子(朝日新聞社Aging Gracefullyプロジェクトリーダー/編集長)
◇第3部 「更年期が幸年期になるカードゲーム」体験会
 今井麻恵さん(幸年期マチュアライフ協会代表理事)

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