コストを抑えながら“不要なものは何もないけれど、好きなものは全てある”家に〈256〉
Kさんご夫婦(夫30代・妻30代)
埼玉県北本市 / 築9年 / 64.50㎡
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新婚のKさんご夫婦は、それぞれの職場に便利な場所に中古マンションを購入しました。物件探しからお手伝いし、色々話し合いながら、リノベーションを進めました。アンティーク家具の使い込まれた雰囲気や、ざっくりとした麻の質感など、好きなものがはっきりしているお二人は、新築よりも自分たちの好みが反映しやすいリノベーションに心ひかれたようです。
リノベーション前の間取りは2LDK+S。小さめの個室が二つあり、実際の広さよりも狭く感じられました。そこで、個室の壁を取り払って、大きな1R(ルーム)に。その中に、キッチン、ダイニング、リビング、ワークスペース、ベッドスペース、クローゼットを配置しました。
ところで、間取りのSとは採光や換気が居室の条件を満たしていないサービスルームのこと。ここはそのまま残し、趣味の楽器、山登りの道具、漫画などを置き、ホビールームにしました。
1Rにして無駄な壁はなくしましたが、エリアごとに仕切りを作りました。ベッドスペースの仕切りは背の高さほどで、左右、上は抜けているので、通りぬけしやすく、見た目にも圧迫感がありません。それでいて、ベッドスペースにいるときは、個室のような、程よいこもり感があります。
ワークスペースの仕切りは、ガラスの引き戸。出窓のある明るい場所に作ったので、LDKのほうにも光を取り入れることができます。裁縫や書き物などをするためのテーブルを造作し、ベッドスペース同様に程よいこもり感が味わえる場所になりました。
どちらの仕切りも、LDKから視線が抜けるので窓からの眺めも楽しめ、リノベーション前とは反対に、実際の広さ以上に広々と感じられます。
大きな間取りの変更になりましたが、解体は個室の壁を取り払っただけです。壁があった場所の床や天井の補修も、最小限で済みました。事前に現地に入って家の構造を把握し、必要な箇所だけを部分リノベーションしたので、余計なコストはかかりませんでした。
コストダウンをするために、工夫した部分は他にもあります。壁は塗装を希望されましたが、塗装のように見える壁紙に。将来、塗装することも可能な壁紙です。また、クローゼットは扉をつけずにカーテンに。扉よりも開け閉めがしやすいメリットがありますし、必要になれば扉に変更することもできます。
ホビールームのドアはつけずに、今は枠だけ設置。お互いの気配を感じたいとのことで、あえてつけませんでしたが、ドアは後でつけられます。
お二人には、やりたいことを実現するためのコストを説明し、取捨選択してもらいました。今、必要でない部分は、あえてやめてコストダウン。でも、将来ライフスタイルが変わったときに、変更できる余地を残しました。
一方で、必要な部分には、しっかりお金をかけて変更しています。間取りが変わったことでトイレのドアが目立つ場所になってしまったので、90度位置を変更しました。小さいことのように思えますが、1Rの統一感も守るというインテリアの観点からも、気兼ねなくトイレを使えるという使い勝手の面からも、実は大切な部分です。
必要な部分だけをリノベーションしたKさんご夫婦。最小限のもので、すっきりと暮らしています。でも、自分たちの好きなもの、たとえば、アンティークの食器棚、写真家・川内倫子さんの写真などは、そろえています。不要なものは何もないけれど、好きなものは全てある、Kさんご夫婦らしい家になりました。
間取りとリノベーションの写真(写真をクリックすると、次々とご覧いただけます)
Kさんご夫婦に聞く
リノベーションQ&A
Q1 リノベーションをしようと思ったきっかけを教えてください。
結婚を機に、お互いの職場にアクセスしやすい立地で物件探しを始めようと決め、ブルースタジオに物件探しからリノベーションまでをお願いをしました。
Q2 リノベーションで一番大切にしたことや、こだわったことは何ですか?
夫婦ともに古民家の雰囲気や、レトロで味わい深い質感を好んでいます。今回のリノベーションでも経年変化が楽しめる住まいを目指していました。
Q3 自分が想像していた以上のことはありましたか?
部分リノベーションをお願いしたのですが、間取りを変更する時の、引き算と足し算がうまく組み合わさったことです。自分たちらしい住まいになり、楽しく暮らしています。
構成・大橋史子