読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか？ エピソードのご応募はこちら。
〈依頼人プロフィール〉
外山優里（仮名） 36歳
会社員
東京都在住
彼女と出会ったのは大学生のとき。生年月日が一緒だったことがきっかけで仲良くなりました。普段付き合っている友達のグループもゼミも違ううえ、同じクラスの授業も一つだけでしたが、性格や価値観、考え方に似たところがたくさんあり、意気投合。彼女の家で、深夜までこたつに入ってお互いのグダグダな部分を語りあう仲になりました。
社会人になってからは、お互い住む場所が遠く離れていた時期もありますが、どれだけブランクがあっても久しぶりに会ったという感覚は皆無。顔を合わせれば延々と何時間でもしゃべっていられる関係は変わりませんでした。
その後、彼女は結婚。出産を経て、会う機会も減ったところでコロナの影響もあり、なかなか会えずにいたのですが、最近、彼女は仕事で苦しい思い、つらい思いをして、たくさん悩みを抱えていることを知りました。
現在2児の母となった彼女ですが、聞けば数年前、1人目の育休後、2人目の産休に入るまでの間は、仕事を任せてもらえず、職場に居場所がなくなってつらい思いをしたそうです。やがて2人目の育休を経て、仕事に復帰したのが2022年4月。自分が職場で役に立つ存在でいたいと、子供には寂しい思いをさせていることに罪悪感を持ちつつ、仕事優先の生活をしていました。
彼女の必死の努力のかいあって、職場の雰囲気もよくなり、仕事がやりやすくなっていた矢先、今度は部署異動を言い渡されたそうです。新しい部署では、今まで経験したことがないことの連続で、右も左もわからずキャリアはゼロからの再スタート。まっさらからの挑戦で、会社や部署のメンバーの役にも立てず、今なお、毎日つらい思いをしているようです。
とはいえ家事も、2児の育児もこなしながら、全身全霊をかけて仕事をしているだけでも、十分立派で素敵なこと。毎日、「今週を乗り切れば休みだ」と自分を奮い立たせて仕事をしているという彼女の姿にいつも励まされ、私もがんばろうと自分に言い聞かせています。
私にとっても仕事は、経済的な基盤をくれるのと同時に、生きがいもくれる大切な存在。その一方で多くの悩みも運んでくる仕事を、何としてでもいい方に転換したいと、歯を食いしばってがんばってしまう気持ちは、私にも痛いほどわかります。
ランニングなどのスポーツに打ち込むアクティブさ、エネルギッシュさを持つ彼女ですが、その裏側には、実は傷つきやすくてとても繊細な心を持っていると思います。そんな彼女に、「いつもありがとう」「何があっても、私にとっては、大切な存在だよ」ということを、伝えたい。お花にそんなメッセージを込めて、贈っていただけませんでしょうか？
花束をつくった東さんのコメント
エネルギッシュでアクティブなお友達。大輪のダリアで太陽のような存在感をイメージしたほか、時間とともに咲いていくネイティブフラワーのプロテアで、パワフルな生命力を表現しました。
これから咲いてくるプロテアの変化の様子も含めて、楽しんでいただけると思います。
まわりを囲んだのはメラレウカという、ワイルドさがある葉もの。実は傷つきやすい繊細な心の持ち主でもあるという彼女を思う投稿者様の気持ちと感謝を、生命力と繊細さを併せ持った花たちが伝えてくれることを願っています。
文：福光恵
写真：椎木俊介
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に＆ｗで紹介させていただきます。
応募フォームはこちら
TAGS
SHARE
0
