民藝のある暮らし。好きを集めて
自然に近いところで子育てもいいねと、次女が生まれたタイミングで海辺の町に移り住んだ、知花くららさん。改めて気付いた海の魅力、海辺の町でやってみたいことや日々感じた思い、家族との時間、海でつながったご縁……。海辺の町での日々の暮らしを、写真とともにつづっていきます。
民藝との出合い、惚れた弱み
民藝(げい)と出合ったのは2018年、NHKの番組の取材のとき。
それまでは世界のいろんな陶磁器や作家さんの和食器なども広く集めていて。とにかく器が昔から好きだった。工芸品のような美しいものたちも財布事情が許せば買う、みたいな。これぞ惚(ほ)れた弱み。
その中でも、沖縄のやちむんは少し趣が違っていた。
土ものの、ぽってりと厚みのある感触。職人の手捻(ひね)りの空気感は、飽きがこない。触れた感じが、指が吸い付くような心地よさがあって。お料理を作って載せてみると、何にでも合うものだから、つい出動回数が実は一番多かったりもして。
「ティーアンダー(手の脂)の温(ぬく)もり」なんていう表現が沖縄にはあるけれど、言い得て妙で、その手の温かさがなんともいい。
だから「民藝」という存在との出合いは衝撃的だった。民藝の作品はなんだか、丸くて温かくて、触れて眺めていると親近感がじんわりと湧いてくる。一緒に生活しているのを容易に想像することができる。手仕事による、暮らしの道具だからこその美しさがあるのだ。やちむんに感じていたあの感じと似ていた。「あ、私が本当に好きなものは、これなんだ」と、鳥肌が立って全てが腑(ふ)に落ちた瞬間、今でもはっきり覚えている。
取材から帰ってきたその晩。食器棚に並べたこれまでの器のコレクションから好きな物を手に取ると、ほとんど土の器だった。
これは、私のライフスタイルの大きな転換点だったかも、と今でも思う。
手仕事による日常の暮らしの道具の美しさ。それらへの自分のまなざしに気づいて、人生に伴走してくれる友に出合ったような感覚なのだ。
それからというもの、インテリアや家具を選ぶ基準まで変わった。
世界が、急に輪郭がはっきり見えるような気がした。それまでは、旅をしながら世界のいろいろな価値観で作り出されたものに触れてきた。そして民藝は、私に一つの世界の見方をくれたような気がする。手仕事の美しさだ。自分の近くにおきたい「好き」の世界が、ぐんぐんと明確になっていった。
海辺の家に一目惚れした理由
海辺の家を見つけたのは、その数年後。その家に一目惚れした理由の一つが、私がこれまで集めてきた世界の民藝が似合いそうだとピンときたから。
海に向かって開かれた開口部、朝の穏やかな光と夕陽(ゆうひ)の強烈な色彩。
窓を開ければ、潮風が入り込んできてリネンのカーテンを揺らす。
日本や世界の民藝は、自然に近い暮らしの中で生まれる手仕事だったりする。
アフリカの藍染め、ベルベル人の絨毯(じゅうたん)、中国の籠、沖縄のやちむんもそう。草木染だったり、自然の原料だったり、風景だったり。
機械で出す直線やシャープな印象とは違って、不揃(ふぞろ)いでどこか自然を感じさせてくれる手仕事の品物たち。揺らぎのあるその表情が、海辺のこの部屋にしっくり。
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知花さんの感性で選ばれた多くの民芸品に囲まれた生活、すてきですね。海辺の心地よい風と匂いに包まれて
ゆったりと過ごされている感じが伝わってきました。
私にとっても生まれ育った故郷の美しい海は、原風景です。
知花さんをテレビ見かけるようになった何年か前から見ると随分落ち着いてしっとりとした美しさを感じます。以前の知花さんも好きでしたが今はもっといいな~と思います
どの民藝も自然な色合いでぶつかり合わずになじんでいる感じがしてとても素敵だなと思いました。小鹿田焼のコロンとした形と暖かみのある色合いに心惹かれました!
丸みのあるフォルムと自然を感じる色合い、心の内側からチョイスした風合いがなんとも心地よくて、言葉で伝えようとしても、これまでの私の人生だけではうまく言えませんね。とても素敵です!🎵
民藝を以前NHKの番組で拝見以降愛好されている事、憧れと共に嬉しいです。真似できる事を取り入れ温度ある暮らしをしたいと思いました。ありがとうございます。