キムチ作りのTikTokがバズって注文殺到! TikTok LIVE配信に毎日奮闘!
母親の作ったおいしいキムチを、多くの人に食べてほしい。その一心で家業を継ぐことを決め、新潟県の佐渡に帰郷してSNSや動画プラットフォームで「キムチの家」の情報発信を始めたロミーさん。「キムチの家@佐渡ヶ島」として初めて「TikTok(ティックトック)」に投稿した動画が一気にバズり、通販への注文が殺到する事態に。さまざまな食材を使ったキムチづくりの動画やライブ配信で、幅広い層から人気を集めています。TikTokが売り上げに貢献した実感や、ファンを増やすために心がけていることなどをロミーさんにうかがいました。
本名・硲(はざま)博巳。1994年新潟県生まれ。18歳で上京し、大手ライブ配信事務所の代理店事業責任者に転職して自らも配信者として活躍。実家のキムチ製造販売を手伝うことを決意して、2019年に通販事業を立ち上げ、「キムチの家」のSNSも開始した。2021年3月には佐渡島に帰郷して修行のかたわら、12月に「TikTok」のアカウントを開設。クリエイターをマネジメントする合同会社LVCを創業し、事業部長も務める。
トレンドの要素を抽出した最初の動画が成功
――家業の「キムチの家」はどんなお店ですか?
「キムチの家」は、父と結婚して韓国から佐渡に渡ってきた母親が、1996年に創業した店です。自宅の敷地にある工場で母が作ったキムチは、唐辛子など本場の食材と佐渡産の魚を時間をかけて自然発酵させ、白菜や大根などの野菜も本格的な味わいになります。僕自身は他のキムチだと物足りなくて、母のキムチが一番おいしいと思っています。卸先は島内のスーパーなどで、島外での流通は知り合いの方などに限られていました。
――東京で就職された後に、ご自身も「キムチの家」を手伝おうと思われた理由は?
子どもの頃からキムチは大好きだったのですが、母親が韓国出身というのもあって、家がキムチ屋さんということにコンプレックスを感じていたんです。東京に出て、実家でキムチを作っていることを言ったら、買ってくれたみんなが「おいしい」と言ってくれて。迷いも少しずつ消え、もっとうちのキムチを食べてほしくなりました。通信販売をスタートしましたが、日本中の人に食べてもらうまでには時間がかかります。そこで、販売に生かすためにSNSを始めました。
――「TikTok」にたどりつたのは、佐渡島に帰郷してからですね。
最初の頃はどのSNSも鳴かず飛ばずで、フォロワーも全然増えず、内心は諦めていました。部屋でぐうたらする日々を送り、「TikTok」を眺めていたら、料理系のクリエイターさんのバヤシさんの動画が流れてきて。「これだ!」と思って参考にしながら、最初の投稿で白菜をただバサバサ切る動画をアップしました。
――その1本目の動画が300万回以上再生され、「いいね」も10万超え。全国的な知名度もないのに、いきなりバズった要因は何だと思いますか?
それが「TikTok」の強みで、フォロワー数や再生回数が多い人だけでなく、発信してもいいですよという権利が誰にでもあると思います。うまく使えば、自分の伝えたいことを多くの人に伝えられるツールです。バズった理由としては、トレンドをきちんと取り入れていることではないでしょうか。トレンドというのは、カメラの画角や、編集のテンポ感、さらにASMR(心地良い音や映像)など。バヤシさんの動画からバズるエッセンスを抽出し、自分の撮影や編集に生かしたところがポイントです。
新しい動画との出会いからイメージが湧いてくる
――「TikTok」を始めて通販の売り上げが数十倍になったそうですが、お母さんはどんな反応をされていますか?
急に忙しくなり、「こんな状況にしやがって」と皮肉交じりに言われました(笑)。でも、アップした動画はうれしそうに見てくれています。動画に出ることで神経も使わせていますが、僕の思いに乗っかってくれて、すごくありがたいなと感じています。62歳の母親から、「TikTok」や「SNS」という言葉が自然に出てくるようになりました。
――これまでにアップした中で印象に残っている動画は?
