AGフレンズ 村田貴子さん
『ワクワク人生を楽しむ』お金のはなし〈1〉
老後の不安を「見える化」、資産寿命を伸ばそう
Aging Gracefullyプロジェクトが2023年度新たにお迎えする「AGフレンズ」。3人目は、ファイナンシャルプランナーの村田貴子さんです。今後の人生を楽しむために、今からできるお金の備えについて、AG世代に向けたコラムをお届けします。
「老後を楽しく生活するために、必要なお金の準備はできていますか?」
こう聞かれたら、みなさんはどのように思いますか?
「目の前の生活でいっぱいいっぱいで、それどころじゃないわ」とか「先の話過ぎて、イメージがつかない」など、いろいろな声が聞こえてきそうです。そもそも、「老後」はいつからのことなのか、というのも、働き方や定年退職制度そのものが大きく変化してきている今、あいまいな部分ではありますよね。
では、この質問はどうでしょうか。
「今日は定年退職の日です。今まで本当にお疲れさまでした! 明日から24時間、365日、すべて自由な時間です。お金の心配はいりません。今後どのようなことをして過ごしていきたいですか?」
こう聞かれると、「年に1~2回は海外旅行に行って、ゆっくり過ごしたい」「やっぱり温泉に行きたいよね~」「忙しくて今までできなかったけど、犬を飼って楽しく生活したい!」「おいしいものを訪ねて食べ歩き!」などなど、思い浮かんだ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「お金」は、ためることが目的ではなく、「何のために、そのお金が必要なのか」という「目的」を考えておくことがとても重要ですね。その「目的」を考えておくことで、それをかなえるためにはどうしたらいいか、具体的に行動しやすくなります。「お金」がないと幸せになれないわけではありませんが、ある程度のお金があれば、自分にとってのワクワクした人生を引き寄せやすくなると思います。
あなたの「ワクワク人生」は、どのようなものですか? その人生は、いくらぐらいあったら実現できそうでしょうか? 一度立ち止まって、考えてみることも必要ですね。
「わからない」を「わかる」に
そもそも「心配」や「不安」はどこからくるのでしょうか?
「知らない」「わからない」ことには、心配や不安を感じることが多いように思います。その「よくわからないこと」を明らかにすることで、不安が小さくなったり、不安に感じる必要がないことに気づいたり、不安に対する準備を開始することができます。その結果、不安から解放され、未来に向けて気持ち良く進むことができるようになります。
人生の中で大きくかかるお金は、「教育資金」「住宅資金」「老後資金」といわれています。
そのうち「老後資金」だけは、奨学金や住宅ローンのように、第三者からお金を借りることはできません。多くのお年寄りは「公的年金」と「預金」など、ためたお金を崩しながら生活をしています。人生100年時代を楽しむためには、「老後資金」への早めの対策が必要ですね。
今回は40代、50代の方のお悩みで一番多い、「老後への不安」を見える化しながら、どのように考え、行動に移していったらいいのか、一緒に見ていきましょう。
「働きたい」と「働ける」にギャップも
日本は平均寿命が世界一長い国ですが、みなさんご存じのように、男性よりも、女性のほうが長生きをしています。女性の平均寿命は87.57歳(※1)と言われていますが、あくまでもこれは全体の平均値の話。これからますます医療技術も発達していくことを考えると、私たちはリアルに「100年生きる」ことを前提に備える必要がありますね。
ここで、「三つの寿命」について説明します。一つ目は「平均寿命」。「何歳まで生きるか」ということです。
二つ目は「健康寿命」。「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されていて、女性は75.38歳(※2)になっています。
老後資金を考える際に、「仕事は好きなので、定年退職後もどこかでずっと働けば、お金の心配はそれほどいらないのでは?」という方もいますが、「働きたい」と「働ける」にはギャップがあるケースも多く、ずっと働くことを前提に老後を考えておくと、生活が成り立たなくなるということもあると思います。
三つ目は「資産寿命」。「金融資産がいつまでもつか」ということです。寿命が長くなっている中、年齢を重ねることを楽しみながら生活していくためには、それに合わせて「資産寿命」も伸ばしていく必要があるということですね。三つの寿命の中で、唯一自分でコントロールできるのは、この「資産寿命」と言えるでしょう。
今まで三つの寿命のことをお伝えしてきましたが、これらを踏まえると、自分だけが働くのではなく、「お金に働いてもらうこと」がこれからの人生では大切です。
つまり、お金がお金を生む仕組みを、生活の中に取り入れるということです。
※1 厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」から
※2 厚生労働省「健康日本21」最終評価報告書 健康寿命「⽇常⽣活に制限のない期間の平均」の推移(男⼥別)から(令和元年値)
「2千万円」不足する?
以前、話題になった「2千万円問題」。どのような話かというと、令和元年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」の中で、「老後30年間で約2千万円が不足する」との試算が示され、議論を呼んだ問題のことです。
この報告書では、夫が65歳以上、妻が60歳以上の高齢夫婦無職世帯をモデルとした場合、毎月約5万円の赤字が発生し、30年間で不足する生活費は約2千万円に上ると試算されています。あくまでもこのモデルケースではということなので、実際は、どのような生活をしたいのかによって、かかるお金は一人ひとりで違ってきます。
「年に1回は、20万円ぐらいかかる海外旅行ができる生活をしたい」ということであれば、普段の生活費とは別に、旅行にかかるお金を準備しておく必要があります。
今は低金利の時代で、銀行に100万円を1年預けても利息は約20円。これでは「お金に働いてもらう」、つまり「増やす」というのは難しいですね。
そこで、「貯蓄」から「投資」へと考えを変えていく必要があります。
「投資」と聞くと、なじみがない方にとっては、「なんだか怖い」「損したら嫌だな」という考えをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。ただ、「投資」には、リスクをできるだけ抑えながら、お金を増やしていくためのポイントがありますので、次回はそのポイントをわかりやすくお伝えしていきたいと思います。
村田 貴子(むらた たかこ)さん
証券会社勤務、銀行勤務を経て、現在は「ほけんの窓口グループ株式会社」の教育部担当部長。
多くのお客さまの心配事や悩みを解決するファイナンシャルプランナーとして勤務後、3千人以上の社員教育に携わる。その他、銀行・保険会社向け研修も担当。最近は、高校生向けの金融授業、小学生向けのキッズマネーセミナーも実施。「資産形成」についてのセミナーも力を入れており、ライフプランを踏まえて資産形成を考えることの重要性を伝えている。
文=村田貴子さん
写真=伊ケ崎忍撮影
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