屋久、奄美、喜界……フランス高級船で南の島めぐり(前編)
本連載「上田寿美子 クルーズへの招待状」で2月から3月にかけ、砕氷船ル コマンダン シャルコー南極クルーズをご紹介しましたが、同じクルーズ会社ポナンの客船「ル ソレアル」が5月22日から8泊で、福岡発着のユニークな島めぐりクルーズを催しました。ほかの船ではなかなか訪れることのない島々。フランススタイルの小粋な船上生活。快適で冒険心もくすぐるしゃれたクルーズにご案内しましょう。
■連載「上田寿美子 クルーズへの招待状」は、クルーズ旅の魅力や楽しみ方をクルーズライターの筆者がご紹介します。
福岡から、桜島そびえる鹿児島へ
福岡から始まったル ソレアルの南の島めぐりクルーズ。この船自身が、耐氷船であり、南極クルーズの実績もある本格的エクスペディション船です。しかも、90%以上の客室がバルコニー付きという高級仕様なので、プライベートバルコニーからどんな南海の景色が見えるのか期待が膨らみました。実は、ル ソレアルに乗るのは2回目ですが、同型姉妹船には南極や北極で数回乗っていたので、船内に入ったとたんに、懐かしさがこみ上げました。
翌日は、鹿児島港に入港。正面に見える桜島にフェリーで渡りました。周囲約55キロメートルの桜島は、今も噴煙を上げる活火山で鹿児島のシンボルとして知られています。始めにビジターセンターに行き、桜島の成長や歴史を学びました。約2万6000年前に誕生した桜島は錦江湾に浮かぶ島でしたが、1914年の大正大噴火で、大隅半島と桜島の間にあった水深約70メートルの瀬戸海峡が埋め立てられ地続きになり、それ以降は、島ではなく大隅半島の一部となったそうです。また、現在も噴煙を上げ、灰を降らせているので、降灰除去対策として、灰を入れる「克灰袋」というものがあることも知りました。
標高373メートルの湯之平展望所は、一般人が入れる桜島の最高地。目の前にそびえる山肌がくっきりとわかります。建物2階の展望デッキからは、きらめきを放つ錦江湾の水面、そして、鹿児島市内も一望できました。
夕方、鹿児島出港後に開かれた船長主催の歓迎パーティーの会場はなんとプールサイドでした。夕暮れ時の涼やかな潮風が吹き抜ける会場で、シャンパンやカナッペがふるまわれ、フランス国旗のはためく前でフランス人船長のスピーチが始まると、雰囲気はまるで、コートダジュールの船上パーティー。
さらに、世界的なスターシェフ、アラン・デュカスが運営するデュカス・コンセイルが監修するガラディナー。そして、英国人デュオの演奏を聴きながらアフターディナーのバータイムへと続く、異国情緒豊かな時の流れ。外国船による日本発着クルーズは、最も身近な海外旅行であることを再認識しました。
「洋上のアルプス」屋久島を探勝
3日目は屋久島入港。1000メートル級の山岳が連なり「洋上のアルプス」と称(たた)えられる屋久島には、海から全貌(ぜんぼう)を眺めながら徐々に近づいていくアプローチが圧巻でした。
今日は、まだ見たことのない大川の滝を含むツアーに参加し、まずは紀元杉を見物しました。標高500メートルを超える山地に自生し、樹齢1000年以上のものを屋久杉というそうですが、紀元杉はその一つ。標高約1200メートルの安房林道沿いにあり、樹齢約3000年といわれている屋久杉です。残念ながら上部は枯れていますが、胸高周囲8.1メートルの巨木には、ヒノキ、アセビ、ヤクシマシャクナゲなど10以上の着生樹があり、頼られる大樹としての姿は貫禄十分でした。
そして、「日本の滝100選」にも選ばれた大川の滝へ。落差88メートル。水量も規模も島内一と言われる迫力に加え、滝つぼのすぐそばまで行けることもこの滝の魅力です。清涼感に包まれて戻ってくる途中には屋久ザルとも遭遇。仲良く毛づくろいをしている姿にほのぼのとしました。
一方、千尋(せんぴろ)の滝は、巨大な花崗岩(かこうがん)に流れる落差約60メートルの滝。名前の由来は滝の左側の岩盤が千人が手をつないだほど大きいということから名付けられたそうです。こちらは少し離れた展望台から眺めるので、樹林、岩盤、水、山など、屋久島で長い年月をかけ育まれた自然美のハーモニーが楽しめました。
ランチは船に戻り、正面の山並みを楽しみながらデッキランチ。今日のスペシャルはプールサイドで焼くビーフ鉄板焼きです。冷たいビールも注文しご機嫌な気分! 何しろ、この船ではシャンパンもワインもカクテルもフリードリンク(一部銘柄物を除く)。南海を行くクルーズには、トロピカルカクテルも良く似合います。
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