キュウリでキムチを作る動画と、山芋で作る動画です。キュウリの方は、意図せずに撮ったものが奇跡的にハマった動画。山芋の方は、TikTok主催の次世代TikTokクリエイターを発掘・支援することを目的にしたプログラム「TikTok creator academy」に参加して得たエッセンスを意識して編集した動画で、思い入れは強いです。スイカキムチとチャンジャの動画は、海外からのコメントも多かったですね。
――動画はどのように撮影・編集していますか?
アップするのは不定期ですが、「TikTok」を見ていてアイデアを思いついたらリマインダーにメモして、準備を進めていく感じですね。撮影に使う機材はスマホと、手ブレを防止するジンバル。撮影時間は動画によりますが、タコキムチの場合は(原材料の)タコを捕まえるのに2時間、料理するのに30分と時間が掛かりました。編集には10分から15分ぐらいかけて、動画でも登場する彼女が手伝ってくれます。
――投稿する動画には、どんなこだわりを持っていますか?
撮影時に意識しているのは、人や食材の映り方などがトレンドのものになっているか。「TikTok」でバズっている動画にアンテナを常に張っていて、ピントの合わせ方や、カメラの動かし方、光の当て方を変えています。編集では、誰が何をしているかが分かりやすいカットにして、1カット当たり0.9秒から1.3秒以内で収めるようにしています。
――「TikTok」と他の動画との違いは何ですか?
ながら見をされることが少なく、動画がずっと集中して見られていることがポイントです。というのは、「TikTok」は受動的に他の動画が流れたりせず、他の動画を見るには指で画面を動かし続けることが必要だからです。僕自身も「TikTok」にハマっているので、新しい動画に出会うとすごくうれしくて、そこから新しいイメージが湧いてきます。海外のクリエイターから衝撃を受けることも多いです。
「TikTok LIVE」を活用して毎週月曜日に販売会を開催
――ライブ配信機能の「TikTok LIVE」を積極的に活用されています。どれぐらいの頻度で配信されていますか?
基本的に毎日やっています。昼食の時と夕食の時、僕がキムチの仕込みをしている時ですね。ライブは仕事でもあり、遊びでもあり、瞬間瞬間のコミュニケーションができます。自分たちの人間性や「キムチの家」のリアルな姿を伝えるには、最も強力なツールだと思います。
――週1回の「販売会」の配信が好評で、商品がすぐ売り切れるそうですね。
毎週月曜日に「今からセール始まりますよ」という感覚で人を集める配信です。ある程度の反応は予想していましたが、見事に成功して気持ち良かったですね。「TikTok LIVE」はコアな人たちにコアな情報を届けられるので、キムチ以外にも発信したいこと、たとえば佐渡の観光名所のオンラインツアーなども配信してみたいです。
――将来の夢や目標を教えてください。
「キムチの家」に関しては、何が正解なのかを手探りしながらやっていますが、とにかく日本中の人に食べてもらいたい。キムチを食べたことのなかった人が「おいしいね」と言って、そこから新しいコミュニケーションが生まれ、人生が楽しくなったらいいですね。また、佐渡島のクリエイターを育てて、地元に貢献していきたいです。
――ご両親ぐらいの年代の方だと、“食わず嫌い”で「TikTok」を見ない方も多いと思います。どうすれば使ってもらえるようになると思いますか?
とりあえずアプリをダウンロードして、見てもらいたいですね。自分の好きな動画が流れてくるし、嫌いなものが出てこないようにするのも簡単です。そのダウンロードのひと手間が障壁になっているのかもしれませんが、若い世代からも「こんなことが『TikTok』で起きているんだよ」と寄り添ってあげることも大切だと思います。
その他の「キムチの家@佐渡ヶ島」のTikTok動画はこちら
文:北林のぶお