「マンハッタンのリトルインディア」へようこそ | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]
久保純子 LIFE in N.Y.
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「マンハッタンのリトルインディア」へようこそ

ひっきりなしにお客さんがやってくる。店内は食堂のような雰囲気で、どこか懐かしい感じ

ニューヨーク在住6年目の、久保純子さん。新型コロナウイルスで世界がめまぐるしく変化する中での、ニューヨーク生活。家族や友人との時間、街で見かけたモノ・コト、感じたことなど、日々の暮らしを通して久保さんが見つめた「いまのニューヨーク」をつづります。

通称「Curry Hill (カレーヒル)」と呼ばれるインド街

一口にマンハッタンといえど、その中は、商売や産業によって細かく俗称別にエリアが分かれている。「ウォール・ストリート」は、金融街として私たち日本人も聞き慣れたエリアだが、他にも、五番街から六番街の47丁目は「ダイアモンド・ディストリクト」、六番街の28丁目は「フローラル・ディストリクト」、生地屋さんが多く集まる五番街から九番街の34から42丁目にかけては「ガーメント・ディストリクト」と、名前の通り、そのエリアの特徴を表していることが多い。しかし、あまりの細かさに、正直、いくつに分けられているのか定かではない。 

その中でも、私がよく訪れる場所がある。マンハッタンのちょうど真ん中、ミッドタウンから南へ下っていくと、「Murray Hill (マレーヒル)」という住宅街に突入する。そこを少し過ぎると、突如として、香ばしいスパイスの香りが漂ってくる。

通称「Curry Hill (カレーヒル)」と呼ばれる「リトル・インディア(インド街)」のお目見えだ。レキシントンアベニューの29丁目から26丁目にかけて、インド料理のレストランや洋服店、雑貨屋さんがひしめいている。

「マンハッタンのリトルインディア」へようこそ
インドのサリーなどを扱う雑貨店。カジュアルなものから、古着、結婚式の衣装まで、幅広い服たちがショーウィンドウを飾っている

イエローキャブが連なる、人気のレストラン

お昼時になると、道路沿いにはイエローキャブが連なって停められている光景をよく目にする。60%が南アジア出身と言われるタクシードライバーたちが、ビリヤニ(肉の炊き込みご飯)やニハリ(シチュー)などハラールの料理を求めてやってくるのだ。

「マンハッタンのリトルインディア」へようこそ
道沿いにズラーっと並ぶイエローキャブのお目当てのお店の一つ、インド・パキスタン料理のカジュアルレストラン「Haandi」

マンハッタンには140のインド料理店があり、そのほとんどがここ「カレーヒル」に集まっているそうだ。他にもJackson Heightsなどいくつかリトル・インディアと呼ばれるエリアはあるが、何を隠そうここが発祥の地だという。

「マンハッタンのリトルインディア」へようこそ
おすすめの3品。マサラチキンカレーとタンドリーチキン、胡麻のナンは合わせて25ドル。マンハッタンでは良心的な値段。香草入りヨーグルトソースが美味だった

NYリトル・インディアの始まり

始まりは、1944年にできた食材店「Kalustyan’s(カルスティアンズ)」だ。スパイスから、お菓子、調味料、野菜からうどんや干し椎茸に至るまで、とにかくなんでも売っている。一度足を踏み入れたら、見るもの、触れるものすべてが目新しく、楽しくてなかなか出てこられない。「食のワンダーランド」と私は呼んでいる。

「マンハッタンのリトルインディア」へようこそ
「Kalustyan’s」の店内は、うなぎの寝床にように、入り口からは想像できない広さ。奥の奥まで商品がびっしり

「ここに来れば揃(そろ)わない食材はないんですよ」。そう語るのは、間も無くブルックリンに新しいモダンフレンチをオープンする「RestaurantYuu」のオーナーシェフ島野雄さん。プロの間でも欠かせないお店だそうだ。「毎回訪れると見たことのない品々があり、これを使ったらどんなお料理ができるのかな」とインスピレーションが掻(か)き立てられ、「無数にある唐辛子を手にすると、どうやって使うのかメキシコ人や韓国人に尋ねて、新しい発見や知識が増える」と。「料理人にとっては貴重な場所」だと言う。

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