10キロの散歩に連れていってくれたタローの大親友

〈依頼人プロフィール〉
松本葉子さん　63歳
自由業
滋賀県在住

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ご近所に住むＯさんは、うちの柴犬（しばいぬ）タローと、私たち家族にとってかけがえのない大切な方です。タローは元はご近所の高齢の方に飼われていて、Ｏさんが散歩を引き受けていらっしゃいました。タローが3歳の時、その飼い主さんが亡くなり、その方の希望で我が家にくることになったのですが、散歩は引き続きＯさんにお願いすることになりました。

タローもOさんもとにかく頑健で、それから約10年間、毎日10時～16時ごろまで、最低でも1日10キロ程度は歩くという超ロング散歩が日課でした。里山や商店街を歩き、湖畔で和んだり、山に登ったり……。知り合いからは「そんな距離、散歩とは言わない！」とあきれられ、「かなり遠いところでタローくんを連れた人を見たけれど、誘拐されてない？」と問い合わせがあったことも。

そんな幸せな日がいつまでも続くと思っていたのですが、4年前、Ｏさんが体調を崩されたのです。診断は末期がん。Ｏさんとタローの長い長い散歩はいったんお休みとなりました。ただし、既に深刻な病状であったにもかかわらず、Ｏさんは驚くほどお元気。治療も奏功し、「Ｏさんの家に行こう行こう」と引っ張るタローの言うがまま、私とタローが会いにいくと、「タロちゃん、よう来たね」とタローと楽しそうに遊び、時には短い散歩にも連れていってくださいました。みんなでドッグランにでかけたこともいい思い出です。

しかし病魔はどうしてもＯさんを見逃してはくれませんでした。とうとう昨年末に70代で他界されました。「最後はタロちゃんに見送ってもらいたい」と言い残されていたので、タローと一緒にお見送りしました。

以前の飼い主さんが高齢でお世話ができず、殺処分となりかけた時に、Ｏさんが散歩を引き受けてくれて命を救われたタローも、もう15歳。犬の寿命からして、近い将来、Oさんのところに行くことになるかもしれません。でも大丈夫。天国にはＯさんが待っていて「タロちゃん、よう来たね」と迎えてくれるに違いありません。

Ｏさんご夫妻は、お互いを名前で呼びあうような素敵なご夫婦です。奥さまはお花が好きでお庭でたくさんの花を育ててらっしゃいましたが、Ｏさんはまったく興味がなく、菊とバラの区別ならなんとか……ぐらい。いつも奥さまにあきれられていました。

でもそのたびＯさんは私に小声で言うのです。
「うちの奥さんは花が好きで。ね？　いいでしょ」

Ｏさんが亡くなられてからも「今日も主人とこんなこと話してて」と奥さまはよくおっしゃっています。もし花束を贈っていただけたら、お花をひとつずつ説明しながら、天国のＯさんに話されると思います。奥さまの横で、ニコニコうなずいているＯさんが目に浮かぶようです。

奥さまが天国のＯさんに、「見て見て！　このお花はね……」とお話しできるようなアレンジだとうれしいです。

花束をつくった東さんのコメント

奥さまのお花好きを自慢なさっていたというOさん。そんな奥さまが楽しんでもらえるよう、20種類以上のさまざまなお花や葉を入れました。

ダリア、マリーゴールド、ガーベラなど、よく見るお花に加えて、ネイティブ系の観賞植物、トウゴマや、ピンクと白のグラデーションになっている八重のユリなど珍しいお花も数多く入っています。大きな花を咲かせているプロテアは、ドライフラワーにすることも可能です。

Oさんも唯一おわかりになるという菊（マム）とバラも近くに入れてありますので、奥さまから天国のOさんに「見て見て！」と声をかけながら、一緒に楽しんでいただければうれしいです。

文：福光恵
写真：椎木俊介

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