外国船で外国人と巡る日本、世界有数豪華船のおもてなし セブンシーズエクスプローラー(前編)
本年3月、いよいよ、外国客船による日本発着クルーズが再開されました。そこで、世界有数のラグジュアリー船と評価されるセブンシーズエクスプローラーの14日間日本発着クルーズに乗船しました。実はこの船には、2018年にスペイン・バルセロナ発着の地中海クルーズに乗船したことがあるのですが、舞台が日本になると、同じ船でもどのように内容や雰囲気が変わるのか? また、インバウンド需要が話題の昨今、人気観光国・日本を、海外の乗客と回ると、どのように見えるのか? 3月28日、興味津々で、横浜港から春らんまんの船旅にこぎ出しました。
■連載「上田寿美子 クルーズへの招待状」は、クルーズ旅の魅力や楽しみ方をクルーズライターの筆者がご紹介します。
「スーパーオールインクルーシブ」で家事から解放
リージェント セブンシーズクルーズの客船セブンシーズエクスプローラーは、2016年にデビューし、ゴッドマザーを務めたのが、モナコ公国のシャルレーヌ公妃でした。船内には、南アフリカの水泳選手としても活躍した公妃にちなんだ絵画がかけられています。今回の乗客数は約700人。そのうち日本人は2%足らず。船内はアメリカ、インドネシア、英国、オーストラリア、オランダ、スペイン、ベルギー、香港、マレーシアなど20以上の国・地域の乗客が集う国際社会でした。
セブンシーズエクスプローラーは、高級路線を追求したラグジュアリーシップですが、特に高く評価される理由は、乗船料金の中に含まれているものが世界トップクラスに多いこと。シャンパンを含む飲み物料金(一部銘柄物などを除く)、24時間のルームサービスなどに加え、全てのスペシャリティーレストランを含む食事代、寄港地での基本的なオプショナルツアー、無制限のWi-Fi利用料金も含まれているので、いちいち支払いを気にせず、ゆとりあるクルーズが楽しめる点が人気です。
たとえば、ステーキとシーフードが評判のスペシャリティーレストラン「プライム7」は、シャガールの絵がかかるおしゃれなデザインで、ウェーティングバーも完備。そして、メニューには、プライムポーターハウスステーキ(大型Tボーンステーキ)、ロブスター・カニ・エビの盛り合わせなど、ごちそうがずらり。これらをいくつ食べても追加料金はかかりません。
さらに今回驚いたのは、クリーニング(水洗いとアイロンかけ)も追加料金なしのサービスになっていたこと。朝9時までに部屋係に頼むと、翌日の夕方には、パリッと仕上がったワンピースはハンガーにかけ、靴下や下着は薄紙に包みボックスに入れて部屋に届くシステムでした。お金を払わなくても、手をぬかない対応に感激! さらに、この卓越したサービスにより、炊事・洗濯・掃除の中で、唯一船上でも残っていた家事(洗濯)から解放されたことも確かです。今後この船に乗る時にはかなり荷物が減らせることも実感しました。
桜満開の名古屋、徳川の歴史
3月29日。消防音楽隊の演奏に迎えられ、名古屋港に到着。大河ドラマで徳川家康が取り上げられていることもあり「TOKUGAWAレガシー」というツアーに参加しました。観光バスに乗るとガイドさんの第一声は「皆さんは運が良い。なぜなら、桜は開花時期が短い花だが今日は名古屋の桜が満開! きっと全員の日頃の行いが良いに違いない」。これには外国からの乗客たちも笑い声をあげました。まずは、徳川家の遺産を見学するため徳川美術館を訪問。徳川家康が所持した刀剣、徳川御三家筆頭・尾張徳川家ゆかりの武具など、武士のシンボルから、姫様方の嫁入り道具などを飾ったみやびな展示まで、近世大名文化を今に伝える美術館でした。
