コンパクトでもやりたいことを主役に。“低い暮らし”でリラックス〈257〉
Sさんご夫婦(夫・妻30代)
横浜市 / 築29年 / 57㎡ / 総工費950万円
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横浜駅から電車で20分ほどの場所にある、Sさんご夫婦のマンション。都心に出るのも便利、それでいて自然が多い場所にあります。平日にしっかり働いて、週末、海や山に出かけてリラックスというような過ごし方ができると、最近、人気のエリアです。
2LDKのマンションをフルスケルトンにし、間取りの構成から考えて1LDKにしました。今回のリノベーションで2人が実現したかったのは、広々したキッチンと楽器が弾ける防音室。料理好きの妻と楽器が趣味の夫の、お互いの好きなものを主役にした間取りです。
さらに、話を聞いていくと、料理をしたり、食べたり、楽器を弾いたりといった、「当たり前の日常を楽しく過ごせる家にしたい」とのことでした。
そこで、私たちが提案したのは、57㎡というコンパクトなスペースでも窮屈に感じないような床に近い、低い暮らしです。高い家具がないので、視線が抜けて空間に開放感が生まれます。高い家具の代表といえばダイニングテーブルとチェアなのですが、Sさんご夫婦は置かない選択をしたので、低い暮らしが無理なく実現できたのです。
リビングには、ご飯も食べるローテーブル、背の低いソファを置きました。まるで少し前の、ちゃぶ台を囲むような暮らしです。また、テレビは置かずにプロジェクターにしたことによっても、壁に余白が生まれ、空間が広く感じられるようです。
お二人の希望であるキッチンと防音室は、こんなふうになりました。
キッチンは窓際に配置し、窓からの抜けと明るさを感じる空間に。通常、窓際はリビングを配置することが多いのですが、キッチンが間取りの主役だと感じる選択です。
調理台を広くしたいからと、システムキッチンの間口(横幅)は270cmに。通常よりも少し広めのものを選び、調理しやすさにこだわりました。さらに、システムキッチンは壁付けにし、ダイニングテーブルとチェアは置かないことで、床面にも余裕を持たせました。
シンク上につり戸棚をつけたり、シンク下にゴミ箱が収まるようにしたりして、余計なものを外に出さないように。そして、システムキッチンの背面に、扉付きの収納を設置し、家電や食材などをしまいました。収納が充実していることも、使いやすいキッチンの重要な要素です。キッチンが使いやすくなったので、2人で料理をする時間も増えたようです。
防音室は、家のほぼ中央に配置。楽器を弾きながら、パソコン作業も可能な2.4畳です。防音室そのものはSさんご夫婦が購入されました。サイズ通りにスペースを作って引き渡し、販売店が防音室を組み立てて設置しました。
ダイニングテーブルとチェアを置かず、ローテーブルをメインにした“低い暮らし”を選んだSさんご夫婦。57㎡というコンパクトなスペースに、好きなものはきちんと配置されました。なんとなく懐かしい、リラックスできる家になりました。
間取りとリノベーションの写真(写真をクリックすると、次々とご覧いただけます)
Sさんご夫婦に聞く
リノベーションQ&A
Q1 リノベーションをしようと思ったきっかけは?
初めは新築戸建ての購入を検討していましたが、都内への通勤を考えたときに金額的に難しいことが分かり、マンションのリノベーションを考え始めました。リノベーションであれば、自分たちのやりたいこと(大きいキッチン+防音室)を全て実現できると思いました。
Q2 リノベーションをして、生活が変わりましたか?
こんなことが変わりました。
・リビングで過ごす時間が長くなった。
・キッチンとリビングの距離が近くて、コミュニケーションが取りやすくなった。
・家具など空間に合わせて、長く使える良いものを購入するようになった。
・水回りを玄関近くに配置したので、帰宅後すぐに風呂に入ったり、手を洗ったりしやすくなった。
Q3 家の中でどんなことをしている時間がお気に入りですか?
リビングでプロジェクターを見ながら、リラックスして過ごす時間。それから、防音室でギターを弾いたり、2人で料理をしたりする時間です。
構成・大橋史子