変化の中で快適に住まう理想の「私たちの家」へ リノベーションはじめの一歩(後編)
10周年を迎えた連載「リノベーション・スタイル」の特別インタビュー、後編。連載で手がけた事例を紹介してくださっている「ブルースタジオ」の執行役員でクリエイティブディレクターの石井健さんに、リノベーションの最近のトピックと、成功させるポイントについて伺いました。(聞き手・大橋史子)
前編「好きな『こと』から暮らしを見つめる リノベーションはじめの一歩」はこちら
家族みんなが24時間家にいる、という想定外
――コロナ禍で私たちの暮らしは変わりましたが、住まいにも影響がありましたか?
コロナが流行し始めた頃、「家族の仲が悪くなった」と相談をたくさん受けました。他にも、「みんなが好きなところにものを置くので、家が散らかって困っている」という話も、多かったですね。
その理由は、それまでの家は、家族みんなが24時間いることを想定して作っていないからだと思います。だから、以前のまま家族みんなが24時間自分のペースで暮らしていたらうまくいきません。
一方で、コロナ禍前にリノベーションした方々からは、「リノベーションして本当によかった」という声も寄せられました。例えば、子育てしながら共働きができる家事しやすい動線、家でも仕事ができるワークスペース、家族が集まれる広めのLDKなど、コロナ禍を予測していたわけではないけど、自分の暮らしを見つめ直して家づくりをしていたら、コロナ禍になっても困らない家になっていました。
コロナ禍前から計画していた、夫と妻のワークスペースがあるお宅。
広いLDKに家族それぞれの居場所があります。
社会は以前から少しずつ変化していましたが、コロナ禍でそれが一気に加速しました。コロナ禍前にリノベーションした方々の話を聞いて、リノベーションで「どんな暮らしをしたいか」と考えるのは、少し先の未来を考えることでもあると改めて実感しました。
将来をシミュレーションし情報に敏感に
――コロナ禍は誰も予測できないことだったと思いますが、家づくりをするときはどのくらい先のことを予測したらいいですか?
家は大きな買い物なので、将来どうなるのか不安になりますよね。ただ、先のことは誰にもわからないので、あまり根を詰めて考えすぎなくていいと思います。僕は図書館や本屋で昔の経済予測を特集した本や雑誌を見つけたら、手に入れて読むことがあります。昔の予測は、だいたい外れていることが多い(笑)。だから、今の「10年後はこうなる」という予測も多分外れると思います。
でも、だからと言って、将来を考えなくていいということではありません。確実な予測はできないけれど、5年後、10年後に子どもがいくつになって教育費はいくらかかるのか? 仕事がどうなっていて、給料はいくらになるのか?など、大まかでいいのでシミュレーションしておくことが大事です。そうすると、将来の姿が想像でき、漠然とした不安が払拭(ふっしょく)されます。
将来について何も考えていないと、自分の意図と外れた方向に行ってしまっても、気がつかないことも。考えておけば、自分にとって必要なお金や家の情報に対して敏感になるので、方向性が大きく外れることはありません。これは家づくりに限ったことではないと思いますが、色々な要素が絡んでくる家づくりでは、特に大事だと思います。
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