次は、1615年、徳川家康の命により建てられた名古屋城へ。金のしゃちほこを頂く名城に満開の桜がよく似合います。さらに、天守閣の横にある本丸御殿にも入場しました。空襲により焼失した尾張藩主の住居と藩の政庁を、緻密(ちみつ)に復元した建物の内部は豪華けんらん。藩主に謁見(えっけん)した表書院、家光が宿泊した上洛(じょうらく)殿など、現代の匠(たくみ)の技と復元模写技法を用い、徳川の歴史を未来へとつないでいました。
そして、今日のツアーの最後は、三種の神器の一つ「草薙(くさなぎ)の剣(つるぎ)」がご鎮座する熱田神宮。神苑(しんえん)の樹林を抜け、本宮へと進み参拝。前回きた初詣のにぎわいとは異なり、静寂に満ちた熱田神宮詣でとなりました。ツアーが終わり海外からの乗客に感想を聞いてみると「刀、城など侍ゆかりのものを実際に見ることができ興味深かった」「満開の桜が美しかった。でも、思っていたより白っぽい花でびっくりした」などの答えが返ってきました。
神戸の夜は天空のソラフネ、桜咲く京都
二つ目の寄港地は、神戸。ここでは1泊し、日本の昼の表情、夜の表情が楽しめる仕掛けです。そこで、午後6時半、神戸に現れた「宙船」を訪問しました。実は、昨年、神戸ポートピアホテルの屋上に展望施設「ソラフネ神戸」が誕生し、船を模した屋上のデッキから360度神戸の景色が見渡せるようになったのです。110メートルの高さから見る絶景は息をのむほど。ワンドリンク付きなので神戸生まれのクラフトビール「六甲ビール」を飲みながら、暮れ行く六甲の山並み、宝石箱のように輝く神戸の街並み、そして、港に泊まるセブンシーズエクスプローラーを天空の船から眺めました。
セブンシーズエクスプローラーに戻り、夕食はイタリア料理レストラン「セッテ・マーリ」の屋外席でオシャレな夕食。熟成パルミジャーノ、ブルスケッタ、モッツアレラのフライなどと飲むイタリアワイン。先ほどは空中から眺めていた神戸の夜景が、今度は正面に広がりました。
その後、船の劇場に移動し、夜のショーは神戸生まれの和太鼓奏者・木村優一氏と太鼓楽団・大地の会による「LOCAL TAIKO PERFORMANCE」。迫力ある響き、強さと美しさを併せ持つ表現に、劇場総立ちのスタンディングオベーションとなりました。
翌日はオプショナルツアー「ハイライトオブ京都」に参加し、神戸港からバスに乗り桜咲く京都へ。まず、世界遺産・元離宮二条城へ行き、春も盛りの二の丸庭園を散策しました。昼食はしょうざんリゾート京都で、松花堂弁当。色とりどりの料理に「あらきれい!」という声が上がりました。ただ、多くの外国人客が「この葉っぱの中にあるものはなんだ?」「不思議な柔らかさだけど食べても大丈夫?」と戸惑ったものが……。その正体はササの葉にくるまれた「麩饅頭(ふまんじゅう)」。かなりの和食通でも生麩の食感はめずらしかったようです。
食後は、大文字山の南麓(なんろく)にある金閣寺へ。正式名称は鹿苑寺ですが、この寺のシンボル舎利殿が金色なことから「金閣」と呼ばれるようになったそうです。以前、石川県の金箔(きんぱく)職人さんから「複数の職人だとずれるので、金閣寺の金箔は、1人の職人だけで貼る」と聞いたことがありましたが、太陽光を受けた黄金の舎利殿はまぶしいばかり。鏡湖池(きょうこち)の水面に映し出された逆さ金閣は、万国の人が納得できる美しさで、大勢の乗客が熱心に写真を撮っていました。
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寿美子さん、こんにちは。
ご主人さまの写真も素晴らしいですね!
レポートを楽しく読ませて頂きました。
ありがとうございます。
あやこ