華やかなブロードウェーの舞台を支える、日本人ステージマネジャー
ニューヨーク在住7年目の、久保純子さん。新型コロナウイルスを経て世界がめまぐるしく変化する中での、ニューヨーク生活。家族や友人との時間、街で見かけたモノ・コト、感じたことなど、日々の暮らしを通して久保さんが見つめた「いまのニューヨーク」をつづります。
12月、にぎわうブロードウェー
みなさん、ブロードウェーと聞いて真っ先に思い付く作品は? 日本でも人気の『ライオン・キング』や『アラジン』、マイケルジャクソンをテーマにした『MJ』や映画から舞台化された『ムーラン・ルージュ』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など、今、オン・ブロードウェー(客席数500以上の劇場)では45の作品が上演されている。クリスマスのイルミネーションが街を彩るこの季節、観光客も一気に増えて、ブロードウェーのチケット代は高騰しているにもかかわらず、完売続出。先日も、年末に遊びに来る友人のために『MJ』のチケットをBox Officeへ買いに行ったが、ほとんど売り切れていて、しかも良い席は399ドルとあまりの高値におののいた。
でも実は、いまだブロードウェーの集客率はコロナ以前には戻っていないというニュースも耳にした。海外からの観光客が完全に復活していないことに加えて、コロナ禍でオンライン視聴に慣れてしまったオーディエンスが生ライブのショーに出向かなくなったことも理由のようだ。観客動員数が落ち込んで、数週間に渡って赤字が続くと、ショーはクローズしてしまうとブロードウェーのプロデューサーから聞いたことがある。実際、今年も数多くの作品が終幕を迎えた。この5月、トニー賞で4部門を受賞した『Some Like it Hot (お熱いのがお好き)』も今月30日が千秋楽だ。自称ブロードウェーオタクの私としては悲しい限りで、勝手に制作陣や演者の気持ちになって落ち込むのである。
ステージマネジャーという仕事
そんな中、うれしいニュースもある。ブロードウェー史上4番目のロングラン『ウィキッド』が先だって20周年を迎えたのだ。その華やかな舞台を支えるスタッフの一人に日本人のステージマネジャー(舞台監督)がいる。横尾沙織さんは、2年前からその大役を務めている。
ブロードウェーのステージマネジャーとは、どのような仕事なのか。舞台監督と聞いて私が想像するのは、美術、照明、音響スタッフを主にまとめるステージ周りの責任者だ。しかし、沙織さんが担う役割はそれだけではない。ステージマネジャーは、出演者の体調を常にウォッチし、声の調子が悪い演者がいれば「のどの調子は大丈夫?」と声をかけ、必要とあらば代役を充てがう。いつもと違う立ち位置で演じた俳優がいれば、「先ほどのショーで立ち位置が少し違ったわ。照明がきれいに当たって欲しいから、気をつけてね」と言葉を選びながら、さりげなく指摘する。沙織さんは、「劇場に常駐しているセラピストや看護師の様な気持ちになる」という。それくらい密に日々演者と接している。
AAPAC(ASIAN AMERICAN PERFORMERS ACTION COALITION)の最新レポートによると、ブロードウェーで活躍するアジア系の俳優は、全体の6.3%にしか過ぎず、制作陣に至っては5%にも満たないという現状で、沙織さんはどうやってここまでたどり着いたのか。何が彼女を動かしたのか。
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ステージマネージャーは、憧れの職業です。私も海外の英語圏在住ですが、以前ボランティアでステージの裏方の仕事をしたことがあります。幕が上がる直前の高揚感を舞台の袖で出演者とともに味わうことは格別で忘れがたい経験ですね。また、ボランティアとしてステージの裏方ができればと思っています。沙織さん、これからもステージマネージャーとして、素敵な舞台を作っていってください。そして、久保さんのエッセイストとしての才能も素晴らしですね。いつも楽しみに拝読しています。同じ海外在住者として、海外で活躍される方々を応援してます!
ウイキッドは劇団四季で観たことがあります。
久保ちゃんも含めて海外で活躍する日本人には本当に敬服します。海外で認められるということは簡単なことではありませんがそれでもしっかり信頼されて仕事を任せられるというのは素晴らしいことですね。こういう方々を応援したいと同時にもっと色々なスポットが当たることを期待しています。久保ちゃんありがとう!